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代表的な血液疾患の解説
総論
血液疾患の特徴と分類
血液疾患の診断
血液疾患の治療
白血病・リンパ腫・骨髄腫の診断と治療のポイント
各論
鉄欠乏性貧血・溶血性貧血
再生不良性貧血と骨髄異形成症候群
多血症・骨髄繊維症・本態性血小板血症
慢性骨髄性白血病の特徴
急性白血病
悪性リンパ腫
多発性骨髄腫
出血傾向
造血幹細胞移植
血液疾患に合併する感染症
慢性白血病の特徴
慢性白血病は,血球系細胞のクローン性増殖によって発症するが,白血病細胞は成熟した形態を示し,疾患自体も慢性の経過をとる。
1.慢性骨髄性白血病
病態と診断のポイント
 
  [1]慢性骨髄性白血病(CML)は,染色体転座 t(9 ; 22)により生じたBCR-ABL融合遺伝子の形成が病気の本体である。染色体分析,またはFISH法やRT-PCR法によりBCR-ABL遺伝子再構成を認めることにより診断を確定する。

[2]末梢血中で5万〜20万/μRの著明な白血球増多が認められ,貧血は存在しても軽度,血小板数は増加している場合が多い。骨髄芽球から成熟好中球までの各分化段階の細胞がみられ,急性白血病のような白血病裂孔はない。

[3]好塩基球の増加はCMLにかなり特異的な所見であり,経過の観察中も病勢を反映することが多い。

[4]CMLは骨髄増殖性疾患の一つで,血清中のビタミンB12は高値となる。他の骨髄増殖性疾患では好中球アルカリフォスファターゼ(NAP)スコアが高値となるのに対して,CMLではNAPスコアの明らかな低下が80〜90%の症例に認められる。骨髄異形成症候群の一つである慢性骨髄単球性白血病(CMMoL)が鑑別診断に挙がることがあるが,染色体t(9 ; 22)転座,BCR-ABL遺伝子再構成の有無によりCMLかどうかが確定する。

[5]平均約4年で急性転化を起こし,急性白血病様の血液像を呈する.慢性期から急性転化に移る際に多くは移行期を経るが,その病像は,治療への反応性の低下,脾腫の増大,血小板減少や貧血,原因不明の発熱など多様で,必ずしも診断は容易ではない。


 
 
(1)特徴および病態生理

9番と22番染色体の相互転座t(9 ; 22)により生じた22q−染色体をPhiladelphia(Ph)染色体と呼ぶ(図1)。Ph染色体上で,もともと9番染色体長腕上に存在したABL癌遺伝子が22番染色体上のBCR遺伝子の下流に連結されて(遺伝子再構成),BCR-ABL融合遺伝子が形成され,CML細胞に特異的なBcr-Ablキメラ蛋白質が作られることが病気の本体である(図2)。Bcr-Ablキメラ蛋白質は,強いチロシンキナーゼ活性を有し,恒常的に細胞増殖シグナルを刺激するとともに,アポトーシス抑制性にも働く。CMLにおける血球細胞の腫瘍化にBCR-ABL融合遺伝子が本質的な役割を果たすことが,遺伝子工学,発生工学的な手法により示されている。臨床的には,骨髄芽球から成熟好中球までの各分化段階の細胞を含む著しい白血球増多および慢性期から(移行期を経て)急性期への二相性(または三相性)の経過が特徴である。

図1
図1
図2
図2
(2)臨床像
中年以降の男性にやや多いが全年齢層で発症する。全白血病の20%弱を占め,年間発症率は10万人に対して1人である。臨床症状としては,代謝亢進による微熱・全身倦怠感・体重減少・夜間発汗,巨大な脾腫による腹部膨満感・食欲不振,骨髄細胞の著増による骨痛・骨叩打痛,好塩基球増加による高ヒスタミン血症とこれに続発する胃潰瘍,血球細胞の産生・破壊の著明な亢進による高尿酸血症・痛風発作などが挙げられる。稀に白血球の著増による血液粘度の上昇から陰茎持続勃起も認められる。ただし最近では,自覚症状はなく定期健康診断や他の病気の検査時に偶然発見されることのほうが多い。
(3)検査所見

末梢血中では5万〜20万/μRの著明な白血球増多がみられ,時には100万/μRを越えることもある。骨髄芽球から成熟好中球までの各分化段階の顆粒球系細胞が主体で,急性白血病のような白血病裂孔はない(図3)。好塩基球,好酸球も絶対数が増加しているが,特に好塩基球の増加はCMLにかなり特異的な所見である(図5)。赤血球は初期にはむしろ増加しているが,病気が進行すると貧血となる。血小板数は増加している場合が多い。好中球アルカリフォスファターゼ(NAP)スコアの明らかな低下が80〜90%の症例に認められ診断的価値が高い(図4)。好中球はビタミンB12結合蛋白質を持つので血清中のビタミンB12は高値となる。血球細胞の産生・破壊亢進による血清,尿中の尿酸値の上昇がしばしばみられる。骨髄は過形成で,各分化段階の顆粒球系細胞が著明に増加しており末梢血中の増加パターンに類似している(図6)。巨核球もしばしば増加している。染色体分析では95%にPh染色体〔上述のように染色体転座t(9 ; 22)により生成する〕を認める。最近では蛍光プローブを用いたFISH法やRT-PCR法によりBCR-ABL融合遺伝子を検出することも可能である。Ph染色体陰性例の中には,これらの検査でBCR-ABL遺伝子再構成を認めてCMLの診断が確定する症例もある。

