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がん Info

「がんInfo.」は、米国国立がん研究所(National Cancer Institute : NCI)のがん情報(*PDQ)の患者さん向け情報を、NCI承認のもと国際医学情報センターの責任で翻訳し提供しております。93項目中、40項目がご覧になれます。
多発性骨髄腫/その他の形質細胞性腫瘍

概説


このセクションの要点
  • 多発性骨髄腫/その他の形質細胞性腫瘍(がん)は体内で過度に多くの形質細胞がつくられる病気です。
  • 多発性骨髄腫/その他の形質細胞性腫瘍にはいくつかのタイプがあります。
    • 多発性骨髄腫
    • 形質細胞腫
    • マクログロブリン血症
    • 意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)
  • 多発性骨髄腫と他の形質細胞腫瘍(がん)はアミロイドーシスと呼ばれる状態の原因となる可能性があります。
  • 年齢は形質細胞性腫瘍の発生リスクに影響する可能性があります。
  • 多発性骨髄腫/その他の形質細胞性腫瘍を発見し診断するために、血液、骨髄、尿を調べる検査が行われます。
  • 諸条件により予後(治癒の可能性)や治療法の選択が変わります。

多発性骨髄腫/その他の形質細胞性腫瘍(がん)は体内で過度に多くの形質細胞がつくられる病気です。

形質細胞は骨髄中でつくられる白血球の一種であるBリンパ球(B細胞)から生じます。通常、細菌やウィルスが体内に入るといくつかのB細胞が形質細胞に変わります。形質細胞は体内に入った各種細菌やウィルスと闘うために様々な抗体をつくり感染症や病気を防ぎます。

形質細胞性腫瘍は骨髄中に通常に機能することができない過度に多くの形質細胞、つまり骨髄腫細胞がみられる病気です。これが生じると、健常な赤血球、白血球、血小板が発生するための余地が少なくなります。この状況では貧血や易出血性が誘発されたり、感染症に罹患しやすくなります。異常な形質細胞は時に身体の骨や軟部組織中に腫瘍を形成します。また形質細胞は身体にとって必要ではなく感染症と闘う上で役立たないM蛋白と呼ばれる抗体蛋白をつくります。これらの抗体蛋白は骨髄内で増加して血液を粘稠化し腎臓を損傷することがあります。

多発性骨髄腫/その他の形質細胞性腫瘍にはいくつかのタイプがあります。

形質細胞性腫瘍には以下のようなものがあります:
多発性骨髄腫
多発性骨髄腫では、異常な形質細胞(骨髄腫細胞)が骨髄内で増加して身体の多くの骨中に腫瘍を形成します。これらの腫瘍は骨髄が健常な血液細胞を十分につくることを妨げます。通常、骨髄内では3種類の成熟した血液細胞となる幹細胞(未成熟細胞)がつくられます。
  • 赤血球は身体のあらゆる組織に酸素や他の物質を運びます。
  • 白血球は感染や病気と闘います。
  • 血小板は血液を凝固させて出血を予防する上で役立ちます。
骨髄腫細胞数が増加すると、つくられる赤血球、白血球、血小板数が減少します。また骨髄腫細胞は骨の硬質部を損傷、脆弱化します。時に多発性骨髄腫では全く症状を示さないことがあります。多発性骨髄腫や他の状況において以下の症状がみられることがあります。以下の障害がひとつでもみられた際には医師の診察を勧めます:
  • 骨痛、多くの場合背骨または肋骨
  • 易骨折性の骨
  • 原因不明の発熱や頻繁な感染症
  • 内出血や出血が生じ易い
  • 呼吸障害
  • 四肢の脱力感
  • 強い疲労感
腫瘍は骨を損傷し、高カルシウム血症(血液中に過度に多くのカルシウムがある状態)を誘発することがあります。高カルシウム血症は腎臓、神経、心臓、筋肉および消化器官を含む身体中の多くの器官に影響し、重大な健康障害を誘発することがあります。

