大阪府立成人病センター
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精巣腫瘍
  1. 1.精巣腫瘍(睾丸腫瘍)とは
  2. 2.精巣腫瘍の危険因子
  3. 3.特徴的な症状
  4. 4.精巣腫瘍の診断
  5. 5.病気のひろがり
  6. 6.治療法と副作用
  7. 治療成績
  8.  1.精巣腫瘍の治療成績

1.精巣腫瘍(睾丸腫瘍)とは
    精巣腫瘍とは、男性の精巣に発生する悪性腫瘍です。精巣は、男性ホルモンを産生する細胞と、精子を作る細胞で形成されていますが、精巣腫瘍はほとんどが精子を作る細胞から発生します。精巣腫瘍は、男性の悪性腫瘍の1%を占める比較的まれな疾患です。 10万人あたりの一年間の発生率は、わが国では0.7〜1.8人です。米国白人では4.8〜8.7人、アフリカ系米国人では1.0〜1.4人、英国人では4.4〜5.9人で、欧米人に多く発生し、最近50年間に発生率は2倍に増加しています。大阪府では1年間に80人〜100人発生します。年齢分布は乳幼児期と15歳から35歳までの青壮年期に好発し、以後減少して65歳以後ほぼ一定となります。 精巣腫瘍は臨床上、顕微鏡的な組織成分から大きく分けて(1)セミノーマ(精上皮腫)と(2)非セミノーマの2つに分類されます。発生頻度はセミノーマが約30%です。非セミノーマというのは組織成分に胎児性がん、卵黄嚢腫瘍、絨毛がん、奇形腫、多胎芽腫といわれるものが少なくとも1つ含まれるものをいいます。セミノーマか非セミノーマかによって治療方針が変わってくるので精巣腫瘍の組織成分は大変重要な事柄となります。
2.精巣腫瘍の危険因子
    病因として、停留精巣(精巣が陰嚢まで降りていない)の方の場合、停留精巣がない方より2.5〜14倍の高いリスクで発生するといわれています。何らかの原因(例えば染色体異常)により精巣の発育不全があるときも精巣腫瘍のリスクが高くなるとされています。また、ウイルス性精巣炎にかかったこと、外傷後に精巣が萎縮した場合、胎児期の母体内でエストロゲン(女性ホルモン)が過剰であった場合などとの関連性が指摘されています。 他に、社会的要因として性的早熟化と発生率の増加との関連性も指摘されています。精巣腫瘍に既にかかった患者さんは後日反対側にも発生する場合があり、自然発生に比べて20〜70倍危険性が高いと報告されています。 このように様々な原因が指摘されていますが、思春期以降の精巣腫瘍の場合、発生原因は不明な場合が多いです。
3.特徴的な症状
    ほとんどの精巣腫瘍は、患者さん自身によって発見されます。精巣自体の大きさの変化や硬結(しこり)が主な症状であり、自覚症状の3分の2が精巣の痛みや熱を伴わない腫れです。精巣上体炎や精索軸捻転などの病気でも陰嚢内にしこりを触れますが、これらの場合痛みや熱を伴うことが多いという特徴があります。他に、そけい部(脚のつけ根)や下腹部の鈍痛を伴うものがあります。 進行性(病状が進行した)精巣腫瘍では、陰嚢内容の腫大の他、腫瘍の転移部位により腰痛や呼吸困難や首の周囲の腫瘤(かたまり)を伴うものがあります。
4.精巣腫瘍の診断
    診断には医師による触診所見の他、超音波検査、MRI検査、CT検査といった画像診断が重要です。超音波検査では、陰嚢内の正常精巣の有無、病変部の位置、形態、内部構造および均一な正常精巣と比較したエコーの変化から診断します。MRI検査は単一精巣の場合や、超音波診断で鑑別困難な場合に施行します。精巣内の出血や嚢胞(液体がたまった袋)などの質的診断に有用です。CT検査は主に転移部位の診断に用います。精巣腫瘍の転移は腹部の大動脈、大静脈周囲のリンパ節が多いのですが、そのほか、肝転移、肺転移、脳転移の有無などを診断します。 精巣腫瘍の構成成分の診断や初期の転移診断や治療効果の判定、再発の早期診断に腫瘍マーカーが有用です。採血項目が利用されています。以下のものがあります。

      A.β(ベータ)-HCG

      絨毛上皮がんの100%、胎児性がんの80%、セミノーマの7〜18%に上昇がみられます。

      B.AFP(アルファフェトプロテイン)

