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ホーム >> 各部門のご案内と治療実績 >> 治療実績 >> 骨軟部組織の悪性腫瘍(肉腫)
骨軟部組織の悪性腫瘍(肉腫)
  1. 1.どんな病気か
  2.  A.どこにできるの?好発年齢は?
  3.  B.症状は?
  4.  C.なおりますか?
  5.  D.原因は?
  6.  E.どこで診てもらえばよいの?
  7. 2.悪性骨腫瘍の種類と解説
  8.  A.原発性悪性骨腫瘍
  9.  B.続発性骨腫瘍(癌の骨転移)
  10. 3.悪性軟部腫瘍の種類と解説
  11.  A.概要
  12.  B.各種の軟部肉腫の解説
  13.   (1)悪性繊維性組織球種
  14.   (2)脂肪肉腫
  15.   (3)滑膜肉腫
  16.   (4)横紋筋肉腫
  17.   (5)平滑筋肉腫
  18.   (6)血管肉腫
  19.   (7)悪性神経鞘腫
  20.   (8)間葉性軟骨肉腫、骨外性粘液型軟骨肉腫
  21.   (9)胞巣状軟部肉腫
  22.   (10)類上皮肉腫
  23.   (11)明細胞肉腫
  24. 4.診断、検査の方法
  25.  A.診察
  26.  B.画像検査
  27.  C.生検(病理検査)
  28. 5.治療の方法と副作用
  29.  A.手術療法
  30.  B.化学療法
  31.  C.放射線療法
  32.  D.温熱療法
  33.  E.リハビリテーション
  34.  F.免疫療法
  35.  G.民間療法
  36. 6.大阪府立成人病センターの治療の特色
  37. 7.大阪府立成人病センターの治療成績
  38.  骨腫瘍
  39.  軟部腫瘍

1.どんな病気か
    骨軟部腫瘍とは、骨や筋肉や脂肪などの軟部組織に出来る腫瘍(できもの)です。骨に生じた骨腫瘍、軟部組織に生じた軟部腫瘍と大きく二つに分けられます。さらに、骨腫瘍と軟部腫瘍はそれぞれ良性と悪性に分類できます。悪性の原発性骨軟部腫瘍は特に「肉腫」と呼ばれます。(これは内臓から発生する「癌」と区別するための名称で、発生母胎が上皮系細胞由来か間葉系細胞由来かによってこのように分類されていますが、再発しやすいことや、転移する性格などの悪性の性格は癌と同様です。)
    この悪性骨軟部腫瘍は、発生頻度が少ないこと、病気の種類が多いことが特徴で、最も多い原発性悪性骨腫瘍である骨肉腫でも、年間に日本全国で200例位の発生率です。発生頻度の低い腫瘍の場合には年間で日本で数例しか発症しない病気もあり、診断と治療には専門的な知識が必要です。
    A.どこにできるの?好発年齢は?

      臀部、大腿、膝周辺、腕などが多いですが、手足や背中、胸腹壁など、どこにでも発生します。腫瘍の種類により、好発の部位や好発年齢は異なります。癌に比べると、10代、20代の若い年齢層で罹患する患者さんが多いのも特徴の一つと言えます。この年代は学校やスポーツなどに夢中で、放置している場合が多く、家族の方の観察も重要です。

    B.症状は?

      特有の症状を有するものもありますが、一般的には症状は腫瘤を触れる位です。痛みがないこと、頻度も低いことから、一般には患者も医師も悪性腫瘍と思わず放置していることが少なくありません。そのため、診断が遅れたり、良性と間違って簡単に手術をして再発を来す場合が多いのが実状です。特に以下のような症状が有れば、受診をお勧めします。
    (1) うでやふとももにできものが触れる。あるいは左右を比べると一部で太さがかなり違う。
    (2) そのできものがだんだん大きくなっている
    (3) 運動時、あるいは安静にしている時に痛みがある。体重をかけると関節以外に痛みが走る。
    (4) 関節がちゃんと伸びたり曲がったりしない。
    (5) 関節の痛みが1ヶ月以上持続していて、どんどん程度がひどくなってきている。
    (6) 近医で腫瘍があると言われた。
    もちろん、これらの症状は悪性腫瘍以外でも生じますが、それとの決定的な違いはどんどん悪化していく進行性の症状であることです。

    C.なおりますか?

      治る率は腫瘍の種類により大幅に異なります。しかし、早期に発見、治療すれば治る率は確実に高まります。原発性の悪性骨軟部腫瘍全体での5年生存率は約70%位(推定)です。

    D.原因は?