高カルシウム血症では以下の症状がみられることがあります:
  • 食欲低下
  • 悪心・嘔吐
  • 口渇感
  • 頻尿
  • 便秘
  • 強い疲労感
  • 筋力低下
  • 情動不安
  • 精神的錯乱や思考障害
形質細胞腫
このタイプの形質細胞性腫瘍では異常な形質細胞(骨髄腫細胞)が1カ所に集積し、形質細胞腫と呼ばれる単一の腫瘍を形成します。形質細胞腫は骨髄中または髄外(骨髄外側の軟部組織内)に生じることがあります。骨の形質細胞腫はしばしば多発性骨髄腫になります。髄外性形質細胞腫は一般に喉と鼻腔の組織に生じます;これらは通常治癒可能です。

腫瘍の発生部位により症状は異なります。
  • 骨では、形質細胞腫は疼痛または骨折を誘発することがあります。
  • 軟部組織では、腫瘍は周辺領域を圧迫し、疼痛や他の障害を誘発することがあります。例えば、咽喉形質細胞腫では嚥下困難がみられます。
マクログロブリン血症
マクログロブリン血症では異常な形質細胞は骨髄、リンパ節、脾臓中に集積します。マクログロブリン血症では過度に多くのM蛋白がつくられ、血液を粘稠化します。リンパ節、肝臓、脾臓は肥大化することがあります。血液が粘稠化すると小血管に血流障害の生じることがあります。

マクログロブリン血症の症状は罹患した身体の部位により異なります。マクログロブリン血症を呈した患者さんのほとんどは無症状です。以下の障害がひとつでもみられた際には医師の診察を勧めます:
  • 強い疲労感
  • 頭痛
  • 鼻出血
  • かすみ目などの視力変化や眼球突出
  • めまい
  • 手足、手足の指または身体の他の部分における疼痛、ヒリヒリ感、しびれ感
  • 歩行障害
  • 錯乱
  • 左側肋骨より下の疼痛または膨満感
  • 頚部、腋の下、胃または鼠径部における無痛性のしこり
意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)
このタイプの形質細胞性腫瘍では骨髄中に異常な形質細胞がみられますが、がん化していません。異常な形質細胞は通常の血液検査や尿検査中に発見されることがあるM蛋白を産生します。ほとんどの患者さんでM蛋白量は同じ状態を維持し、症状や障害はみられません。数名の患者さんでは、MGUSはあとに多発性骨髄腫やリンパ腫などより重篤な状態になることがあります。

多発性骨髄腫と他の形質細胞腫瘍(がん)はアミロイドーシスと呼ばれる状態の原因となる可能性があります。

稀に、多発性骨髄腫により臓器不全の誘発されることがあり、これはアミロイドーシスと呼ばれる状態においてみられることがあります。抗体蛋白が増加して結合し腎臓や心臓などの臓器に集積すると臓器は硬化し機能不全となります。

年齢は形質細胞性腫瘍の発生リスクに影響する可能性があります。

病気を発症する危険を高めるものをリスク因子と呼びます。リスク因子があるからといって、がんになるとは限りません。また、リスク因子がないからといって、将来がんにならないわけではありません。リスクを持つ可能性がある人は医師に相談してください。
形質細胞性腫瘍は中年以降の患者さんに最も多く認められます。
多発性骨髄腫と形質細胞腫については、他に以下のようなリスク因子があります:
  • 黒人である
  • 男性である
  • 多発性骨髄腫の兄弟姉妹がいる
  • 原爆被曝歴がある

