| 研究紹介
信州大学医学部皮膚科学教室では「悪性黒色腫(メラノーマ)」を研究のメインテーマに据え、診断から治療まで様々なアプローチで研究を行っています。
1. 掌蹠の色素性病変の診断に関する研究
当教室では過去20年以上にわたり肢端黒色腫早期病変の臨床・病理学的研究を行い、肢端黒色腫早期病変診断のためのガイドラインを提唱してきました。特に当教室が明らかにしてきた掌蹠の色素性病変のダーモスコピー所見の特徴[1, 2]に基づく最新の診断アルゴリズム[3]は内外で高い評価を受けています。
2. 色素細胞腫瘍の分子診断法の開発
病理診断が難しい悪性黒色腫とSpitz母斑の鑑別や肢端黒色腫早期病変の補助診断法として、FISH法やMultiplex ligation dependent probe
amplification (MLPA)法を用いた遺伝子診断システムを開発しました[4-6]。
3. 肢端黒色腫細胞株の樹立とその生物学的性状の解析
基礎的研究に用いうる肢端黒色腫細胞株は世界的にもほとんど存在ませんが、当教室では独自の手法を用いて複数の細胞株の樹立に成功しており、それらの生物学的性状や分子異常の解析を行っています[7]。
4. 黒色腫のシグナル伝達の解明と新しい分子標的治療の開発
日本人のメラノーマの過半数を占める肢端部および粘膜の黒色腫について、シグナル伝達や遺伝子異常の解明とそれに基づく新しい分子標的治療の開発を行っています[8]。
5. 色素細胞母斑に関する研究
正常人と黒色腫患者の大規模なコホートによる疫学的研究を行い、白人と同様に日本人でも色素細胞母斑の数が非肢端黒色腫発生のリスクマーカーとして重要であることを明らかにしました[9]。さらに、遺伝子変異を指標とした分子疫学的研究を展開し、色素細胞母斑の組織発生に関する極めて興味深い成績を得ています[10]。
6. 皮膚悪性腫瘍の診療における各種画像検査の有用性の検証
皮膚悪性腫瘍の診断におけるダーモスコピーや高周波エコーなどの画像検査の有用性を豊富な臨床例をもとに解析しており、基底細胞癌の診断に有用な高周波エコー所見を見出しました[11]。
7. 進行期メラノーマに対する新規探索医療の開発研究
名古屋大学脳神経外科や中部大学応用生物学部との共同研究で、世界で初めての試みとしてβインタフェロン遺伝子治療や温熱免疫療法を開発しました。前者は第1相臨床試験が完了、後者は第1+U相臨床試験が進行中です。
8. その他、現在進行中の研究
1)掌蹠の正常皮膚におけるメラノジェニックサイトカインとその受容体の発現解析(東京工科大学芋川玄爾教授との共同研究)。
2)掌蹠皮膚におけるメラノサイト幹細胞の同定とその発癌への関与(金沢大学がん研究所西村栄美教授との共同研究)。
3)活性酸素産生遺伝子NOX4のメラノーマ発癌への関与(本学分子細胞生化学講座鎌田徹教授との共同研究)。
4)メラノーマ細胞におけるToll-like 受容体の発現とその機能の解析
5)メラノーマ患者における抑制性T細胞の解析
6)メラノーマのがん幹細胞に関する研究
|