図3
図3
図4
図4_1
図4
図4_2
図5
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図6
図6_1
図6
図6_2
(4)病期分類と予後
CMLは,無治療では診断後平均約4年で急性転化(急性期)を起こし,急性白血病様の血液像を呈する。急性転化時の芽球は,約3/4が骨髄性,1/4がリンパ性の形質を示す。急性転化に至った場合の生存中央値は半年前後である。慢性期から急性転化に移る際に多くは移行期を経るが,その病像は,治療への反応性の低下,脾腫,血小板減少や貧血,原因不明の発熱など多様で,必ずしも移行期の診断は容易ではない。移行期から急性転化時にはPh染色体に加えて,2個目のPh染色体が出現したり,その他の付加的な染色体異常が現われることが多い。
(5)治 療
慢性期には、最近開発された経口薬のイマチニブ(商品名グリベック)を用いる。80%ぐらいの患者で有効である。遺伝子レベルでも白血病細胞は検出されなくなる。しかし、薬を止めると早期に再発するため、ずっと飲み続けるのがいい。
副作用としては、むくみや発疹などがある。ひどいときは中止したのちに少量から再開するといい。残りの2割の患者では、全く効かないか一旦効いたあとに薬が効かない白血病細胞が増えてくる。このような患者では、もしも若ければ造血幹細胞移植を行う。高齢者では、インターフェロンやヒドロキシウレアを用いる。
このような治療法を行うことにより、最近ではほとんど救命できるようになりつつある。
 
2.慢性リンパ性白血病(CLL)
病態と診断のポイント
 
  [1]成熟形態を示す小型Bリンパ球が単クローン性に末梢血中(絶対数が持続的に5,000/μR以上)や骨髄中(全有核細胞数の30%以上)で増多する慢性疾患で,50歳以上の中高齢者に多く,臨床症状として微熱,全身倦怠感,リンパ節腫脹,肝・脾腫等が挙げられる。

[2]病期の進行に伴い正常造血能が抑制されて貧血,血小板減少が認められるが,これは予後とよく相関しCLLの病期の分類基準にも用いられている。

[3]CLLの進行に伴い低ガンマグロブリン血症が増悪,正常リンパ球は減少し,易感染性となる。また,Coombs試験陽性の自己免疫性溶血性貧血などの自己免疫疾患を合併することがある。

 


 
 
(1)特徴および病態生理
成熟形態を示す小型B細胞が単クローン性に末梢血や骨髄で増多する慢性疾患で,進行するにつれてリンパ節腫脹,肝・脾腫,血球減少を来す。その病因は不明であるが,体内で緩慢な増殖をするB-CLL細胞はその大半が細胞周期上では静止期にあり,アポトーシスの障害によるリンパ球の蓄積が主要な病態と考えられる。CLLの90%では,アポトーシスの主要な調節因子であるBcl-2蛋白質の過剰発現が認められるが,BCL-2遺伝子の関与するt(14 ; 18)転座は認められない。
(2)臨床像
欧米では全白血病の20%を占めるが,日本では 2〜3%であり,50歳以上の中高齢者に多く,男女比は2:1である。臨床症状としては,代謝亢進による微熱,全身倦怠感,体重減少,夜間発汗,病期の進行により明らかになる無痛性,可動性の全身リンパ節腫脹と肝・脾腫が挙げられる。ただし最近では,症状はなく定期健康診断や他の病気の検査時に偶然発見されることも多い。
(3)検査所見
大部分の症例において末梢血中の白血球数は2万 /μRを越え,その大部分を成熟した小型リンパ球が占める(図8)。CLLの診断基準では,末梢血中の成熟小型リンパ球の絶対数が持続的に5,000/μR以上で,骨髄の全有核細胞数の30%以上をリンパ球が占めるとされている。CLL細胞は,細胞表面免疫グロブリン(sIg)弱陽性,B細胞抗原CD19,CD20陽性であり,さらにT細胞抗原のCD5が陽性である。病期の進行に伴い正常造血能が抑制されて,正球性の貧血(Hb<10g/dR),顆粒球減少,血小板減少(Plt<10万/μR)が認められるが,これはCLLの病期の分類基準にも用いられている。CLLに特徴的な免疫所見として病期の進行に伴って増悪する低ガンマグロブリン血症,正常リンパ球減少があり,これにより易感染性となる。CLL細胞はポリクローナルな低親和性自己抗体を産生するために,しばしばCoombs試験陽性の自己免疫性溶血性貧血などの自己免疫疾患を合併することがあり,溶血性貧血の場合には網赤血球増加,間接ビリルビン上昇,LDH(1,2型)上昇等が認められる。通常,これらに対してはプレドニゾロンを用いる。