多発性骨髄腫/その他の形質細胞性腫瘍を発見し診断するために、血液、骨髄、尿を調べる検査が行われます。

以下の試験や手法が用いられます。
身体所見および既往歴:
全身を調べて、しこりや何か異常にみえるものなど疾患徴候を含めた一般的健康状態をチェックします。また患者さんのこれまでの生活習慣や過去の疾患および治療の病歴についても調べます。
生検:
骨細胞、リンパ節または組織を採取して病理医が顕微鏡下で観察し、異常な細胞やがんの徴候を調べます。
骨髄吸引・生検:
寛骨または胸骨に筒状針を挿入して骨の小片、骨髄および血液を採取します。病理医が骨髄、血液および骨を顕微鏡下で観察し、異常な細胞があるかどうかを調べます。
X線検査:
X線とは体内を通過して、体内領域の写真をフィルム上に撮影できるエネルギービームの一種です。X線は骨が損傷している領域を発見するために用いられます。
MRI(磁気共鳴イメージング):
磁場、電波、コンピュータを用いて骨髄など体内領域の詳細な像を連続的に撮影します。この方法は核磁気共鳴イメージング(NMRI)とも呼ばれています。MRIは、骨が破損されている領域を見つけるのに使用する場合があります。
全血球数(CBC)算定検査:
血液サンプルを採取し、下記の項目を調べる手法です:
  • 赤血球および血小板数
  • 白血球の数とタイプ
  • 赤血球中のヘモグロビン(酸素を運ぶ蛋白質)量
  • 血液サンプル中の赤血球の構成比率
血液化学的検査:
身体中の器官、組織によって血液中に放出されるカルシウム、アルブミンなどある物質の量を測定するために、血液サンプルを調べる方法です。ある物質の量が異常(正常値よりも高値か低値)である場合、それをつくる器官、組織における疾患の徴候であることがあります。
血中あるいは尿中免疫グロブリン検査:
ある種の抗体(免疫グロブリン)の量を測定するために血液サンプルを調べる方法です。多発性骨髄腫に対しては、骨髄腫細胞によりつくられるβ-2-ミクログロブリン、M蛋白と他の蛋白を測定します。これらの物質の量が正常値より高い場合、疾患の徴候であることがあります。
24時間蓄尿検査:
ある物質の量を測定するために尿を24時間採取する検査です。ある物質の量が異常(正常値よりも高値か低値)である場合、それをつくる器官、組織における疾患の徴候であることがあります。蛋白量が正常値よりも高い場合、多発性骨髄腫の徴候であることがあります。
電気泳動法:
血液または尿サンプル中にM蛋白があるかどうかを調べ、M蛋白量を測定する検査です。
細胞遺伝学的分析:
血液、骨髄サンプル中の細胞を顕微鏡下で観察し、染色体中の特定の変化を調べる検査です。

諸条件により予後(治癒の可能性)や治療法の選択が変わります。

予後(治癒の可能性)は以下の条件によって異なります:
  • 形質細胞性腫瘍のタイプ
  • 疾患の病期
  • ある種の免疫グロブリン(抗体)が存在するかどうか
  • ある種の遺伝子変化が存在するかどうか
  • 腎が損傷を受けているかどうか
  • がんが初回治療に反応したか、または再発(再燃)かどうか
治療法は以下の条件によって異なります:
  • 形質細胞性腫瘍のタイプ
  • 患者さんの年齢と全身状態
  • 疾患に関連した健康障害がみられるかどうか
  • がんが初回治療に反応したか、または再発(再燃)かどうか


病期

このセクションの要点
  • 多発性骨髄腫/その他の形質細胞性腫瘍と診断されたあと、身体中のがんの量を調べるために検査が行われます。
  • 多発性骨髄腫の病期は血液中のβ-2-ミクログロブリンやアルブミンの価によります。
  • 多発性骨髄腫に対して以下の病期が用いられます。
    • I期多発性骨髄腫
    • II期多発性骨髄腫
    • III期多発性骨髄腫
  • その他の形質細胞性腫瘍では多発性骨髄腫とは異なって病期分類されます。
    • 骨の孤立性形質細胞腫
    • 髄外性形質細胞腫
    • マクログロブリン血症
    • 意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症

