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京都大学・膵臓外科

膵内分泌腫瘍

 

このページの項目

  A.膵内分泌腫瘍とは

  B.疫学

  C.分類

  D.病態

  E.外科治療の重要性

 

A.膵内分泌腫瘍とは

 膵内分泌腫瘍という疾患は,膵臓および十二指腸の構成細胞を起源とする内分泌腫瘍をさします.膵十二指腸領域にはさまざまなホルモンを分泌する細胞があり,腫瘍化した場合には複数のホルモンを産生していることになりますが,通常,ひとつのホルモンが多量に産生され、それによる膵内分泌腫瘍特有の症状が顕性化します.分泌されるホルモンの種類によって分類され,良性腫瘍,悪性腫瘍両方があります.神経内分泌腫瘍は下垂体,副甲状腺,副腎など神経系と深い関連がある臓器から発生します.全体で神経内分泌腫瘍とよぶことがあります.また腸管膵内分泌腫瘍と呼ぶこともあります.

 産生されるホルモンが臨床症状を引きおこさないレベルであるか,産生しているが細胞内に貯蔵されて分泌されていない腫瘍を,非機能性膵内分泌腫瘍といいます.このような腫瘍の発生部位は膵臓内がもっとも多いが,膵以外にも十二指腸原発腫瘍,リンパ節原発腫瘍,腸間膜原発腫瘍の報告があります.

 産生しているホルモンによって次のように命名されます.

  インスリン(インシュリン)   インスリノーマ(インシュリノーマ)

  ガストリン            ガストリノーマ

  グルカゴン            グルカゴノーマ

  ソマトスタチン          ソマトスタチノーマ

  VIP                VIPoma

  PP                 PPoma

 

B.膵内分泌腫瘍の疫学

  膵内分泌腫瘍は膵腫瘍全体の2%前後で,人口10万人あたり1人以下の発生率です.日本での切除例では,機能性膵内分泌腫瘍は多い方からインスリノーマ,ガストリノマ,グルカゴノーマ,ソマトスタチノーマ, VIP産生腫瘍(VIPoma)の順です.非機能性膵内分泌腫瘍は,膵内分泌腫瘍の15%から40%を占めます.日本の悪性膵内分泌腫瘍手術例132例の術後5年生存率は76%と比較的良好ですが,手術時における遠隔転移の存在が予後因子になります.

C.膵内分泌腫瘍の分類

  血液中にホルモンを過剰に分泌する機能性腫瘍と、ほとんどホルモンを分泌しない非機能性腫瘍とに分けます.ホルモンを過剰に分泌する場合は,そのホルモン独自の症状が出現するので症候性膵内分泌腫瘍と呼び,症状の出現しない非機能性腫瘍のことを無症候性膵内分泌腫瘍ということがあります.

  症候性腫瘍の場合,症状の原因となっているホルモンの名称をとって,インスリノーマ,ガストリノマ,グルカゴノーマ,ソマトスタチノーマ, VIP産生腫瘍(VIPoma),PP産生腫瘍(PPoma)と分類します.

D.膵内分泌腫瘍の病態

  多発性内分泌腺腫症I型(MEN-I型)に伴う膵内分泌腫瘍は,MEN-I遺伝子異常が原因であることが知られています.MEN-I型は下垂体腫瘍,上皮小体過形成,膵内分泌腫瘍を特徴として発症する常染色体優性遺伝の家族性疾患であり,MEN-I遺伝子の異常を伴う.MEN-I遺伝子は11番染色体長腕にあり,10個のエクソンを含み610個のアミノ酸からなる蛋白メニンをコードする癌抑制遺伝子です.MEN-I遺伝子異常がある場合,MEN-I型の浸透率は10歳以下では10%以下,20歳で52%40歳までには98%に達します.MEN-I型に合併する機能性内分泌腫瘍の多くは十二指腸ガストリノーマです.MEN-I型のインスリノーマは膵臓に好発します.

E.外科治療の重要性

  膵内分泌腫瘍は悪性度の高い腫瘍で,また病理組織学的診断のみでは良悪性の判定は完全ではありません.このうちでインスリノーマだけが悪性の頻度が10%前後ですが,それ以外の腫瘍の悪性頻度は5080%と高率です.ガストリノーマは,50%が病理組織学的に悪性(癌)と診断されますが,良性と診断された例も経過中に転移再発することが多く,全例を悪性腫瘍と考えておく必要があります.非機能性腫瘍は5090%が悪性腫瘍(癌)です.したがって治療は臨床症状が軽減するだけでは不十分で,根治的腫瘍切除術が必要になります.

  膵内分泌腫瘍は,肝転移リンパ節転移をきたす一方,遠隔転移,腹膜播種,骨転移はまれです.また根治術が不可能であっても遺残病巣に対する薬物療法が期待できます.したがって,進行した病期であっても,症状緩和と生命予後延長を目指した切除手術は患者さんにとって利益があります.

 

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