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肺がん/目次
 1.肺がんを防ぐには
 2.肺の構造と機能
 3.肺がんとは
 4.肺がんの症状
 5.肺がんの診断
 6.肺がんの病期(ステージ)
 7.肺がんの治療法
  7.1 非小細胞肺がんの治療
  7.2 肺がんの手術
  7.3 化学療法
  7.4 放射線治療
  7.5 小細胞肺がんの治療
  7.6 新しい肺がんの治療
 8.治療成績
 9.臨床試験について
10.説明と同意について

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1.肺がんを防ぐには

 平成11年人口動態統計によると、日本人のがん死亡は290,556 名であり、肺がんは52,177(男 37,934、女14,243)で、全体と男性ではがん死亡原因の一位、女性でも胃がんに次いで二位です。さらに、肺がん死亡率は今後もしばらく増加傾向が続くと予想されています。肺がんは治りにくいがんの代表であり、肺がんによる死亡を減らしていくためには、まず予防することが重要です、肺がんにならないようにする(一次予防)には、なんと言っても禁煙が重要です。喫煙者の肺は黒く汚れています
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 日本では他の先進国と比べて男性の喫煙率が高いのが特徴です。一方、女性の喫煙率は低いのですが、近年若い女性の喫煙率が上昇していることが問題となっています一日喫煙本数×喫煙年数を喫煙指数といい、これが400以上の方は肺がんのハイリスクグループとされます。たばこの量と肺がんになる危険(リスク)には相関関係があります。
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 一日20本吸う人は非喫煙者にくらべておよそ10倍程度肺がんで死亡しやすいことがわかります。また、最近は非喫煙者の肺がんも少なくありませんが、その際、他人の吐いたたばこの煙を吸うことによって肺がんになりやすくなることも知られています。これを受動喫煙といいますが、夫がヘビースモーカーの場合、妻の肺がんの危険は2-3倍程度上昇するといわれています。
 
 最近は、たばこを吸わない人の肺がんも少なくなく、愛知県がんセンターで手術を受けた人の内1982-83年は24%であった非喫煙者が1998年には34%となっています。肺がんの原因にはたばこ以外にも、大気汚染ディーゼル、職業性の発がん物質(アスベスト、鉛、クロムなど)もあります。従って、禁煙だけで肺がんから身をまもることは困難で、症状のないうちに検診で肺がんを早期に発見すること(二次予防)が次に重要になります。
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 しかし、検診によって肺がんの死亡のリスクが減少する度合いは良くて半分程度であり、これにも限界があります。最近はCTが検診に導入されるようになりさらなる肺がん死亡の減少に役立つかが検討されています。
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2.肺の構造と機能

 肺は、胸郭内にあり、左右一対からなっています。右の肺は三つの葉(よう)から、左の肺は二つの葉からなっています。気管は枝分かれを繰り返し、だいたい24回の枝分かれの後に肺胞という袋状の部分に達しここで酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する働きをしています。
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3.肺がんとは

 肺がんは気管支や肺胞から発生する悪性腫瘍の総称です。タバコや化学物質が肺がんの原因になるとされています。腫瘍は肺の局所で腫瘤を作りさらには隣接する臓器へ浸潤を起こし様々な症状を引き起こします。あるいはリンパ節や、遠くの臓器に転移を起こし、最終的には宿主を死におとしいれてしまいます。

 肺がんは小細胞がんと非小細胞がんに大別され、さらに非小細胞肺がんは腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんに分けられています。小細胞がんは、早期より転移傾向が強く、悪性度が一段と高いがんですが、化学療法や放射線に対する感受性が高く、治療の中心は化学療法と考えられています。一方、残り80%をしめる非小細胞肺がんは化学療法や放射線に対する感受性が低く、治癒を目指すには比較的早期に発見し、手術によって病巣を取り除くことが一番と考えられています。
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 また、肺がんの発生する場所によって、末梢型と中枢型に分類することもあります。図に示すように、組織型や、症状の出方などと密接な関連があります。
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4.肺がんの症状