多発性骨髄腫/その他の形質細胞性腫瘍と診断されたあと、身体中のがんの量を調べるために検査が行われます。

身体中のがんの量を調べるために行われる検査を「病期診断」といいます。治療計画を立てるために病期を把握することは重要です。病期診断に用いられる検査や手法には次のようなものがあります:
X線検査:
X線とは体内を通過して、体内領域の写真をフィルム上に撮影できるエネルギービームの一種です。
MRI(磁気共鳴イメージング):
磁場、電波、コンピュータを用いて骨髄など体内領域の詳細な像を連続的に撮影します。この方法は核磁気共鳴イメージング(NMRI)とも呼ばれています。
CTスキャン(CATスキャン):
いろいろな角度から体内の詳細な像を連続的に撮影します。像はX線撮影装置と連動したコンピュータにより作られます。造影剤を静脈内に注入するか飲み込むと、臓器や組織がよりはっきり示されます。この方法はまたコンピュータ断層撮影法、またはコンピュータ体軸断層撮影法とも呼ばれます。
PETスキャン(陽電子放射断層撮影):
体内にある悪性腫瘍細胞をみつける手法です。少量の放射性核種グルコース(糖)を静脈内に注入します。PETスキャナーが体の周囲を回転してグルコースが体内で利用されている部分の像を撮影します。悪性がん細胞は正常細胞よりも活発で、グルコースをより多く吸収することから像はより明るく示されます。
骨密度測定:
特定のタイプのX線を用いて骨損失を測定する手法です。

治療がどの程度作用しているかを調べるためにある種の検査が繰り返し行なわれることがあります。

多発性骨髄腫の病期は血液中のβ-2-ミクログロブリンやアルブミンの価によります。

β-2-ミクログロブンリンとアルブミンは血液中にみられます。β-2-ミクログロブリンは形質細胞の表面にある蛋白です。アルブミンは血漿の大部分を構成していて、液体が血管から漏れるのを防ぎ、栄養分を組織に届け、ホルモン、ビタミン、薬物や、カルシウムのような他の物質を体中に運びます。多発性骨髄腫患者さんの血液中のβ-2-ミクログロブンリンの量が増加するとアルブミンの量が減少します。

多発性骨髄腫に対して以下の病期が用いられます。

I期多発性骨髄腫
I期多発性骨髄腫では血液の価が以下のようになります:
  • β-2-ミクログロブンリンの値が3.5g/mL以下。;そして、
  • アルブミンの値が3.5g/dLまたは高くなる。
II期多発性骨髄腫
II期多発性骨髄腫では血液の価が以下のようになります:
  • β-2-ミクログロブンリンの値が3.5g/mL以下、アルブミンの値が3.5g/dL以下;または、
  • β-2-ミクログロブンリンの値が3.5g/mL〜5.5g/mL。
III期多発性骨髄腫
III期多発性骨髄腫では血液中のβ-2-ミクログロブンリンの値が5.5g/mLより高い。

その他の形質細胞性腫瘍では多発性骨髄腫とは異なって病期分類されます。

骨の孤立性形質細胞腫
骨の孤立性形質細胞腫では1つの形質細胞性腫瘍が骨中に認められます。形質細胞は骨髄の5%未満であり、他にがんの徴候はみられません。
髄外性形質細胞腫
1つの形質細胞性腫瘍が軟部組織中に認められますが、骨や骨髄中にはみられません。
マクログロブリン血症
マクログロブリン血症には標準的病期分類系はありません。
意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症
意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)では、血液中のM蛋白量は同じ状態を維持し、形質細胞は骨髄の10%未満であり、患者さんにがんの徴候はみられません。

難治性多発性骨髄腫と他の形質細胞性腫瘍

治療を行っても形質細胞が増え続けたときは、多発性骨髄腫と他の形質細胞性腫瘍は難治性と呼ばれます。


治療法の概要


治療にも関わらず形質細胞数が増加し続ける場合、多発性骨髄腫/その他の形質細胞性腫瘍は難治性です。
このセクションの要点
  • 難治性多発性骨髄腫/その他の形質細胞性腫瘍患者さんに対して様々なタイプの治療法があります。
  • 標準的治療法として以下の9種類が用いられます:
    • 化学療法
    • その他の薬物療法
    • 幹細胞移植と併用した大量化学療法および放射線療法
    • 生物学的療法
    • 放射線療法
    • 手術療法
    • 待機療法
    • 血漿交換療法
    • 支持療法
  • 新しい治療法は現在、臨床試験で検証中です。
    • 新しい併用療法
  • 臨床試験に参加したいと考える患者さんがいるかもしれません。
  • がんの治療を始める前、または始めるか、治療を始めた後に患者さんは臨床試験に参加することができます。
  • フォローアップ検査が必要になるかもしれません。

