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1、前立腺の解剖と働き
前立腺の病気は、近年の高齢化とともに前立腺肥大症およびがんといった疾患が増加しており、泌尿器科の扱う臓器の中では、腎臓および膀胱とともに臨床上とても重要です。前立腺は直接目でも見えませんし、下腹部(骨盤くうの奥の)にあります。直接前立腺を観察するためには直腸より直腸壁越しに指で触ることは可能です。解剖学的には、前立腺は膀胱の下にあり、左右の前立腺葉が融合し尿道を取り囲んでおり前立腺部の尿道に分泌腺が開口しています。正常では左右の前立腺葉の接合部はやや窪んでおり触診にてよくわかります。形は栗の実のようであり、大きさはだいたい3x4cmであり、成人男性で約20g程度の重量です。
前立腺は男性の生殖器官の一部ですが、精嚢腺とともに外分泌副生殖腺として重要な臓器です。哺乳類は前立腺が必ずありますが、犬は精嚢腺はありません。したがって前立腺は生殖能には欠くべからざる重要な臓器であると考えられます。前立腺は解剖学的に均一な臓器ではなく、大きく3つの領域(ゾーン)に区分されています。すなわち辺縁ゾーン、中心ゾーン、そして移行ゾーンから成り立つ考えられています。一般的には肥大症は尿道周囲の移行ゾーンから発生し、がんは主に辺縁ゾーンから発生するとされており、一つの臓器から悪性と良性の腫瘍性病変が異なった部位から発生します。
前立腺は、その発生と増殖、成長のすべてを男性ホルモンに依存しています。前立腺はもともと泌尿生殖洞という場所から発生しますが、出生する前から、胎生期の精巣より出される男性ホルモンであるテストステロンにより刺激されて発生成長します。また生後の前立腺の成長と発育もまたこの男性ホルモンによります。動物実験では、成長後去勢されると前立腺は急速に退縮し約1/10にまでなり、この状態でまた男性ホルモンをあたえるとまたもとの重量にもどります。人間においても、同様に去勢されると前立腺は退縮します。また思春期までに去勢されると、前立腺の成長がとまり退縮し前立腺肥大症あるいはがんなどの病気も発生しません。このように、前立腺は男性ホルモンのおかげで存在しているといっても過言でありません。この男性ホルモン依存性を利用して、前立腺肥大症あるいはがんの治療がおこなわれております。
前立腺の働きは未だ不明なことが多いですが、前述しましたように生殖には欠くべからざる臓器であることに間違いありません。とくに精液の一部をつくっていることはあきらかです。精液の役割には、精子が妊娠させる能力を高めるために、活動力を与え精子を運搬する重要なはたらきがあります。精液の成分には、クエン酸やコレステロールなどの脂肪なども多く含み、亜鉛の濃度も高いことが知られております。これらの成分の役割もまだあきらかでないことが多いですが、やはり精子の妊孕性を維持するために必要と考えられています。亜鉛には強い殺菌作用があり精液の細菌による感染を防止していると考えられています。さらに、前立腺特異抗原はこの精液より分離抽出された物質であり、これらの血中濃度を測定することにより前立腺がんの診断に役立っております。
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