 肺がんの症状に特異的なものはありませんが、ある程度進行した症例では、血痰、胸痛、せきなどがみられます。特に喫煙者(喫煙指数(一日本数×年数)が400以上の方は高危険群とされていますので、そのような方では特に、前記のような症状が続くときには専門医の診察を受けることをお勧めします。また、場合により非常に特徴的な症状を出すこともあります。パンコースト型肺がんの場合は、肺の一番上に(肺尖部)にがんができ、腕への神経などを侵すために、頑固な腕の疼痛(とくに上腕内側)、肩痛、瞳孔の縮小、顔面発汗の停止等が見られることがあり、整形外科などを受診して発見が遅れることがあります。また、がん細胞が種々のホルモンを分泌して、ホルモン過剰産成による症状をきたすこともあります。しかし、症状で発見されるがんは一般に進んでいることが多く、できれば無症状の内に検診等で発見して治療したいものです。
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5.肺がんの診断

 症状や検診で肺がんの疑いがもたれると、いろいろな検査が行われ1)肺がんであるかどうか2)肺がんであるとするとどのくらい進行しているか3)1)2)で計画される治療に耐えるだけの体力があるかについての検査が行われます。これらは別々に行われるわけではなく実際にはくみあわせて行われます。

 具体的には
画像検査:胸部X線写真、CT(コンピュータ断層写真→胸、腹 、MRI(核磁気共鳴)→脳、シンチグラム→骨
内視鏡検査:気管支ファイバースコープ(気管支鏡)
生検(組織をとる):細胞診、気管支鏡下、CT下、喀痰
などがあります。とくに脳、他の部の肺、肝、副腎、骨などへの転移の有無を調べることが重要です。
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6.肺がんの病期(ステージ)

 肺がんの診断がつけられたなら、次に、どのくらい病気が広がっているか(ステージ)を決定することが非常に重要になってきます。 具体的には、肺の原発腫瘍の広がり(T)、リンパ節転移(N)、遠隔転移(M)のそれぞれについて点数をつけ、その組み合わせでI期からIV期のステージが決められています。一般的に、I期からIII期の一部までが手術の対象と考えられています。
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 具体的には、
  T1:3cm以下
  T2:3cmより大きいが周辺臓器の浸潤無し
  T3:周辺臓器の浸潤あり
  T4:重要臓器(心臓、椎体、気管、大血管)等への浸潤または、がん性胸膜炎。
  N0:リンパ節転移無し。
  N1:肺門部リンパ節転移、
  N2:同側縦隔リンパ節転移、
  N3:反対側縦隔、鎖骨上リンパ節転移
  M0:遠隔転移なし、
  M1:あり。
 これらの組み合わせで病期(ステージ)が決まります。M1があればIV期です。
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7.肺がんの治療法

 肺がんの治療方針は、肺がんの種類(組織型)、病期、患者の体力(生理学的機能)によって決められています。
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 7.1 非小細胞肺がんの治療
 非小細胞肺がんはあまり抗がん剤(化学療法)や放射線療法が有効ではないので、治癒をめざすには手術が可能なステージのうちに発見することが重要です。

