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脳腫瘍の基礎知識/目次
 1 脳腫瘍とは
 2 症状
 3 診断
 4 病期(ステージ)
 5 治療法
 6 各種治療法の特徴
 7 治療成績
 8 将来の展望
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1.脳腫瘍とは

 一般的に脳腫瘍と表現した場合、頭蓋内あるいはやや範囲を拡大して脊柱管内に発生した腫瘍を総称して用いられていますが、実際にはその発生母地により組織学的には多種多様に分類されています。1993年に国際保健機構から発表された分類表では脳腫瘍の種類は実に100種類以上にも上っています。日本脳腫瘍全国統計委員会の資料によれば、脳腫瘍の年間罹患率は次第に増加の傾向を呈しており、現在では人口10万人に対して8〜10人程度と報告されています。好発年令は各腫瘍により異なりますが全脳腫瘍平均では55歳代がピークとなっています。脳腫瘍の種類と頻度では、神経膠腫が全脳腫瘍の34%で第1位を占め、第2位には髄膜種の23%、第3位には下垂体腺腫の16%、第4位の神経鞘腫9%と続きます。本邦ではこのほかに特に発生頻度の高い腫瘍として頭蓋咽頭腫の4.5%、胚細胞腫の2.3%が挙げられます。また、近年顕著な増加傾向が特記される腫瘍としては、頭蓋内原発悪性リンパ腫、転移性脳腫瘍等が注目されています。また小児期の腫瘍発生頻度では、脳腫瘍は白血病に次いで好発し、特に頭蓋咽頭腫、胚細胞腫、髄芽腫等が多いとされます。脳腫瘍の治療法と予後は、腫瘍の種類によって異なりますが、近年の脳神経外科の診断技術や手術手技の向上により、予後は以前と比べて全般に良好となりつつあります。日常診療で比較的遭遇する頻度が高い脳腫瘍でも、その治療法の現状として、1)外科的な手法のみによって長期生存や寛解が得られる腫瘍と、2)外科的な手法のみならず放射線療法、化学療法などの補助療法を必要とする腫瘍があります。
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2.症状

 症状は、その発生する腫瘍の場所や性質により様々ですが、逆に、ある特有の症状を呈した場合には、それだけで脳腫瘍の発生部位や性質を類推することもできます。一般的に、脳腫瘍が発生し大きくなりますと、頭蓋骨に囲まれているため、外から見ても腫れてきているとか、変形しているなどの外見に変化を見いだすことは殆どありません。そのため、小さな頭蓋骨の中の空間に存在する脳を徐々に圧迫してくるため脳圧が上昇し始めます。脳圧亢進症状を呈した場合の臨床症状としては、頭痛・嘔気・嘔吐が3兆候といわれています。特に朝方に発生する頭痛が日増しに増強してきて、一旦嘔吐するとしばらくは楽になる様な症状などは、徐々に脳圧が亢進している可能性がありますので、早めに受診することをお勧めします。発生する脳腫瘍の部位により、その臨床症状は多彩ですが、例えば、痙攣発作、手足の運動麻痺、知覚障害、聴力障害、視野障害、記憶力や判断力の障害、傾眠傾向、小脳失調障害、などが主な症状です。人格・性格の変化や判断力の低下等が初期症状のこともあります。最近話の内容が辻褄が合わないとか、いらいらして怒りっぽくなったとか、先程話した内容をすぐに忘れてしまうなどの、あたかも痴呆症の症状のような変化が脳腫瘍の症状としても見られることもあります。なかにはホルモンバランスに影響する脳腫瘍もあり、この場合には全身に変化が現れます。例えば、不妊症、女性化乳房、乳汁分泌、インポテンツなどや、顔つきが長くなり唇が肉厚になったり、まんまるな顔になったり、僅かな間に顔つきや体つきが変わる原因として脳腫瘍が潜んでいることもあります。
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3.診断

 近年の診断医療機器の脅威的な発展に伴い、脳腫瘍の診断は迅速、安全かつ的確に行えるようになってきました。CTスキャン(Computed Tomography)や核磁気共鳴装置(MRI:Magnetic Resonance Imaging)は既に日本全国の病院に配置されており、無侵襲にて1mm程度の微少脳疾患をも即座にしかも的確に描出する精度を備えております。その他に、脳のエネルギー代謝を計測するPET(Positron Emission Tomography)や局所脳血流を計測するSPECT(Single photon Emission CT)、脳の生理的機能を計測する脳磁図 MEG (Magnetoenchephalography)、脳血管撮影、脳波など、脳を調べる検査は日進月歩の時代です。患者さんに負担をかけずに、脳の内部を解析する優れた検査法はその脳腫瘍の種類や性質までも類推する事が出来るほど詳細に分析できるようになってきています。これらの検査を受ければ、殆どの脳腫瘍は直接手術する前に、その腫瘍の種類までほぼ的確に推定することが出来るようになってきました。
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4.病期(ステージ)