      人間の組織は古い細胞が死んで、若い細胞が分裂してそれを補う代謝が常に行われています。骨や軟部組織もそのような細胞の新陳代謝が行われており、特に若い人では成長に伴って活発に細胞の分裂が起こっています。腫瘍は、細胞が分裂するときにその設計図である遺伝子の複製がうまく行かずに異常が生じ、正常な制御を失った細胞がどんどんと増殖することにより発生すると考えられています。実際に一部の腫瘍では、遺伝子のどこに異常があればその腫瘍が発生するのか、最近の研究で明らかとなってきています。例えば滑膜肉腫という腫瘍は遺伝子の中のSYTという遺伝子が途中で切れて別の遺伝子であるSSXという遺伝子にくっついて融合してしまうことで腫瘍が発生することが判っています。その他にも同様の発生機序を持つ肉腫が10種類以上判明しており、今後の治療への応用が期待されています。

    E.どこで診てもらえばよいの?

      腕や太股、関節の病気が主ですので、基本的には整形外科を受診することをお勧めします。もし、腫瘍の疑いがあれば、各病院から専門施設を紹介されるはずです。病気の頻度が少ないことから、診断や治療は専門的な施設で集中的に行われる必要があり、必ず専門の施設を訪れてください。

2.悪性骨腫瘍の種類と解説
    A.原発性悪性骨腫瘍

      (1)骨肉腫Osteosarcoma

      (a)概念、頻度、好発年齢、部位、症状
        腫瘍細胞が骨を形成する腫瘍で、原発性の悪性骨腫瘍の中では最も頻度が高く(約50%)、日本では年間、人口百万人に2人の割合で発生しています。2:1で男性が多く、好発年齢は10才代、20才代、10才未満の順で、学童期〜青年期に好発しますが、Paget病や放射線照射後など、続発性に発生することもあります。部位は膝関節付近(大腿骨遠位部と脛骨近位部)に圧倒的に多く、次いで上腕骨近位、腓骨近位の順に多く、これらで全体の約80%を占めます。初発症状は運動時の痛みや安静時の痛みが多く、腫脹、熱感、関節の動く範囲の制限等が現れます。進行が速く、骨折や肺転移をきたしやすいので、早期での治療が望まれます。
      (b)病型分類
        典型的骨肉腫として、骨芽細胞型、軟骨芽細胞型、線維芽細胞型があり、腫瘍の構成成分により区別されます。その他の特殊型としては、血管拡張型、小細胞型、骨内分化型、骨表面高悪性度、皮質骨内骨肉腫などがあります。また、近類の腫瘍として、傍骨性骨肉腫(骨のそばに発生する20〜30代の女性にやや多い、ゆっくりと増大する腫瘍)、骨膜性骨肉腫(骨膜より発生する腫瘍で、骨形成と軟骨形成が特徴で、骨の真ん中の部分に多い腫瘍)などがあります。
      (c)検査法
        血液検査では血中アルカリフォスファターゼ値(骨型ALP)の高値を示す症例が多く、血沈値、CRP、血中osteocalcin等も時に異常がみられます。疾患の広がりの程度をみるのにマーカーとして有用です。
        画像検査は、単純レントゲン、CT(コンピューター断層撮影)、MRI(核磁気共鳴画像)、骨シンチ、タリウムシンチ、ガリウムシンチ、血管造影などが施行されます。これらは、診断だけでなく、手術方法の検討や化学療法の効果判定のために有用です。
        生検術:最終診断は生の組織を取る検査目的の手術(生検術)を行い、組織を顕微鏡でみる病理診断に委ねられます。骨肉腫は多彩な組織像を示す場合が多いので、専門の病理医に診て貰うことが必要です。
      (d)治療方針
        骨肉腫治療の原則は化学療法と手術です。
        ■化学療法
        骨肉腫に対する化学療法の最大の目的は、既にある微小な転移の根絶です。化学療法が行われていなかった頃は、患肢を切断してもほとんどの人が1年以内に肺転移をおこしました。これは、切断をする時には既に検査ではわからない小さな転移があり、それが切断後に大きくなってきてみつかると考えられます。化学療法をするようになってからは、このような肺転移の出現は半分以下に抑えられるようになりました。つまり、化学療法の主な目的はこの目に見えない肺転移を根絶する事です。もちろん、手術の前に行う化学療法には、局所の腫瘍の増殖を抑え、手術の時の出血を抑えたり、手術をしやすくする目的もあります。
        化学療法の薬剤や副作用については化学療法の項をご覧下さい。
        ■手術療法
        骨肉腫に対する手術は、腫瘍のある骨とまわりの筋肉を一緒にとります(広範切除術)。血管や神経が巻き込まれている場合などは、止むをえず切断をする場合もありますが、当科では出来る限り患肢を温存する手術を施行しています。欠損した骨や関節部分は人工関節や術中体外照射骨移植などで再建します.再建の方法はいろいろな方法があり、その方法ごとに長所と短所がありますから、患者さんごとに最も適切な方法が相談の上で決定されます。
      (e)成績
        1970年代の化学療法導入以前の5年生存率は、10〜20%であったが、最近では約70%まで改善してきています。特に化学療法が良く効いた症例では90%位の生存率があります。治療は約10ヶ月間で終了しますが、その後も外来での定期的な経過観察が必要です。患肢の機能についても、人工関節の場合には長期に経過すると緩みや摩耗が生じて来ますので、定期的なフォローは一生続きます。