難治性多発性骨髄腫/その他の形質細胞性腫瘍患者さんに対して様々なタイプの治療法があります。

難治性多発性骨髄腫/その他の形質細胞性腫瘍患者さんに対して各種治療法が適用されます。標準的治療法(現在用いられている治療法)もあれば、臨床試験において検証されているものもあります。治療法についての臨床試験は、現在行われている治療法の改善やがん患者さんの新しい治療法に対する情報を得るために行われるものです。現時点で標準的とされている治療法よりも新しい治療法が良いと示された場合、今度は新しい治療法が標準的治療法になる可能性があります。臨床試験に参加してみてはどうかと考えてみるのもよいでしょう。いくつかの臨床試験は治療を始めていない患者さんにのみ開かれています。

標準的治療法として以下の9種類が用いられます:

化学療法
化学療法は、薬剤を用いてがん細胞を殺すかまたは細胞分裂を停止させることでがん細胞の増殖を停止させるがん治療のことです。口から服用したり、筋肉や静脈内に注入する化学療法では、薬剤は血流を通って全身のがん細胞に影響します(全身化学療法)。脊柱、臓器、腹部などの体腔に薬剤を直接注入する化学療法では、薬剤は主にこれらの領域中にあるがん細胞に影響します(局所化学療法)。化学療法は治療されるがんの種類や病期によって異なります。
他の薬物療法
副腎皮質ステロイド療法
副腎皮質ステロイドはリンパ腫やリンパ腫様白血病に抗腫瘍効果を示すステロイドです。

サリドマイドおよびレナリドマイド
サリドマイドおよびレナリドマイドは固形腫瘍内における新しい血管の成長を抑える血管新生抑制剤と呼ばれる薬剤です。

ボルテゾミブ
ボルテゾミブはがん細胞の中で、あるタンパク質を標的として、がんの成長を抑えるプロテアソーム阻害剤と呼ばれる薬剤です。
幹細胞移植と併用した大量化学療法および放射線療法
この治療法は大量化学療法や放射線療法を行った後、がん治療によって破壊された造血細胞を置き換えるための方法です。幹細胞(未成熟な血液細胞)を患者さんまたはドナーの骨髄や血液から採取し、冷凍保存します。化学療法や放射線療法終了後に保存しておいた幹細胞を解凍し、注入により患者さんに再び戻します。再注入されたこれらの幹細胞は身体の血液細胞に成長し(また回復)させます。
生物学的療法
生物学的療法は、患者さん自身のがんと闘う免疫機構を用いた治療法です。自らの体内でつくられる物質や実験室で作成された物質を用い、患者さん自身のがんに対するもともとの抵抗力を高め、方向づけしたり、回復させたりします。このようながんの治療法は生物学的療法または免疫療法とも呼ばれます。
生物学的療法の一種にモノクローナル抗体療法があります。これは一種類の免疫系細胞から実験室で作成された抗体を用いるがん治療法です。これらの抗体はがん細胞上にある物質やがん細胞の増殖を促進する可能性のある正常物質を同定することができます。抗体はこれらの物質に付着してがん細胞を殺すか増殖を阻害するか、拡がるのを防ぎます。モノクローナル抗体は注入により投与されます。これらは単独で用いられる他、がん細胞まで薬剤、毒素または放射性物質を直接送達するために用いられることもあります。
放射線療法
放射線療法は、高エネルギーX線やその他の種類の放射線を用いてがん細胞を殺すかあるいは成長を抑えるがん治療のことです。放射線療法には2つのタイプがあります。体外照射は体外の機械を用いてがんに放射線を照射する治療法です。体内照射は放射性物質を密封した針、シーズ、ワイヤ、カテーテルをがんの内部またはその近くに直接留置して、がんに放射線を照射する治療法です。外照射は脳や脊髄まで拡がっているか、拡がる可能性のある小児AMLの治療に用いられます。放射線療法の方法はがんの種類や病期によって異なります。
手術療法
通常、放射線療法後に腫瘍を摘出するための手術が行われることがあります。治癒の可能性を高めるために手術後に行われる治療法はアジュバント療法と呼ばれます。
待機療法
待機療法は症状が出現するまで、または変化がみられるまで治療を行わずに患者さんの状態を慎重に観察する方法です
血漿交換療法
血漿交換療法は患者さんから血液をいったん取り出して、血液細胞から血漿(血液の液体部分)を分離する装置を通してまた戻す方法です。患者さんの血漿には不必要な抗体が含まれており、これは患者さんには戻しません。正常な血液細胞を供血血漿や置換血漿とともに血流に戻します。血漿交換療法は新たな抗体の形成を抑えることはできません。
支持療法
この療法は病気やその治療が原因の問題や副作用をコントロールし、クオリティオブライフ(生活の質)を改善するものです。支持療法は多発性骨髄腫や他の形質細胞腫瘍に関連する、骨の問題やアミロイドーシスを治療します。

