1.膀胱がんとは
膀胱は下腹部にあり、尿を貯めたり(蓄尿)、押し出したりする(排尿)働きがあります。その内側は尿路上皮という伸縮自在の粘膜が覆っており、外側は排尿のための筋肉が取り巻いています。膀胱がんは尿路上皮から発生するがんで、膀胱の内腔にポリープのように突出して生長します。
男性に多く見られます。
喫煙が関与している代表的ながんのひとつで、タバコを吸わない人より約3倍なりやすいといわれています。染料などの化学薬品も危険因子のひとつで、仕事などで頻繁に化学薬品に接することが多い方によく発生し職業性がんとも言われました。しかし啓発が進み、直接触れないようにすることなどで予防されています。
2.病気の進み方
膀胱がんは進行の程度で、表在性がんと浸潤性がんのふたつに大別できます。それ以外に上皮内がんという特殊なタイプのがんもあります。表在性がんは、膀胱の外側を取り巻く筋肉に腫瘍が到達していない状態です。多くは乳頭状といって、カリフラワーのような形状をしており、短い茎で膀胱とつながっています。
浸潤性がんは、膀胱の筋肉まで腫瘍が到達した状態です。多くは腫瘍の悪性度も高く、転移を生じる可能性があります。これらは膀胱の内腔に腫瘍が生長しますが、粘膜内にとどまる極めて背の低い上皮内がんというタイプのものもあります。
3.症状
一般的には、肉眼的血尿で発見されます。通常、痛みを伴わない血尿です。特に50歳以上の方では膀胱がんの頻度も高く、一回しか血尿が出なくてもよく調べる必要があります。頻尿や排尿時の痛みなど、膀胱炎のような症状がでることもあります。膀胱炎を繰り返したり、なかなか膀胱炎が治らないときには泌尿器科を受診されることをお勧めします。
4.検査
検査はまず、尿検査(尿中のがん細胞を調べます)、超音波検査、膀胱鏡検査などを行います。特に腫瘍の存在を確認するためには、膀胱鏡検査が必須です。膀胱鏡検査は尿道からカメラを入れて膀胱内腔を観察する方法です。通常痛みを伴いますが、当科では軟性ファイバーという軟らかく細い内視鏡を用い、比較的苦痛なく検査が行えます。
腫瘍を確認したら、レントゲンなどで腫瘍の進行の程度を判定します。最終的に下記のような内視鏡手術を行って、表在性がんか浸潤性がんかを判定する必要がある場合もあります。
5.治療
○表在性がん
表在性がんの場合は、内視鏡を尿道からいれて腫瘍を切除する(経尿道的膀胱腫瘍切除術)ことが可能です。しかし、5年以内に約50%の症例で膀胱内再発します。また、約10%の症例で再発時に膀胱がんが進展し浸潤がんとなってしまいます。原則として3ヵ月ごとに膀胱鏡検査を行い、再発の有無を確認することが大切です。残念ながら再発を繰り返し、何度も内視鏡手術が必要な場合もあります。当科では、再発例も含めて年間150例程度の経尿道的膀胱腫瘍切除術を行っています。再発の予防のためにBCGや抗がん剤を膀胱内に注入する治療があります。当科でも症例に応じて行っています。
○浸潤性がん
浸潤性がんの場合は、腫瘍ごと膀胱を摘除する、いわゆる膀胱全摘除術が原則です。しかし年齢などの問題で手術が困難なときもあり、放射線照射などが選択されることもあります。また病気が進行している場合には、抗がん剤を用いた治療を組み合わせることもあります。
膀胱全摘除術を行った場合、尿の通り道を新たに作成する(尿路変向術)必要があります。(1) 通り道をお腹に空けて集尿袋を貼り付けておく方法(回腸導管・膀胱皮膚ろう)や、腸で比較的大きな袋を作り、(2) 尿道につないで自然な排尿をする方法(回腸利用新膀胱)、(3) お腹につないで時間を決めて患者様自身が細い管を入れて尿を取り出す方法などがあります。全身状態・年齢・尿道再発の可能性を含めた病気の状態などを検討し、患者様と十分に相談した上で方法を決定しています。約30%の症例で、回腸利用新膀胱を作成しています。
○進行がん
残念ながら転移を有するようながんでは、決定的な治療法が確立されていないのが現状です。主として抗がん剤化学療法が行われますが、満足の行く治療成績ではありません。タキソールやゲムシタビンなどいくつかの新規抗がん剤が有効であるとの報告が欧米でも本邦でも報告されており、当科でも積極的にそうした治療の確立に取り組んでいます。