      (2)軟骨肉腫
      骨肉腫に次いで頻度の高い原発性悪性骨腫瘍です。20才以上が殆どで、中年に好発します。また、骨軟骨腫や内軟骨腫に二次的に発生する事があります。発生部位は骨盤や仙骨が多く、骨肉腫よりはゆっくりと発育するため、症状があまり無く、大きくなってから受診し、手術が難しい場合が多い腫瘍です。骨肉腫ほどは転移を起こしませんが、血管内に腫瘍がつまってしまう腫瘍塞栓が発生する場合があり注意を要します。治療は、化学療法や放射線には抵抗性であるため、手術療法が主体となります。当科では、切除不可能な場合には速中性子や重粒子などの新しい放射線治療を依頼することにしています。5年生存率は約50%です。

      (3)ユーイング(Ewing)肉腫
      5〜20才に発生することの多い悪性腫瘍で原発性悪性骨腫瘍の5〜10%を占めます。大腿骨や脛骨、上腕骨、腸骨などに様々な部位に発生します。腫瘍の進展速度が速いこと、熱が出たり血液検査上炎症反応が認められることが特徴です。化学療法や放射線療法の感受性が高く、治療によく反応しますが、転移能も高く、他の骨や肺に対する注意が必要です。化学療法と手術が基本的な治療です。末梢血幹細胞移植や骨髄移植を施行することも有ります。成長期の症例が多いので、手術後の再建には工夫が必要です。5年生存率は5〜60%ですが、骨盤の場合には不良で、集学的な治療が必要となります。

      (4)悪性線維性組織球種(MFH)
      発生起源のまだ不明な骨の悪性腫瘍です。骨肉腫より頻度は少ない腫瘍で、成人に発生します。治療は骨肉腫に準じた治療を行いますが、化学療法への反応は骨肉腫より劣ります。5年生存率は5〜60%です。

      (5)脊索腫
      中年以降で、仙骨に生じる悪性腫瘍です。ゆっくり増殖し、仙骨部ですので症状が少なく、初診時には巨大になっている事が多い腫瘍です。治療は、化学療法は無効で、仙骨部の切除が行われますが、腰や仙骨の神経の近くに出来ますので、一緒に切除する必要があり、様々な神経障害が発生します。特に直腸への神経を合併切除する場合は人工肛門などの手術も必要です。近年、重粒子線治療が有効であることが報告され、当科からも依頼を行っています。

      (6)血管肉腫
      血管から発生する腫瘍で、骨にも軟部組織にも発生します。様々な病型があり、診断、治療は専門施設で行われます。化学療法は一般的にあまり効果がありませんが、放射線治療は有効な場合があります。手術は骨肉腫と同様です。

      (7)アダマンチノーマ
      脛骨に生じる非常に稀な悪性腫瘍で、良性の線維性骨異形成と鑑別の難しい腫瘍です。手術と骨移植などで治療します。
     
    B.続発性骨腫瘍(癌の骨転移)