新しい治療法は現在、臨床試験で検証中です。

このまとめのセクションでは、現在臨床試験を行っている治療法について個々に触れますが、最新の臨床試験をすべて網羅できていない可能性があります。アメリカで実施されている臨床試験についての情報はNCI Web siteにアクセスすれば、入手できます。
新しい併用療法
臨床試験において生物学的療法、化学療法、ステロイド療法、サリドマイドまたはレナリドマイドなどの薬剤の様々な併用療法について検討されています。

臨床試験に参加したいと考える患者さんがいるかもしれません。

何人かの患者さんにおいて臨床試験に参加することは最良の治療選択であるかもしれません。臨床試験はがんの研究過程の一つです。臨床試験は新たな治療法が標準的な治療法より安全で有効であるかを見つけ出すために行います。

がんに対する今日の標準的な治療法の多くは早期の臨床試験を基本にしています。臨床試験に参加する患者さんは標準的な治療を受けるか、初めて新しい治療を受けることになるかもしれません。

また、臨床試験に参加する患者さんは未来のがん治療法の改良を助けます。新しい治療法の臨床試験が有効性を示さなくても、しばしば重要な疑問の答えとなり、研究が前進するのを助けます。

がんの治療を始める前、または始めるか、治療を始めた後に患者さんは臨床試験に参加することができます。

いくつかの臨床試験はまだ治療を受けていない患者さんを含んでいます。他の試験はがんが回復していない患者さんに対する治療を評価します。がんが再発する(再起する)のを止めるか、がん治療の副作用を軽減する新しい方法を評価する臨床試験もあります。

臨床試験は国の多くの地域で行われています。治療法の項での現在の治療法の臨床試験へのリンクを参照してください。それらはNCIの臨床試験データベースから取り出されます。

フォローアップ検査が必要になるかもしれません。

がんを診断するために行われた、あるいはがんの病期をみつけるために行われた検査が繰り返されるかもしれません。いくつかの検査は治療がどれぐらいよく効いているかをみるために行われるでしょう。治療を続ける、変更するか止めるかどうかの判断がこれらの検査結果を基に行われるかもしれません。これらはときどき再病期診断と呼ばれます。
いくつかの検査は治療が終わった後に時々継続して行われるでしょう。これらの検査結果は状態が変化したかどうか、またはがんが再発(再起)したかを示すことができます。これらの検査は時々、フォローアップ検査か定期検査と呼ばれます。

病期別治療法

現在行われている臨床試験のリストへのリンクはそれぞれの治療の項目に含まれています。いくつかのがんのタイプや病期に対しては、試験がないかもしれません。リストに載っていない臨床試験をあなたの主治医とチェックすることは、あなたにとって正しいかもしれません。

