地方独立行政法人大阪府立病院機構
大阪府立成人病センター
地方独立行政法人大阪府立病院機構ロゴ

ホーム >> 各部門のご案内と治療実績 >> 治療実績 >> 膵臓がん
膵臓がん
  1. 1.膵臓について
    1. A.膵臓の場所と働き
    2. B.他の癌との比較
    3. C.膵癌は増えているのか
  2. 2.膵癌疑いといわれた方へ
    1. A.膵癌が疑われる契機
    2. B.膵癌の症状
    3. C.膵がんの検査方法
    4. D.組織検査
  3. 3.膵癌の広がり(病期)と治療
    1. A.手術療法
    2. B.化学療法・放射線療法
    3. C.症状緩和のための治療
  4. 4.膵癌の治療法選択
  5. 5.参考資料
    1. A.膵癌の症状
    2. B.大阪府立成人病センター外科の膵癌治療成績
  6. 6.膵癌早期診断のための試み:膵定期検査
1.膵臓について
    A 膵臓の場所と働き
    膵臓は胃の後ろの後腹膜腔内にあるピストル形をした実質臓器で横走しています。右側端は十二指腸によって囲まれ、左端は脾と接し、右から左にかけて頭部、体部、尾部分けられています。膵臓の中には膵管が走っており、その中を膵臓でつくられた膵液が十二指腸へ向かって流れており、十二指腸乳頭部より十二指腸へ排出されます。膵管の狭窄など、何らかの原因で膵液が鬱滞すると、膵液が周囲に漏れて急性膵炎になることや、膵臓が線維化を起こし機能低下を起こすことがあります。
    膵臓はいわゆる腺組織です。アミラーゼやリパーゼのような消化酵素を作って膵管径由で消化管へ分泌するという外分泌腺としての働きと、インスリン、グルカゴンなどのホルモンをつくり、血中に分泌するという内分泌腺としての働きがあります。特に、インスリンは血糖を下げる重要なホルモンであり、この働きが量的あるいは機能的に不足すると糖尿病になります。
    B 他の癌との比較
    膵癌は他の癌と異なる点がいくつかあります。症状に乏しいこと、診断が非常に難しく、進行癌で見つかることが多いこと、手術は大きな侵襲を伴う大手術となること、などがあげられます。
    C 膵癌は増えているのか
    全国統計では2000年に295484人が癌が原因で死亡され、膵臓癌はその中の6.5%(19094人)を占め、肺癌、胃癌、大腸癌、肝臓癌についで癌死因の第5位でした。発生数は非常に緩やかに増加しているようです。大阪府では1997年の時点で人口10万人あたり男性では14.8人、女性では11.8人が膵臓癌に罹患しています。発生数はこの10年間は大きな変化はないようです。
2.膵癌疑いといわれた方へ
    A 膵癌が疑われる契機
    膵頭部に癌が発生すると容易に黄疸を発症します。それは膵頭部の中を、胆管(肝臓でつくられた胆汁を消化管に排出する管)が通っており、これが癌によって閉塞するからです。その他に、膵管閉塞による腹痛(尾側膵管拡張、膵炎による)も膵癌発見の契機となっています。初めて糖尿病と診断されたときや、糖尿病が悪化したときも要注意です。また、まったく症状がない状態でも、偶然に、腫瘍マーカーや膵酵素値の上昇、画像検査での膵臓の腫大、腫瘤で膵癌が見つかることがあります。
    B 膵癌の症状
    比較的早期の段階では、無症状であったり、上腹部の不定愁訴のみを訴える患者さんが多いのですが、進行していくにしたがって、黄疸や背部痛など様々な症状が出現します。(参考資料@)
    C 膵癌の検査方法
    膵癌の診断では画像検査で、腹部エコー、CT、MRI、血管造影、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)で膵腫瘤像、膵管・胆管の狭窄・拡張を検出します。血液検査では、血糖値、肝機能、胆管系酵素値、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9など)を測定します。外科的治療の可否や放射線療法、化学療法などの治療法の決定にはこれらの情報が必要です。
    D 組織検査
    画像検査、血液検査だけでは確定診断できないこともあります。そのときには、実際に癌細胞の有無を調べることが診断決定に有用です。胃カメラを十二指腸まで入れて行うERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)の際に、膵液や胆汁を採取しその細胞をみること(細胞診)で診断でき、これによって早期の癌も診断されています。さらに必要なときは、直接針で癌組織を穿刺したり、膵管の狭窄部を鉗子で採取して病理学的にみること(組織診)で診断します。
3.膵癌の広がり(病期)と治療法