      内臓の癌や他の部位の肉腫が骨に転移した場合を続発性(転移性)骨腫瘍と呼びます。原発の部位としては乳癌、前立腺癌、肺癌、腎癌、甲状腺癌、子宮癌、大腸癌、直腸癌など、どの癌でも骨に転移する可能性が有ります。従って、癌の治療後に四肢や背中に頑固な痛みが続き増強してくる場合は、必ず骨転移の検査が必要になります。特に乳癌や前立腺癌は骨転移の頻度が高く、必ず骨転移のチェックが必要となります。また、癌の既往が無い場合でも、骨への転移の症状を初発症状としてそれらの原発癌が発見される場合があります。このような場合には、整形外科と原発巣を治療する科が協力して治療にあたる必要があります。治療は、放射線療法が主体となりますが、骨折を起こしそうな場合や、脊椎に転移が生じて、脊髄神経圧迫による神経障害が生じてきた場合には手術が必要になります。もちろん原発の各癌の治療に準じ化学療法やホルモン療法などの保存療法を実施してもらうことも必要です。
3.悪性軟部腫瘍の種類と解説
    A.概要
    悪性軟部腫瘍の日本での発生率は10万人に2人くらいで、まれな腫瘍です。しかし、その種類は多く、30種類以上あります。従って診断と治療には高度の専門的な知識が必要となります。頻度は高い順に悪性線維性組織球腫(せんいせいそしききゅうしゅ)、脂肪肉腫、横紋筋肉腫(おうもんきんにくしゅ)、平滑筋肉腫(へいかつきんにくしゅ)、滑膜肉腫(かつまくにくしゅ)、線維肉腫(せんいにくしゅ)、悪性神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)、血管肉腫などがあります。好発年齢は、悪性線維性組織球腫と平滑筋肉腫は高齢者に、脂肪肉腫と線維肉腫は多少中年に傾き、滑膜肉腫と悪性神経鞘腫は若年者に、横紋筋肉腫は小児に発生します。発生部位は肉腫の種類により違い、脂肪肉腫と悪性線維性組織球腫は大腿に多く、滑膜肉腫は関節の近くに発生します。平滑筋肉腫は後腹膜や腸間膜に発生することが圧倒的に多く、横紋筋肉腫は頭頸部、膀胱近傍に多く発生します。線維肉腫はいろいろな部位に発生しますが、体幹に多くみられます。転移や再発のリスクは腫瘍の種類によって異なりますが、手術は広範切除の原則に従って行うことが必要で、初期治療の失敗は患者さんの命に重大な影響を与える点で特に専門的治療を要する疾患と言えます。
    B.各種の軟部肉腫の解説
      (1)悪性繊維性組織球種
    軟部肉腫の中で最も頻度の高い腫瘍です。中年以降に好発し高齢者の軟部肉腫をみた場合この診断名をつければ大部分当たるくらいです。診断の決め手は組織診断ですが細胞診で多形性細胞肉腫と診断された場合おおむねこの腫瘍です。
    いくつかのタイプがあり悪性度の低いものと高いものがあります。筋肉に沿って特に浸潤傾向が強いタイプがありMRIなどでそれが疑われる場合、より徹底した切除が必要です。最近の当科での研究では、炎症所見を伴う症例とそうでない症例とは明らかに抗ガン剤の感受性や予後(5年生存率で52%と90%)に差があり、炎症を伴わない症例の方が良好な経過をたどることが判明しています。
      (2)脂肪肉腫
      脂肪細胞由来の軟部腫瘍で、悪性線維性組織球腫(MFH)と並んで最も頻度が高い。好発年齢は40〜60代で,小児には稀です。好発部位は四肢(特に大腿),殿部,後腹膜に多い。無痛性で,緩徐に増大し,数10cmに及ぶものもあります。組織学的には,高分化型,粘液型,円形細胞型,多形型に分類され、それぞれ治療法が異なります。検査としては、X線,CT,MRIなどの画像診断をおこない、特に、CT, MRIで、脂肪と似た輝度を示すことより、画像診断がつきやすい腫瘍です。粘液型と円形細胞型では融合遺伝子(TLS-CHOP)がその発生原因であると考えられ、当科ではそれを用いた遺伝子診断を施行しています。最終的な診断は、生検により特徴的なlipob1ast(脂肪芽細胞)の存在が決め手となります。病理組織学的には高分化型では良性の脂肪腫との鑑別が,粘液型,多形型では悪性線維性組織球腫との鑑別が困難な場合があります。治療は高分化型以外は化学療法の後に腫瘍広範切除術を行います。単純に切除してしまった後にこの腫瘍であることが判明した場合には,再発をきたしやすいので、速やかに専門医で手術をもう一度行う(切り足す)追加広範切除を受けることが必要です。治療成績は、高分化型は肺転移がほとんどみられず,10年生存卒は90%以上です。粘液型も、巨大な症例、再発を繰り返している症例を除き、70〜80%の5年生存率を示し、比較的予後は良好です。円形細胞型,多形型が最も予後が悪く、転移は血行性肺転移が主で,5年生存率は20〜50%です。

