東京大学医学部脳神経外科 東京大学医学部脳神経外科
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手術紹介

脳腫瘍

脳腫瘍の種類

成人脳腫瘍
  • 良性腫瘍の代表的なもとして、髄膜腫、神経鞘腫(聴神経腫瘍)、下垂体腺腫があげられます。これらについては頭蓋底疾患の項をご参照ください。
  • 悪性腫瘍の代表的なものはグリオーマ(神経膠腫)と呼ばれるものですが、これはさらに星細胞腫(astrocytoma)、稀突起神経膠腫(oligodendroglioma)、上衣腫(ependymoma)などに分けられます。悪性度を示すグレード(WHO grade; 1~4)をそえて「星細胞腫grade2」などど呼ばれます。なお、grade4の星細胞腫を特に膠芽腫(glioblastoma)と呼びます。
  • 悪性腫瘍としては他に、悪性リンパ腫、胚細胞腫(germ cell tumor)などがあります。ここに述べた他にも比較的まれな種類のものが数多くあります。なお、他臓器の悪性腫瘍が脳に転移したものは、転移性脳腫瘍と呼ばれます。
  • 脳腫瘍から脳以外へ、たとえばリンパ腺や肺などに転移することはまれです。他の癌にみられるような「Stage分類」も脳腫瘍では行われていません。
小児脳腫瘍
  • 小児悪性腫瘍の中では脳腫瘍は白血病に次いで多いものです。その種類、発生部位なども成人とは異なった特徴があります。髄芽腫(medulloblastoma)、星細胞腫、胚細胞腫や頭蓋咽頭腫(craniopharyngioma)などが代表的なものです。

診断と症候

症状:

  • 頭痛:頭痛は脳腫瘍の症状としてやはり代表的なものです。週単位で徐々にひどくなる頭痛、朝方に症状が重い頭痛などの特徴があります。嘔気や嘔吐を伴うこともあります。
  • 手足の麻痺など:字がうまくかけない、歩行がふらつく、などの運動障害が起こることがあります。呂律がまわらない、口角から食べ物をこぼす、などの症状のこともあります。ある日ふと症状に気づき、その後徐々に症状が悪化する、という経過が典型的です。
  • めまいなど:コーヒーカップに乗ったときのような、回転性のめまいが特徴です。ただし、これは耳の病気などでも起こりえますので、脳腫瘍とは限りません。
  • てんかん発作:てんかんの原因は様々ですが、脳腫瘍の初発症状である場合があります。

診断:
以下、悪性脳腫瘍を中心に説明します。
症状およびその経過、年齢、性別などの情報は診断をつけるうえで非常に有用です。あなたの病気が脳腫瘍であるかどうかはCT(レントゲンとコンピューターを利用した断層撮影)あるいはMRI(強力な磁石を利用した断層撮影)などの検査で調べます。脳腫瘍が疑われる場合には、さらに様々な画像検査を行います。例えば、造影剤を用いたCTあるいはMRI、脳血管撮影、PET(ポジトロンCTというもので、細胞の代謝を調べます)、MRS(MRI装置を利用した細胞のスペクトル検査)などです。MRIの診断方法も日々進歩しており、最近では神経線維の走行の様子まで描出できるようになりました。一方、血液検査なども行います。脳脊髄液の検査を行うこともあります。
徹底的な検査の後に、脳の中のどの部分に、どのくらいの大きさの、どういう性質の腫瘍ができているかを診断し、治療の計画が立てられます。


治療:

治療の方針は最終的には腫瘍組織を顕微鏡で調べる「組織診断」に基づいて決定されます。組織診断によって初めて診断名が確定し、その後の見通し、治療方針などを決めることができます。その組織診断は、手術によってほんの少し腫瘍組織を採取して調べます。組織診断のためだけの手術を行うことも、腫瘍切除術の時に同時に行うこともあります。
組織診断を目的とした手術を「生検術」といいますが、これは開頭して行う場合と、コンピューターで計算した経路で定位的に採取する場合があり、病変の部位や性質に応じて最適な方法がとられます。なお当院には平成11年6月にStealth Stationというナビゲーションシステムが導入され、これらの手術が一層安全に行えるようになりました。
切除が可能な部位にできた腫瘍の場合、安全に摘出できる範囲で腫瘍の切除を行います。神経線維の走行の画像診断、前述のナビゲーションシステム、様々な電気生理学的モニタリング、術中超音波診断装置などを用い、可能な限り安全な手術を心がけています。また、蛍光物質(5-ALA)により手術中に腫瘍細胞と正常脳を見分けたり、脳機能を実際に確認しながら切除範囲を決める方法(awake surgery)などを用いることもあります。
手術後に行われる放射線治療および化学療法(抗癌剤による治療)は、手術的摘出と同様あるいはそれ以上に重要な治療法です。機能障害を避けるために手術で腫瘍を全摘出できない場合ばかりでなく、周辺の脳組織に浸み込むように(「浸潤」といいます)ひそんでいる腫瘍細胞を根絶するために、これらの治療法は行われます。放射線治療は、放射線科の専門の治療医とともに十分な検討をおこない、コンピューターシミュレーションによる綿密な治療計画に基づいて行われます。正常脳への障害を軽減するために、毎日少しずつ照射しますので、治療に8週間程度を要します。なお、再発の場合はガンマナイフによる放射線治療が行われることもあります。
化学療法は、何種類かの薬剤のなかから腫瘍の種類に応じたものを使用します。吐き気や脱毛などの副作用の程度は使用する薬剤により様々で必ずしも重くありませんので、担当医師にお尋ね下さい。一般的には「3-5日点滴をして2-4週間休む、これを何度か繰り返す」というような治療になります。

悪性脳腫瘍の新しい治療法:

上記のようにして、症状の進行や再発を少しでも遅らせるように最大限の努力すべく治療を行いますが、残念ながら再発することもあります。この場合、初発時の組織診断と若干異なるものに変化している場合がありますので、組織診断のための手術(生検)が再び必要なことがあります。初発時と同じような綿密な検査ののち、治療法を決めます。手術が可能な場合は再び切除術を行います。放射線は追加照射は困難なことがありますが、ガンマナイフにより治療できることもあります。化学療法は薬剤を変更して行うことがあります。
それらが有効でない場合に、私たちは次のような新しい治療法を行っています。これらには研究段階の治療法もあり、効果や副作用などにつきましては事前に詳しくご説明いたします。

樹状細胞(Dendritic Cell, DC)療法:腫瘍を樹状細胞という細胞に認識させることで免疫反応を高 め、抗腫瘍免疫により効果を期待する治療法です。当院ではGrade3および4の星細胞腫瘍の再発の方を対象としています。治療に先立ち、手術で腫瘍組織を採取することが必要になります。

ウイルス療法:ウイルス療法とは、腫瘍細胞に限定して増えることができる遺伝子組換えウイルスを用いて腫瘍細胞を破壊する治療法です。悪性脳腫瘍に対しては、単純ヘルペスウイルスを用いた臨床試験が欧米ですでに行われています。東京大学でも平成15年に21世紀COE拠点として脳腫瘍分子治療研究ユニットが新設され、基礎研究と臨床試験にむけた準備が行われています。

ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)ワクチン療法:脳腫瘍は他の腫瘍や癌と同様、腫瘍を栄養する血管(腫瘍新生血管)ができることによって腫瘍が増大します。東京大学脳神経外科では輸血部と共同で、再発脳腫瘍の方を対象に、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をワクチンとして用いる抗血管新生療法を臨床研究として行っています。

硼素(ほうそ)中性子補足療法(BNCT):東京大学脳神経外科では、放射線治療法の選択肢の1つとして、硼素中性子補足療法を臨床研究として実施しています。この治療法は、硼素化合物を点滴で投与した上で、腫瘍のある部位に熱外中性子という特殊な放射線を照射すると、硼素化合物を取り込んだ細胞のみが反応して死滅することを利用します。

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