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スタッフ 診療 1.原発性骨肉腫 2.原発性軟部腫瘍
骨軟部腫瘍化学療法の実際 外来診療

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・スタッフ
杉浦英志(部長)・山田健志(医長)
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・診療
当科は平成6年5月に新設されました。骨・軟部肉腫(骨、筋肉、脂肪、神経および関節などから発生する悪性腫瘍)の治療と他の内臓原発がんの骨転移に対する治療を目的としております。骨軟部肉腫に対しては、画像診断、病理診断の精度を高めるとともに、手術手技の改良(いかにしたら術後の良好な機能が温存できるか)を目指しております。また、がんの骨転移に対しては、早期発見を行い、確実で持続性のある治療法を目指して、外来診療のみならず、病院内でのカンファランスでも主体的に活動しています。
以下、当科で扱う疾患について紹介いたします。

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1.原発性骨腫瘍
良性
線維性骨異形成症:子どもでも、成人でもみられ、どこの骨にも発生します。放置してもかまいませんが、特に股関節付近に生じた場合、および病変部で骨折を生じた場合に治療の対象となります。当科にも年間10人程度が受診しますが、手術になるのは年に1人ぐらいです。

骨嚢腫:上腕骨や大腿骨、骨盤に発生し、高率に病的骨折を生じます。かつては、掻爬骨移植(病巣の掻き出しと骨の移植)が標準的な手術方法でしたが、最近では骨穿孔のみでかなりの症例が自然治癒することが知られています。

内軟骨腫:手指の骨に好発します。病的骨折を生じるまでは、ほとんど無症状。ただし、長管骨に発生した場合、稀に中年期に悪性化することがあるので、経過観察が必要です。

外骨腫(骨軟骨腫)長管骨の骨端に多発性の骨の隆起を生じる疾患です。外見上の問題が主体ですが、骨の成長障害を伴うことが多く、一般に患者さんの体格は小柄です。まれに中年期に悪性化することがあります。

悪性
骨肉腫:
悪性骨腫瘍の代表ですが、最近の小児人口の減少により、頻度は100万人に3−4人ぐらい(周辺の人口を含めた愛知県の発生頻度は、年間15〜20人程度)に頻度が減少しています。欧米の専門施設では、患者の集中化を行うため、1施設で年間50ー100人の患者を扱い、次々に新しい治療法を導入しています。しかし日本では地理的制約のため、個々の専門施設で扱う患者数は多くても年間5人から10人程度です。かつては不治の病(2年生存率10%程度)とされていましたが、現在では強力な化学療法の成果により、初診時に遠隔転移がない場合、5年生存率60ー70%程度ときわめて良好な治療成績となっています。

軟骨肉腫:30〜50歳代に好発します。体幹と四肢骨の近位部に好発し、大腿骨と上腕骨に多く見られます。進行は骨肉腫に比べて遅いですが、進行例や肺転移に対しては化学療法や放射線療法の感受性が低いため、治癒率はむしろ低い傾向にあります。脳転移も多く、腫瘍塞栓による肺梗塞も起こりやすい。年間発生は、愛知県下で3―5人程度です。

Ewing's肉腫:10代前半の小児に発生する稀な腫瘍です。年間発生は、愛知県下で2ー3人程度。きわめて予後不良の腫瘍とされておりましたが、放射線、化学療法によく反応することが判明、現在では治癒にいたる症例も少なくありません。しかし成人例では再発も少なくないため、当院では独自の方針で治療しております。まず多剤併用による強力な導入療法を行い、根治手術または根治放射線照射を行った後に、末梢血幹細胞移植併用での超大量化学療法により最終地固めをするものです。

骨巨細胞腫:病理学的には良性ですが、不充分切除では再発率が極めて高く、再発時に手術治療が困難になるのが特徴である腫瘍です。手術のみで対応すべき疾患ですが、完全切除が必須のため、準広範切除という方法で治療する場合もあります。稀に肺転移も起こります。

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2.原発性軟部腫瘍
良性
血管腫:
整形外科で扱うものは、筋肉内のものです。発生部位の性格上、運動に伴う腫脹と、運動後痛を特徴とします。単純な摘出でよいものと、血管奇形を伴い、準広範切除で対応するべきものとがあります。逆に痛みがない場合には特に処置を要さないことも多いです。

侵襲性腱様腫:デスモイドともよばれます。周囲に長く浸潤傾向を示し、単純切除ではほぼ100%再発し、病巣が広く拡大し、根治手術不能となることがあります。青年期の女性に多く、初回手術がすべてといってよいもので、術前に詳細な画像診断が必要です。この性格上、悪性腫瘍に分類して対応する学者も多いです。