      (3)滑膜肉腫
      青年期(10-40才)に発生する組織由来不明の軟部悪性腫瘍で、好発部位は、四肢の関節近傍、特に膝関節周辺です。この腫瘍も、18番染色体上に存在するSYTという遺伝子とX染色体上に存在するSSXという遺伝子が、転座によって新たに SYT-SSXという融合遺伝子を生じ、これが発生に関与していると考えられ、当科では遺伝子診断を行っています。
      比較的ゆっくりとした発育を示し、時に疼痛を伴うことが特徴です。小さい腫瘤でも、痛みがある場合、この腫瘍の可能性はありますので注意が必要です。確定診断は生検により行いますが、病理組織像は非常に多彩であることが特徴で、診断は必ずしも容易でなく、遺伝子診断が非常に有用な腫瘍です。単純に切徐した後に本腫瘍であることが判明した場合も,追加で切り足す手術を行います。治療は手術療法と化学療法が主です。局所再発,転移とも緩徐な例がしばしばあるため,術後,最低10年間の外来followが必要です。5年生存卒は30〜50%,10年生存卒は15〜30%で、長期にわたる経過観察が重要な腫瘍です。

      (4)横紋筋肉腫
      横紋筋由来細胞よりなる軟部腫瘍で、組織学的に、主として小児に発生する胎児型,主として成人に発生する胞巣型,多形型の3型に分類されています。
    胎児型: 全体の約75%を占め、好発部位は頭頚部,尿生殖器,後腹膜です。頭頚部では,2〜3cmのポリープ状に,尿生殖器ではブドウ状に発育する傾向があります。大部分は無痛性で,増殖は比較的速く,時に疼痛を伴います。軟部肉腫の中で最も化学療法に対する感受性が高く,一般に小児科と共同で多剤併用療法が行われています。
    胞巣型: 成人の四肢の筋肉に発生する例が多く、予後は最も悪い。原因遺伝子PAX+FKHRという融合遺伝子を用いた遺伝子診断を施行しています。
    多形型: 横紋筋肉腫の中で最もまれで、45才以上に見られます。

    治療は化学療法が主体で、ヨーロッパでの多施設共同研究報告に準じた多剤併用療法を行っています.手術療法は広範切除術が原則ですが、放射線を併用する場合もあります。転移は,所属リンパ節,速隔リンパ節,肺,骨,脳などに多く、初診時、局所リンパ節や遠隔転移のない症例の5年生存率は50〜70%ですが,転移を認める症例では,5年生存卒は20%以下で、極めて悪性度の高い腫瘍です。

      (5)平滑筋肉腫
      平滑筋由来細胞よりなる軟部腫瘍です。平滑筋は血管や消化管、子宮など体内の管腔の壁にあり、どこにでも発生する可能性があります。年齢は50才以上に多く、小児はまれです。非常に硬い腫瘍として触れ、四肢では下肢に好発しますが、内臓の平滑筋肉腫の転移でないかどうかを診断しておく必要があります。悪性度は、組織の分化の程度により大きく異なり、肺、皮下、筋肉内などいろいろな部位に転移します。治療は有効な化学療法が無いため、手術による切除が第一となります。放射線療法は効果が少ないとされていますが、著効を示す場合もあり、他に方法が無い場合には試みる価値はあると考えています。また、最近発売された分子標的療法剤が有効である症例が米国の治験では報告されており、今後の発展が期待されています。

      (6)血管肉腫
      悪性血管内皮腫とも呼ばれ、極めて稀な軟部肉腫です。好発年齢は20歳以降の成人で,好発部位は,大腿,体幹の軟部や皮膚,皮下などです。時に多発性骨腫瘍としても発症します。乳癌術後などの長期間のリンパ浮腫を母床として発生することも知られています。通常,無痛性の腫瘤として発生し,比較的緩徐に増大し冬痛や潰瘍形成を伴うようになります。長期のリンパ浮腫や炎症の存在が診断の参考になる場合があります。治療は広範切除を行いますが、皮膚に出来る場合には非常に再発の傾向が強く、切断が勧められる場合もあります。化学療法の感受性は低いですが、インターロイキン2が有効な症例も報告されています。血行性肺転移の他,所属リンパ節転移、肝、脾転移もしばしばみられ,5年生存率は10〜40%と悪性度の高い腫瘍です。特に肺転移は肺気腫様で単純レントゲンでわかりにくい場合があり、CTによるチェックが有用です。

      (7)悪性神経鞘腫
      神経線維腫症(レックリングハウゼン氏病)という疾患に合併するものが半数で、やや若年にみられますが、主として中年に発生する軟部腫瘍です。神経から発生する悪性腫瘍ですので、進行すると疼痛や神経障害が認められます。化学療法が有効な症例は少なく、手術治療が主となります。ただ、神経に沿って広がっている場合があり、再発率が高いのが特徴です。放射線治療は疼痛に対して有効です。5年生存率は約50%です。