 通常はIA期からIIIA期の一部までが手術の対象となります。そのほかに肺がんの組織型や患者さんの元気さの程度も考慮して治療を選択します。
 原則的には下の図に示したように、I-IIIA期の一部までが手術、それ以外は非手術療法を行います。
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 進行したIIIA、IIIB期では、放射線と化学療法をくみあわせて同時に治療を行うことが標準治療となりつつあります。放射線は60グレイ程度、一日1.5グレイで40回(8週)、化学療法はシスプラチンを中心とした多剤併用化学療法を、2-3クール行います。IV期では、局所療法である放射線を併用する意義は少なくなってくるので、化学療法のみを主体とする治療を行います。もちろん、同じ病期でも,がんの進行具合,年齢,全身状態,心肺機能,合併症などより,治療法が異なる場合があります。
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 7.2 肺がんの手術
 肺がんの手術はその切除する範囲からいくつかの種類に分類できますが、”必要にして十分な”切除は葉単位の切除とされています。従って、病巣のある葉と、周囲のリンパ節を摘出する(郭清)のが標準的な手術です。もちろん患者さんの状態や病巣のひろがりによって適宜切除の範囲は変更されます。
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 この手術は、今日では極めて安全におこなうことができ、通常は術後2週間くらいで退院する事が出来ます。手術後の経過は以下のようです。
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 しかし、手術が無事に終わることと、肺がんが治ることとは別のことであることも少なくなく、治癒の指標とされる五年生存率は一期でも70-80%程度と決して満足できるものではありません。手術後に化学療法や放射線療法を組み合わせる試みも、盛んに行われてきましたが、非小細胞肺がんにおいては、一般的には、これらの補助療法を行ってもあまり患者さんの利益にはならないとされています。一部の進行肺がんには放射線、化学療法に引き続いて手術を行うこころみがなされており、将来の標準治療としての期待がされています。
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 7.3 化学療法
 ここ数年のうちに抗がん剤が数種類発売になり、従来ビンデシン、マイトマイシンなど限られた薬剤しか使用できなかった時代とは様相を異にしています。新薬剤は今までの薬剤よりわずかながらも抗腫瘍効果が優れていることは実証されています。シスプラチンまたはカルボプラチンと、これらの薬剤と組合わされて投与されることが普通です。

 抗がん剤の副作用には薬物アレルギー、消化器症状(嘔気・嘔吐)、血液毒性(白血球減少・貧血・血小板減少)、肝障害、肺障害、腎障害・心毒性、末梢神経障害(しびれ)、便秘・下痢などがあります。
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 7.4 放射線治療
 組織型,病巣の位置や大きさ,病期,年齢,肺機能などに応じて照射野や照射方法が工夫されます。
 非小細胞がんの場合:1日1回2Gy(グレイ),週に5回の標準分割照射で,総線量60Gy/30回分割/6週間を標準としています。
 小細胞がんの場合:1日2回の多分割照射が行われる事があります。副作用は食道炎,肺臓炎,皮膚炎などです。
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 肺門部早期非小細胞がんでは外照射に腔内照射を加えることにより90%近い5年生存率を得られています。
 また、肺がん脳転移に対しては通常は全脳照射を行われますが、大きさが3cm以下,数が3個以下であれば、様々な方向から放射線を集中させる治療(SMART)も行っています。
 肺がんの治癒と言うより症状(疼痛や神経障害)の緩和目的・予防目的で骨や脳へ照射が行われることもあります。
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 7.5 小細胞肺がんの治療
 一方、小細胞肺がんは非小細胞肺がんより放射線、化学療法の感受性が高いこと、発見時にすでに全身へ転移していることが多いことなどから、非手術療法を選択されることが多くなります。
 小細胞がんでは治療計画をたてるために、上記のTNM病期よりも、病変が放射線がかけられる範囲(片肺から鎖骨上窩)にとどまっている場合(限局型、LD)かそれ以上に広がっているか(進展型、ED)の分類を用いることが多くなっています。
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 LDでは化学療法と胸部放射線療法の同時併用を行います。
 EDには,化学療法を行います。
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 7.6 新しい肺がんの治療
 分子標的治療
 1980年ころから急速に進歩した分子生物学によって明らかにされてきた,がん細胞の増殖・浸潤・転移などの生物学的特徴を裏付ける遺伝子とその蛋白質を,標的とした治療戦略のことです。
 肺がんではイレッサ(ZD1839)が,最も注目されています。 EGFRは,細胞膜表面に存在する上皮増殖因子(EGF)のレセプターのことで,イレッサはEGFRの特異的チロシンキナーゼ阻害剤です。
 2002年の夏から市販されるようになりましたが、従来の抗ガン剤が無効な例に対して、20%程度の腫瘍縮小、50%程度の症状緩和がもたらされます。また、特に日本人の女性の腺がんに限ると、50%程度で縮小がおこると報告されています。
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 その他,イレッサと同様にEGFRを標的としたタルセバやモノクローナル抗体のC225やEGFRと相同性を有するHER2/neuに対する抗体で乳がんの治療に用いられているハーセプチンや数種類の血管新生阻害剤など有望な治療薬の卵があります。