悪性
MFH(悪性線維性組織球腫):
軟部悪性腫瘍の代表。比較的高年齢者に多く、愛知県内で年間30例程度は発生しているものと思われます。当科でも年間 5人程度の患者さんが受診します。化学療法には感受性が少ないが、一部の高悪性度のものには有効なことがあります。軟部肉腫との認識がないまま放置され、かなり大きくなってから患者さんが医療機関を受診されることが多い腫瘍です。大腿の内側に発生することが多く、血管、神経の剥離が困難な場合もあり、術前からリザーバーによる動注化学療法を行ったり、放射線照射を行って、切除縁の縮小を試みる場合もあります。広範切除が必須であるため、切除後に大きな組織欠損を生じることが多く、切除と同様に再建が問題となります。かなりの例で、筋弁移植や、顕微鏡視下手術(マイクロ)による遊離組織移植が併用されることになります。

脂肪肉腫:MFHとほぼ同等の発生頻度。当院では年間4ー5人が入院します。広範切除によりほぼ80%の治癒が期待できます。ただし、不完全な手術では、再発以外に肺以外にも多発性の転移を生じることがあるので、術前に的確な画像診断が必要です。

滑膜肉腫:MFH、脂肪肉腫に次いで頻度が高い。かっては、MFHと同様、手術のみが治療の手段とされていましたが、3年生存率は比較的低く(50%程度)、術前、術後化学療法が必須と考えられるようになってきております。

横紋筋肉腫、PNET:頻度はきわめて少ないが化学療法、放射線療法が著効する腫瘍で、現在では治癒にいたる症例も少なくありません。しかし成人例では子供のように良い成績が得られないことが多いため、Ewing's肉腫と同様に、当院では独自の方針で治療しております。まず多剤併用による強力な導入療法を行い、根治手術または根治放射線照射を行った後に、末梢血幹細胞移植併用での超大量化学療法により最終地固めをするものです。

その他:血管肉腫、神経肉腫、平滑筋肉腫など。いずれも稀な腫瘍なため、化学療法や放射線療法の有効性が確立していません。今後当院で研究を進めていくべきものです。

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骨軟部腫瘍化学療法の実際
化学療法とは?
 組織型が何であれ、悪性腫瘍は可能であれば外科的に切除することが第一選択です。しかし、高率に遠隔転移が予想される腫瘍では、手術のみでは再発が必至であるばかりか生命予後の点で、むしろマイナス材料となることがあります。このため手術治療を補うために化学療法(adjuvant chemotherapy) を行うわけですが、目的と時期に関して以下の3つに大別されます。

neo-adjuvant chemotherapy: 骨肉腫、横紋筋肉腫を初めとする一部の腫瘍群に対して、初診時の画像で明らかでないmicro-metastasis(多くの文献では、 “転移巣にまだ着床していない遊離腫瘍細胞”との記述をしている)を撲滅することを目的として術前から化学療法を優先するものです。それぞれのクールごとの治療効果により、腫瘍の抗がん剤感受性を確認できるため、術後の補助化学療法に用いるべき薬剤の判定を行える利点も有します。適応となる疾患は、骨肉腫、Ewing's肉腫、横紋筋肉腫が代表的ですが、最近では単相型滑膜肉腫、血管肉腫、円形細胞型脂肪肉腫も含めるべきと考えられてきています。

術前動注療法: 腫瘍栄養動脈の近傍までカテーテルを進め、抗がん剤(主に使用されるのはシスプラチン、5-FU、アドリアマイシン、カルボプラチン、エトポシドなど)の注入をするものです。多くの文献ではこれもneo-adjuvant chemotherapyの中に含めていますが、当科では本法の第一標的が腫瘍塊であって遊離腫瘍細胞でない以上、あくまで局所療法であるとの立場をとっています。この治療法は血流に富み急速に増大する腫瘍に対しては効果が比較的一定しており、初診時に広範切除が困難と思われる症例には適応があります。ただし、局所治療とはいえ、使用する薬剤の全身的な副作用(脱毛、白血球減少など)は静脈投与と同等であり、局所高濃度集中による皮膚、筋肉に対する障害も有りえます。

post-operative adjuvant chemotherapy:一般に補助化学療法といわれるものです。術前から化学療法を行い、さらに術後も治療を継続する場合の他に、術後評価で充分安全といえない切除縁を認めた場合や、広範切除はしたものの術後組織診断が初期診断と異なり化学療法の併用が必須のものと判明した場合に行われます。前者の場合、発生部位によっては化学療法より追加広範切除術のほうが選択されることも多いです(大部分の骨軟部肉腫に対しては、化学療法の有用性がいまだ確認されていない)。

以上、当科で扱う原発性疾患の治療方針を簡単に紹介いたしました。しかし当院で圧倒的に多い骨疾患は、他の臓器のがんが骨に転移してきたものです。これに対しても患者さんの生活の質(QOL)をいかに確保するかに絞った治療方針で臨んでいます。がんの骨転移には手術が第一選択ではなく、早期発見をして骨折の予防にコルセットや装具を使用しつつ、早期に放射線治療を開始することが重要です。

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