      (8)間葉性軟骨肉腫、骨外性粘液型軟骨肉腫
      前者は15〜35才の若年に多く、大腿、後腹膜などに好発します。悪性度が高く、肺転移しやすい腫瘍です。化学療法と広範切除術が行われます。後者は中年の男性に多く、非常にゆっくりと進行する腫瘍で、化学療法の効果はまだよくわかっていません。広範切除術が施行されます。

      (9)胞巣状軟部肉腫
      由来組織の判っていない腫瘍です。血流が豊富で、腫瘍が拍動して触れたり、聴診器で血流音が聞こえる腫瘍です。非常にゆっくり増大する腫瘍ですが、初診時にすでに肺や脳に転移していることが多い腫瘍です。化学療法は効果ありませんが、塞栓療法は有効と当科では考えています。

      (10)類上皮肉腫
      由来組織の判っていない腫瘍です。手や前腕に発生する腫瘍で、皮下に出来た時は潰瘍を伴うことが特徴です。肉腫は一般にリンパ節転移は多くありませんが、この腫瘍と次の明細胞肉腫は例外で、リンパ節転移が多いのが特徴です。また、頭皮や皮膚の転移が多いのも特徴ですが、肺転移も注意が必要です。四肢末梢に発生して体幹の方向へ徐々に転移してくる事が多く、最初から切断術を施行することが有効とされています。

      (11)明細胞肉腫
      軟部に出来る黒色腫です。再発や転移の傾向が強く、またリンパ節転移が多いため、切断もしくはリンパ節郭清が勧められる腫瘍です。化学療法は症例により有効な場合があり、施行が勧められますが、黒色腫同様、免疫療法に対する感受性も良いと考えられます。
     
4.診断、検査の方法
    A.診察
    腫瘍の診断において、症状の有無や増大の速度は非常に重要です。いつ気づいたか、痛みがあるかどうか、腫瘤の増大する速度はどうか、いままでどんな病気にかかったことがあるかなどの問診に答えて頂くことで、ある程度の診断の候補が類推出来ます。そして視診や触診により、大きさや硬さ、熱感、拍動性、周囲との可動性、リンパ節などをチェックします。腫瘍部位が診察しやすい服装で受診して下さい。特に大きさが5cmを超える腫瘍は注意が必要で、症状がないからと放置するのは厳禁です。
    B.画像検査
     
    (1)レントゲン: 骨の変化、軟部腫瘤陰影の存在部位、石灰化などについて診断します。骨腫瘍では、レントゲンだけでかなり診断が絞り込まれます。
    (2)CT: 体の横断像を描出するX線検査です。3次元的に病巣を把握出来ます。腫瘍の場合には一般に造影剤を使用します。腫瘍内の壊死、血管の分布、腫瘍と大事な血管との関係が判ります。
    (3)MRI: 磁石の原理で、体に強力な磁場をかけ、体内の水素原子から発生する電磁信号を感知して撮像する検査です。組織の中の水分含量で、信号強度が異なるので、組織の判別がある程度可能となります。造影剤を使用し、T1,T2という異なった条件下で撮影し診断します。血管のみを描出することも可能で、血管造影検査の代りに行われる場合もあります。
    (4)放射性同位元素
      (アイソトープ)検査:
    骨や腫瘍に取り込まれる放射性同位元素を注射し、一定時間後に病変部位に取り込まれた放射性同位元素からの放射能を測定する検査です。解像度は低いですが、全身の描出が可能で、一度に全身をチェックしたり、放射性同位元素の取り込まれ方で、腫瘍の性格を判断します。
    (5)血管造影: 血管に造影剤を注入し腫瘍部の血管を詳しく調べるために行ないますが、危険性もあり、最近は検査目的だけではあまり行なっていません。腫瘍の血管に直接抗ガン剤を注入したり、血管を内側から詰めてしまう治療目的、あるいは血管を縫合する必要がある手術前では行なわれます。

     
    C.生検(病理検査)
     
    (1)針生検: 腫瘍を直接針で刺して細胞や組織小片を採取して顕微鏡で調べる検査です。主として外来で、良性か悪性かの診断を早く得たい時に行なわれます。しかし、採取できる細胞や組織の量は少なく、診断に充分な量が得られない欠点があります。
    (2)切開生検: 麻酔をかけて、腫瘍の一部を取り出して病理検査を行なう方法です。検査の結果がでるまで、1〜2週間かかります。稀な腫瘍の場合にはもっと時間のかかる場合もありますが、きちんとした確定診断に基づく治療が必要不可欠です。最終的な診断は通常この方法によります。
    (3)遺伝子診断: 軟部腫瘍は特異的な遺伝子異常が判明しているものが少なくありません。当科ではこれらの診断的価値のある遺伝子異常を研究所と共同で解明するシステムを持っています。この方法により稀で診断に難渋するような腫瘍も明確な診断が可能になってきました。また、これらの腫瘍の原因遺伝子は、新しい治療法の開発には欠かせません。当科では大阪大学や京都大学をはじめ、関西の多くの施設と共同で、この遺伝子診断方法の標準化と、新しい治療法開発への研究をすすめています。