図8
図8
(4)病期分類と予後

無治療でも長期生存する症例から比較的急速に進行する症例までCLLの臨床経過は多様であるため,初診時に臨床病期を決定する必要がある。代表的なものにRaiおよびBinetの病期分類がある(表1)。これらの分類によれば,病初期では症状がなくリンパ球増多のみであるが,病期が進むにつれて,リンパ節腫脹,肝・脾腫,血球減少を伴うようになる。予後は病期と反比例し,血球減少が認められるようになると生存中央値は2年,リンパ球増多のみで他に所見のないものでは10年以上生存する。
最近の研究では、CLLのなかのZAP-70陽性群(このような症例ではCD30も陽性になることが多い)は予後が悪いことが判明してきた。したがって、予後の推測には、ZAP-70の有無を調べることが重要である。

表1
(5)治 療
病初期で症状のないCLLでは無治療で経過を観察することが多い。病期が進行し,発熱や体重減少などの全身症状,自己免疫性溶血性貧血の合併,著明なリンパ節腫脹や肝・脾腫,血球減少を伴う場合には、フルダラビンを投与する。近年使用されるようになった代謝拮抗剤のフルダラビンは有効性が高く,今後CLLに対する第一選択薬となると思われる。

3.成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)
病態と診断のポイント
 
  [1]ヒトレトロウイルスHTLV-Iキャリアのみから発症する成熟T細胞の白血病・リンパ腫である。したがって,抗HTLV-I抗体は必ず陽性であり,またATL細胞にはHTLV-IプロウイルスDNAがモノクローナルに組み込まれていることがサザンブロット解析により証明される。

[2]ATLではリンパ節腫脹,肝・脾腫,多彩な皮膚病変,高カルシウム血症などが認められ,臨床像,経過などから予後の悪い順に急性型,リンパ腫型,慢性型,くすぶり型ATLに分けられる。

[3]リンパ腫型以外では,末梢血中に切れ込みの著明なクローバー状の核を持つATL細胞が出現する。

 

 


 
 
(1)特徴および病態生理
ヒトレトロウイルスHTLV-I感染後に数十年の潜伏期を経て,キャリア1,000〜2,000人より年間1人の割合で発症する成熟T細胞の白血病・リンパ腫である.臨床像,経過などから,急性型,リンパ腫型,慢性型,くすぶり型に分けられる。

(2)臨床像
ATLLは,HTLV-Iキャリアのみから発症し,その平均年齢は57歳である。わが国のHTLV-Iキャリア数は120万人で,半数が九州,沖縄に在住している。HTLV-Iは,母乳を介して母子間,また性交や輸血で感染する。ATLLの臨床症状として,リンパ節腫脹,肝・脾腫,丘疹・結節などの多彩な皮膚病変,高カルシウム血症による意識障害などが認められる。また免疫能低下によるカリニ肺炎,真菌症などの合併もみられる。

(3)検査所見

末梢血中の白血球数は正常から数十万/μRまでの幅がある。末梢血中に出現するATL細胞は,切れ込みの著明なクローバー状の核を持ち,通常はCD3およびCD4陽性,CD8陰性である(図9)。抗HTLV-I抗体は必ず陽性であり,またサザンブロット解析によりHTLV-IプロウイルスDNAのATL細胞へのモノクローナルな組み込みが証明される。典型的な急性型ATLLでは,高LDH血症,高カルシウム血症などがみられることが多い。

図9
図9
(4)病期分類と予後
典型的なATLLである急性型は予後不良で通常1年以内に死亡する。リンパ腫型は悪性リンパ腫で,リンパ球数は4,000/μR未満であるが,急性型に転化しやすく予後不良である。慢性型はリンパ球数が4,000/μR以上で白血球増多を示すが,急性型に転化しない限り予後はよい。くすぶり型では少数の異常細胞は認めるが白血球数は正常で,悪性度は低く長期の経過をとる。
(5)治 療
ATLLは治療抵抗性であり,標準的な治療法はない.ただし,最近になって造血幹細胞移植療法による成功例が報告され始めている。
4.その他の慢性白血病類縁疾患
(1)前リンパ球性白血病(PLL)

成熟しているが核小体が顕著な大型リンパ球の増殖が主体で,脾腫は著明であるが,リンパ節腫大は目立たない(図10)

図10
図10
(2)Hairy cell 白血病

細胞の周囲全体に細い多数の棘状突起を有するHairy cellが末梢血,骨髄等に出現することが最大の特徴である。骨髄の線維化,汎血球減少,脾腫などがよくみられる(図11,12)

図11
図11
図12
図12
(3)悪性リンパ腫の白血化

白血化したリンパ腫細胞は,しばしば核のくびれが著明である(図13)

図13
図13
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