 免疫治療
 肺がんに対して標準的治療として確立したものはありません。現在,研究が進んできています。

 遺伝子治療
 まだ,一般臨床の前段階のものです。p53という腫瘍抑制遺伝子をウイルスベクターに組み込ん
でがん細胞に導入します。

 光線力学的治療
 太い気管支に存在する小さな早期がんに対して,腫瘍親和性光感受性物質(Photofrin)を投与し,出力の弱いレーザーでがんを選択的に壊滅させます。

 重粒子線治療,陽子線治療
 元来,物理学研究用の大型加速器から得られる陽子線や重粒子線をがんに照射する治療法です。陽子線や重粒子線は,がん病巣にその効果を集中でき、周囲の組織に強い副作用をひきおこすことなく、十分な線量を照射することができます。
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8.治療成績

 日本呼吸器外科学会による全国の303施設における、1994年度7047の手術症例の予後のアンケートによる集計を示します。ただしIIIA期以降の症例はかなり選択されていることに注意されたい。このなかには、248例の小細胞がんが含まれていますが、大半は腺がん(4116例)、扁平上皮がん(2441例)です。

 また、当選ターにおける治療成績はこの図のようです。

 一方、局所進行非小細胞肺がんに対する放射線化学療法の成績は、厚生省の班研究によると、同時併用群で三年生存率が27%です。また小細胞肺がんに対する治療成績は、ここ10数年で進歩してきています。しかし、完全治癒が依然として困難であることには変わりがありません。

 しかし、何れの場合も、多くの患者さんの平均的な数字であり、ひとりひとりの患者さんについ
てはあくまでも参考にしかならないことを十分ご理解下さい。
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9.臨床試験について

 当院では新治療法(標準治療)確立のための多数の臨床試験を行っています。基本的に,新薬の臨床試験と新治療法の臨床試験の流れは,同じで,効果のある,副作用の少ない新薬・新治療法(標準的治療法)を提供するための大切なプロセスです。
 患者さんの利益を担保するために, 「臨床試験」では,治療計画書が作成され,当院の倫理審査委員会や効果安全性評価委員会など第三者のチェックを受けており,また,インフォームド・コンセントを得てから開始します。

 厚生労働省からの新薬の承認を目的として行う「臨床試験」を,特に「治験」呼びます。最近では,ZD1839(イレッサ)や塩酸アムルビシン(カルセド)の治験を行いました。
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10.説明と同意について

 医師にとって,患者さんに病気と治療法について,よく理解してもらえるよう工夫して説明しなければなりませんが,詳細かつ正確な説明は極めて難しいことです。一方,患者さんも,自らの病気と治療法について,具体的な知識をもつ必要があります。このようにして皆でよく相談した上で最善と思われる治療を選択していく態度が望まれます。私たちは,患者さんが肺がんの診断・治療を受ける前に,病気に関する十分で正確な情報を得ること・検査や治療に対する自己決定を行うことが大切と考えています。

 以下のサイトでも肺がんを解説していますので、ご参考になさってください。
DR.LUNG http://www.dr-lung.jp/top.asp
国立がんセンター http://www.ncc.go.jp/jp/
エルネット http://www.lnet.info/top2.html
キャンサーネットジャパン http://www.nagumo.or.jp/cancer/index.html
Cacner net(英語です) http://www.cancer.gov/cancer_information/
平成14年11月23日