     
5.治療の方法と副作用
    A.手術療法
    悪性腫瘍を確実に迅速に体から除去する最も有効な手段は手術療法です。そして、局所再発をしない手術を行うためには、腫瘍の性質と位置をよく知って手術を行う必要があります。悪性骨軟部腫瘍の切除については日本整形外科学会で細かなガイドラインが定められており、当院もこのガイドラインに従って手術を施行しています。すなわち、悪性度の高い肉腫を切除する際には、少なくとも腫瘍の境界部から3cm離れて、正常の組織でくるむようにして切除をする必要があります。問題となるのは最初に不完全な手術が実施されている場合で、この場合には前の手術の傷を全部含む大きな切除が必要となります。四肢の腫瘍の手術を受ける際にはこの点を注意して受けるようにして下さい。さて、腫瘍を切除した後は、切除した組織の機能を再建する処置が必要になります。これには人工物と自分の骨と大きく2つあり、それぞれ、感染や緩み、摩耗、あるいは骨折や骨癒合のなど長所、短所があり、術前にゆっくりと相談しながら決定します。当科と大阪大学の独自の方法としては術中体外照射自家骨移植を行なっています。また、別の部位の皮膚、筋肉、骨などをもってきて血管をつないだり、新しい人工骨を用いたり、人工血管を用いるなどの複雑な再建も、当院の多くのエキスパートの医師との共同により、多数施行されています。さらに、最初の手術だけでなく、肺転移を来した場合には肺転移巣の切除術も胸部外科に依頼して積極的に行なっています.これは延命効果を期待してはじめられたものですが、転移巣の数の少ない場合には、まれに治癒が可能な症例もあり、積極的な治療が当院の使命と考えています。
    B.化学療法
    手術療法は、手術を行なう局所に対しての治療で、局所療法と言います。これに対して、抗がん剤を用いて腫瘍細胞を死滅させる方法は全身療法になります。静脈から点滴で抗がん剤を注入し、全身に投与することで、検査を行っても発見できない小さな転移を治療するために行います。もちろん、手術前ならば局所の腫瘍にも有効ですし、術後には局所再発や転移巣増大の防止にもなります。当科では通常は数種類の抗がん剤を併用して原則として点滴で月に一回の間隔で投与します。使用する薬剤は、アドリアマイシン(ADM)、イフォマイド(IFM)、シスプラチン(CDDP)、メソトレキセート(MTX),ビンクリスチン(VCR)、アクチノマイシンD、エンドキサン(CPM)などがあり、いくつかの薬剤を組み合わせて使用します。化学療法は副作用が強く、つらい治療のひとつですが、最近は副作用を軽減する新しい薬剤や、いろいろな支援療法が行われています。副作用には、顆粒球減少、嘔吐、悪心、脱毛、口内炎、血小板減少、心筋毒性、腎毒性、聴力障害、出血性膀胱炎、薬剤性肝障害等がありますが、当科では、基本的に効果のある腫瘍に対しては経過を慎重に見ながら、超大量を積極的に行なう方針をとっています。ただ、効果のない場合には有害な治療を避けるため、腫瘍の抗ガン剤感受性を投与する前に判定する方法の研究、開発も行なっています。抗ガン剤の治療を乗り越えて数年無事でいる患者さんは、髪の毛もふさふさしていますし、子供も作って、普通の状態で生活していますので、治すために頑張って欲しいと思います。
    C.放射線療法
    軟部肉腫は放射線療法が効きにくいものが多く、第一に選択することはあまりありません。しかし、手術不能の場合や、手術の補助療法として、手術前や手術後に行います。通常、身体の外から照射する外部照射が行われていますが、手術の際に腫瘍があった場所に細いチューブを多数置いて、このチューブの中に放射線線源を入れる小線源療法を行う方法も行なっています。また、当科では、腫瘍切除時に切除した骨を術中に照射して体内へ戻す術中体外照射自家骨移植も行なっています。
    D.温熱療法
    腫瘍細胞は43℃以上に温めると死滅します。当院では、胸部外科に依頼して、胸腔内に播種した転移に対して、胸腔内温熱療法を施行しています。
    E.リハビリテーション
    温存した患肢の良好な機能を確保するために、リハビリテーションを行なっています。これは社会復帰を促す上でも重要です。当院では腫瘍の患者さんの経験豊富な専門PTがいます。
    F.免疫療法
    患者の抗腫瘍免疫を賦活することによる治療法です.種々の免疫療法が試みられていますが、有効性の実証できた方法は少ないのが実状です。当院では、研究所とタイアップして、樹状細胞を利用し、肉腫に特異的な分子に対する免疫療法の研究を行なっています。
    G.民間療法
    アガリスク、AHCC、天仙液等々、現在では様々な民間療法が患者さんの間で広まっていますが、当科では治療上有害な場合を除いて禁止はしていません。ただ、民間療法を試みられる場合は、行なっていることを隠さず教えて頂ければと思います。それらの有効性に対する研究はまだ始まったばかりで、有益なのか有害なのかについての検証を今後していく必要があると考えるからです。
6.大阪府立成人病センターの治療の特色
     