 一般的に臨床上の神経症状と脳腫瘍の程度は相関しないことがあります。まだ症状が軽いからとか先週まで元気だったからといっても、実は進行が早い悪性腫瘍に侵されていれば、未治療のままでは1カ月もしないうちに命を落とすこともありますので要注意です。意識障害や傾眠傾向が出現すれば、これは悪性・良性に拘わらず、緊急処置が必要となります。このまま放置すれば近い将来、脳ヘルニアを併発して瞬く間に呼吸停止に陥り、2度と再び自分の力で呼吸することはありません。脳腫瘍は進行性の病気ですから、頭痛、嘔気、嘔吐などの一連の症状が徐々にしかも確実に進行している場合には、精密検査を早く受けることをお勧めします。他の病気と同様、早期発見すれば治療もそれほど難しくなかったものが、放置して置いたばっかりに、良性腫瘍でも手遅れにしてしまったり、治療のあと重篤な合併症を後遺症として残したこともあります。
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5.治療法

 治療法は各種検査によって診断された腫瘍の場所や性質によって大きく異なります。基本的には手術にて組織の一部を摘出し、その腫瘍が良性であれば、手術にて全部摘出することが基本的な治療方法です。最近ではガンマナイフと呼ばれる放射線治療法により手術せずに治療する方法も進んできましたが、嚢胞を形成する腫瘍や直径3cm以上の腫瘍に対しては利用できません。また良性腫瘍でも周辺に大切な血管や神経が存在する部分では腫瘍を全部摘出することが出来ずに、一部残る場合があり、この際には、再発したり悪性に変化したりすることもあります。一方、悪性の脳腫瘍の場合は、手術で出来る限り摘出することはその後の生命予後の延長に重要ですが、全て摘出できてもその後の補助療法は必須です。基本的には放射線治療に化学療法、免疫療法を併用した集学的治療を施行しており、有意な生命予後の延長が確認されております。しかし、これら治療で完治する悪性脳腫瘍はまだごく一部の腫瘍に限られており(胚芽腫、髄芽腫など)、その他の悪性腫瘍はほぼ1ー2年程度の平均余命しか得られておりません。
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6;各種治療法の特徴

1)手術療法
 脳外科の手術療法の特徴は顕微鏡を用いたマイクロサージェリーであることです。微細な血管や神経を保存しながら、脳に隠された病変を丁寧に摘出するために必須の器械です。その他、脳外科に用いる機器は全て特殊であり、そのため手術時間は他の外科の手術と比較しても一般的に長いことが多いわけです。脳は一旦摘出すると、その部分に存在した神経機能は二度と再び回復することはありません。そのため、脳外科手術による摘出部分は必要最小限に留めることが基本姿勢です。ですから浸潤性に拡がる悪性腫瘍は手術による絶対根治術はほぼ不可能であり、常に残存した腫瘍に対する補助療法を考慮しなくてはなりません。

2)化学療法
脳に用いられる抗ガン剤はごく一部のものに限られています。これは、脳の血管には脳血管関門といって、ある程度の大きさ以上の物質は通らないように出来ているからです。ですから、分子量の小さなニトロソウレア系抗ガン剤などが主に使用されています。また投与方法としては点滴静注のほかに、脳内に直接薬物を注入して、治療する方法も考案されていますが、投与後に脳に脱髄を併発したり、痙攣や出血を併発することもあり要注意です。この様に、使用薬剤の制限環境や副作用の面から、脳腫瘍の化学療法は他の部分の腫瘍に比べて、その効果の乏しいのが実状です。

3)免疫療法
インターフェロンなどの免疫活性剤が脳腫瘍の治療に使用されています。しかし本治療単独での抗腫瘍効果は極めて僅かであり、多くの場合には何らかの他の治療法との組み合わせで使用されていることが殆どです。
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7.治療成績

 腫瘍が手術にて完全に摘出された良性腫瘍の場合、術後の合併症の併発がなければ、予後は5年生存率ほぼ100%です。しかし、一部にでも残存した場合には、再発の可能性は高くなり、この場合には再手術の可能性もあります。また、一部には再発時に悪性に転化するものもあり、要注意です。一方、悪性の脳腫瘍は一部の腫瘍を除いて一般に予後不良であり、神経膠芽腫の場合、術後の生命予後平均は17週間、放射線化学免疫療法を駆使しても、1年生存率60.5%、2年生存率17%、5年生存率数%です。一方、10才代の日本人男子に発生しやすいとされる胚芽腫は放射線化学療法に奏功し、5年生存率95%、10年生存率80%以上とされています。いずれにしても、悪性脳腫瘍の場合には、手術後の補助療法を如何に迅速的確に受けるかがその後の生命予後に大きく拘わってきます。
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8;将来の展望

 現在、悪性脳腫瘍の治療方法として、温熱療法、遺伝子療法が新たな治療法として脚光を浴びてきています。まだ、これら治療法も端緒に付いたばかりですが、近い将来悪性脳腫瘍がこれらの治療法により駆逐される日も夢ではないと思われます。