      胎児期の卵黄嚢や肝臓から産生され、1歳以上の健康人の血中には15ng/ml以下しか存在しません。セミノーマ単一組織で産生されることはなく、検出された場合は、非セミノーマ成分があるものと考えられます。胎児性がんおよび内胚葉性腫瘍で上昇します。

      C.LDH(乳酸脱水素酵素)

      精巣腫瘍の組織型によらず、腫瘍の大きさや総腫瘍量に関連して上昇します。進行性精巣腫瘍ではセミノーマの80%、非セミノーマの60%に上昇が見られます。
5.病気のひろがり
    病気のひろがりの程度は病期分類と呼ばれ、わが国では主に日本泌尿器科学会の精巣腫瘍病期分類(第二版1997年)が用いられます。以下の通りです。 T期は、腫瘍が精巣、精巣上体、精索に限局し他に転移が認められないもの。すなわち原発の精巣腫瘍摘除後、腫瘍マーカーが陰性化し、かつリンパ節転移の認められないもの。 U期は、横隔膜以下のリンパ節にのみ転移が認められるもの。 V期は、横隔膜より上のリンパ節転移、遠隔転移を有するもの。V0が特別で明確な転移は認められないが、精巣摘除後も腫瘍マーカーが陰性化せず陽性であるもの。VA、VB、VCは転移部位のひろがりにより分類されています。 U期以上を進行性精巣腫瘍と分類します。
6.治療法と副作用
    精巣腫瘍は一般に増殖速度が速く、転移しやすい性格を持っていますので、その疑いがあれば出来るだけ早期に入院して頂き、まず原発巣の摘除を行います。これは通常腰椎麻酔でそけい部を切開し、精巣および精巣上体に加え精索(精巣を栄養する血管や精子の通り道である精管が含まれている束です)をまとめて摘出する、高位精巣摘除術といわれる手術が原則です。さらに、摘出した腫瘍の顕微鏡的な組織検査を進めるとともに、前述したような病期分類を目的とした各種画像検査も行います。

      A.病期分類に従った標準的治療

      臨床病期I期の場合、高位精巣摘除術の後、予防的放射線療法や後腹膜リンパ節郭清(精巣腫瘍が転移しやすいリンパ節を予防的に摘出する)や補助化学療法(抗がん剤を使います)を行う場合と、追加治療を行わず、経過を慎重に観察する場合のいずれかの治療方針が取られます。いずれの組織型でも臨床病期StageIに診断され高位精巣摘除術を受けた患者さんの予後は補助療法の有無にかかわらず、5年生存率が97〜100%で非常に良好です。 臨床病期U・V期に対しては抗がん剤による全身化学療法、外科療法(リンパ節郭清や転移腫瘍の切除など)、放射線療法を組み合わせた集学的治療を行います。

      B.治療の副作用など

        (1)外科療法

        高位精巣摘除術を行うと、片側の精巣がなくなりますが反対側の精巣から、性機能に充分な男性ホルモンが産生され残った精巣は軽度に肥大します。したがって、この手術では勃起障害は起きませんし、不妊になることもほとんどありません。 後腹膜リンパ節郭清術を行いますと、勃起あるいは射精感は保たれますが、90%以上の確率で射精は不可能になります。しかし、病巣のひろがり方によっては射精に関係する神経を残すような手術ができる場合もあります。

        (2)全身化学療法

        抗がん剤は血流にのって全身をまわりますので、腫瘍細胞とともに正常の細胞にも影響するため種々の副作用が出現します。一般的なものは、吐き気、嘔吐、白血球減少、血小板減少、全身倦怠感、脱毛、下痢、発熱、口内炎、ふらつき感、聴力低下、腎機能障害、肺線維症などです。 これらの副作用を軽減する薬剤が開発されてきてことと、副作用対策が改良されてきたことにより、以前に比べ患者さんの負担や危険は少なくなってはいますが、全くないというわけではありません

        (3)放射線療法

        一般的な放射線療法による副作用には、吐き気、全身倦怠感、食欲低下、下痢などがあります。
         
    治療後の経過観察は必要です。入院治療が終了した後も、外来で腫瘍マーカー、胸部レントゲン、腹部CT、腹部エコーなどを定期的に施行し、腫瘍の再発がないか厳重にチェックします。

治療成績


1.精巣腫瘍の治療成績

    当センターには毎年約15名の精巣腫瘍の新しい患者さんが来られています。現在までに治療させていただいた患者さんの数は238名と全国有数で、その豊富な経験をいかし、ひとりひとりの患者さんに対して常にベストの治療を提供できるものと考えています。
    ご参考までに当センターでの精巣腫瘍 臨床病期別5年生存率をお示しします。

      T期 97%    U期 90%    V期 85%


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