多発性骨髄腫

無症状の患者さんでは治療の必要はないことがあります。症状が出現した場合、多発性骨髄腫の全病期の治療法には以下のようなものがあります。

導入療法:これは治療の第I期です。その目的は病気を減らすことにあり、以下の1つ以上を含むかもしれません:
  • 副腎皮質ステロイド療法
  • サリドマイドあるいはレナリドマイド療法
  • ボルテゾミブ療法
  • 化学療法
地固め療法:これは治療の第II期としてしばしば行われる大量化学療法のタイプです。
  • 患者自身の幹細胞を使った自己幹細胞移植;または
  • ドナーから提供された幹細胞を使った同種幹細胞移植
維持療法:初期治療後、長期間にわたり病気の寛解を保つためにしばしば維持療法を行います。いくつかのタイプの治療法が研究されています。
  • 化学療法
  • 生物学的療法
  • 副腎皮質ステロイド療法
  • サリドマイド療法
骨の問題とアミロイドーシスを治療する支持療法には以下が含まれます:
  • 骨量減少と骨痛の軽減を示すビスホスホネート療法
  • 脊椎部の腫瘍に対する放射線療法
  • 骨粗鬆症による背中の痛みや、脊椎の圧迫骨折を軽減する化学療法
  • アミロイドーシスを治療するための化学療法や副腎皮質ステロイド療法
現在、米国で多発性骨髄腫の患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのPDQ Cancer Clinical Trials Registryから確認してください。

骨の孤立性形質細胞腫

骨の孤立性形質細胞腫に対する標準的治療法は通常放射線療法です。

化学療法や副腎皮質ステロイド療法によるアミロイドーシスを治療するための支持療法が行われる可能性があります。
現在、米国で骨の孤立性形質細胞腫の患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのPDQ Cancer Clinical Trials Registryサイトから確認してください。

髄外性形質細胞腫

髄外性形質細胞腫に対する標準的治療法には以下のようなものがあります:
  • 腫瘍および周辺リンパ節に対する放射線療法
  • 通常放射線療法後の手術療法
  • 初回治療後の待機療法、その後腫瘍の増殖または症状がみられた場合は放射線療法、手術療法、化学療法
化学療法や副腎皮質ステロイド療法によるアミロイドーシスを治療するための支持療法が行われる可能性があります。
現在、米国で髄外性形質細胞腫の患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのPDQ Cancer Clinical Trials Registryサイトから確認してください。

ワルデンストローム型マクログロブリン血症(リンパ形質細胞性リンパ腫)

ワルデンストローム型マクログロブリン血症に対する治療法には以下のようなものがあります:
  • 血漿交換療法と化学療法
  • 1種以上の薬剤を用いた化学療法
  • 待機療法
  • モノクローナル抗体を用いた生物学的療法
  • 幹細胞移植の臨床試験
化学療法や副腎皮質ステロイド療法によるアミロイドーシスを治療するための支持療法が行われる可能性があります。
現在、米国でワルデンストローム型マクログロブリン血症の患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのPDQ Cancer Clinical Trials Registryから確認してください。

意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症

意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)に対する治療法は通常待機療法で、血液中のM蛋白値を調べるために定期的に血液検査が行われます。

化学療法や副腎皮質ステロイド療法によるアミロイドーシスを治療するための支持療法が行われる可能性があります。
現在、米国で意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症の患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのPDQ Cancer Clinical Trials Registryサイトから確認してください。

難治性形質細胞性腫瘍

難治性形質細胞性腫瘍の治療法には以下のようなものがあります:
  • 疾患が安定している患者さんに対しては待機療法
  • 以前に行なわれた治療法とは異なる治療法(多発性骨髄腫の治療法を参照)

化学療法や副腎皮質ステロイド療法によるアミロイドーシスを治療するための支持療法が行われる可能性があります。
現在、米国で難治性形質細胞性腫瘍の患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのPDQ Cancer Clinical Trials Registryサイトから確認してください。
(2008年07月更新)


※このがん情報は米国国立がん研究所で作成されていますので、日本の状況と多少異なる点もあります。それらについては医師にご相談下さい。
※このサービスは米国国立がん研究所(NCI、http://www.cancer.gov/)のがん情報の一部をNCIの承認の元に(財)国際医学情報センターの責任で翻訳、提供しています。
※無断転載禁ず。