    A.症例数が多い 大阪という大都市の人口に対して、関西には骨軟部腫瘍の治療を行なっている施設は関東に比べて多くはありません。従って、現在までに経験している症例の数は日本でも有数です。この治療経験が実際の臨床においては患者さんの非常に強い味方になってくれます。
    B.患肢温存手術 大阪大学の関連施設として、当科は早くから患肢温存に着手し、人工関節の長期経過観察でも日本で有数の施設です。現在は、最新の延長可能腫瘍用人工関節を用いた手術や放射線科との共同による術中体外照射自家骨移植術、局所小線源放射線照射法、腫瘍血管永久塞栓術など、さらには当科の他グループの協力による骨延長術、マイクロサージェリーを応用し可能な限り切断をしない「患肢温存」を行っています。
    C.遺伝子診断: 病気は原因を突き止めて治すのが常道ですが、まだそれは出来ていません。軟部腫瘍は特異的な遺伝子異常が数多く判明しており、当科では、それを用いた遺伝子診断を実地に臨床に応用しています。これは来るべき次代の治療である遺伝子異常に基づく根本的な治療を早く始めたいからです。まだまだ研究の段階ですが、抗ガン剤や手術無しに骨軟部腫瘍を治せる時代を夢見て施行しています。
    D.化学療法: 多くの症例の経験から導き出した独自の化学療法プロトコールを用いて治療をしています。
    E.多施設との共同医療: 骨軟部腫瘍専門医のいる関連病院には、大阪大学、国立大阪病院、国立呉病院、大阪府立病院などの大病院があり、これらの病院では当科と同様の骨軟部腫瘍に対する先進の治療が提供されています。また、これらの施設は密接なコミュニケーションをとりながら共同で臨床病理学的研究、遺伝子治療・免疫療法の研究、人工骨・骨再生医療の研究・開発臨床研究を行っています。

     
7.大阪府立成人病センターにおける治療成績
    骨腫瘍
    代表的な悪性骨腫瘍である骨肉腫は、この20年の間にめざましく成績が向上しました。これは化学療法の導入と向上によるものが大きいのですが、最近では化学療法が著効した初診時に転移のない場合の5年生存率は約90%、化学療法の効果が無い場合でも約60%で、全体では約75%の成績です。しかし、初診時に転移が存在する場合には、まだ予後は悪く、今後の治療課題です。その他の骨腫瘍の全体的な治療成績は、5〜60%ですが、転移の有無、化学療法の効果、局所の進行度が重要な因子となりますので、早期の発見、治療が重要です。機能的な予後については、四肢に出来た腫瘍の場合は神経や血管を温存できれば、スポーツ等の制限はるものの通常の日常生活が送れるようになる場合が殆どです。しかし、体幹、特に骨盤や股関節周辺に出来た腫瘍の場合には杖が必要となる場合が多く、より機能的な患肢温存の方法が今後の課題です。
    軟部腫瘍
    病理組織学的な悪性度が、治療成績に最も影響を与えます。5年生存率では、悪性度の最も低い高分化型脂肪肉腫は100%で、命に関わることはまずありません。しかし、高悪性度の多形型悪性線維性組織球腫では70%、滑膜肉腫では47%など、軟部肉腫全体では約70%前後の5年生存率です。病理学的悪性度に次いで治療成績にかかわるのが、腫瘍の大きさと深さです。大きい腫瘍、深いところにある腫瘍ほど、成績はよくありません。ただ、これらの成績はあくまで参考で、実際には軟部肉腫の頻度は少なく、病気の数は多いという特徴がある上に、患者さんにより発生部位や治療の状況も異なるため、あまり治療成績にとらわれず、早期に適切な治療を行なって、きちんと経過を見ていくことが肝要です。


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