    膵癌の進行度は、腫瘍の大きさ・周囲臓器や脈管への広がり・リンパ節転移・遠隔転移などにより規定されていて、早期癌から進行癌までを順に、ステージT、U、V、Wa、Wbに分類されています。このステージは実際の治療成績や予後と良く相関しています。癌が膵臓内にとどまるTa、リンパ節転移が膵臓の近くにとどまっているステージU、Vの段階では、治療の成績は比較的良好です。ステージVでは、周辺組織も念のため切除し、癌を取り残さないような慎重な手術が必要とされます。その為には術中の迅速組織・細胞診は不可欠です。周囲臓器や脈管へ軽度広がっているという状態であるステージWaの症例に対しては、外科的切除のみならず化学療法や放射線療法を組み合わせた集学的治療が必要です(参考資料A)。しかし、膵臓から遠く離れたところまで転移しているステージWbの症例では、すでに局所治療としての外科治療の適応ではなく、抗癌剤による化学療法や放射線療法を中心とした内科的治療の適応です。
      A 手術療法
      一般的に、膵頭部に癌が存在すると、膵頭部だけでなく、十二指腸、空腸の一部、胃の一部、胆管を周囲のリンパ節とともに切除する術式、膵頭十二指腸切除術が行われます。膵尾部に存在すると、膵体尾部・脾切除術となります。膵の広範囲に癌が存在すると、膵臓の全摘術が必要となることもあります。膵癌は、リンパ節のみならず、容易に周囲の結合組織や血管周囲の神経に沿って浸潤する特徴を持っているため、これらの浸潤部を残さないようにしなければ、局所再発は防げません。従って、当院では後腹膜の結合組織を含む徹底的な郭清を行い、術中に細胞診や組織診を駆使して、癌が残らないようにつとめています。
      当センターでは、膵癌の切除例において、肝転移予防対策として、肝動脈と門脈の両ルートから抗癌剤を持続投与する方法(2-channel化学療法)を開発しました。この方法によって、進行癌術後の肝転移は有意に減少し、生存率も向上しました。切除できる患者さんでも血管への浸潤などが予想される患者さんでは、局所再発予防対策として、後腹膜拡大郭清に加え、化学・放射線療法を併用して、切除成績のさらなる向上を目指しています。
      しかし、非浸潤性の膵癌や、低悪性度の腫瘍などでは、リンパ節郭清を縮小し、負担の軽減をはかっています。無症状でも検診などで膵管の拡張などを指摘されることがあります。各画像検査では不明であるが、精査のERCPで採取した膵液細胞診で膵癌と診断されることが時にあります。このような場合、盲目的な膵全摘が行われていましたが、当センターでは、術中に膵臓の3部位から別々に膵液を採取し、その術中細胞診により必要な部位のみを切除する、という膵3分割細胞診法を開発しました。このような早期の段階で切除した微少膵癌は全例治癒し、かつ、インスリン治療が新たに必要となることは滅多にありません。
      B 化学療法・放射線療法
      局所進展や遠隔転移により見つかった膵癌の多くは手術適応にはなりません。その場合、化学療法や放射線療法などの適応となります。
      @ 局所療法として、支配動脈から抗癌剤を投与するいわゆる動注療法を行っています。開腹時に切除不能であれば、術中に動脈内へカテーテルを留置して、術後にそこから抗癌剤の投与を頻繁に行います。また、近年の医療技術の進歩により、開腹しなくても動脈内カテーテルの留置が可能です。非手術例においても局所制御、肝転移制御の効果が期待されています。
      A 放射線療法は単独あるいは他の治療に併用して行われています。抗癌剤と併用する方が有効とされています。近年は、新しい照射方法(原体照射)により、照射部位を限定して照射できるようになってきました。消化管などへの負担が少ないため、外来でも施行可能で、症例も増加してきています。
      B 外来化学療法について
      抗癌剤治療は膵癌の治療で重要な位置を占めます。当センターは、患者さんのQOLを保ち、日常・社会生活を中断することなく化学療法を継続して頂く事を目的として、外来化学療法を積極的に取り入れ、多くの患者さんに効率よく施行できるシステムを構築しました。膵癌治療においては、携帯微量注入ポンプを用いた5-FUの持続投与・週1回のジェムザール点滴静注・皮下埋め込み式リザーバーからの動脈内投与など様々な形でそのシステムを利用しています。
4.大阪府立成人病センターにおける膵癌の治療法選択
      ■早期癌の場合
      切除(+リンパ節郭清)
      ■局所進行癌の場合
      切除+後腹膜拡大リンパ節郭清+2-channel化学療法
      (+手術前後の化学放射線療法)
      ■転移した癌の場合
      全身化学療法・放射線療法・動注化学療法などの組み合わせ
5.参考資料
    A.膵癌の症状
    無症状であったり、上腹部の不定愁訴のみを訴える患者さんが多いのですが、進行していくと、様々な症状が出現します。以下に主な症状とその原因を示します。
    ・胆道の閉塞や胆道の炎症によるもの:黄疸、かゆみ、濃縮尿、発熱、右季肋部痛
    ・膵管の狭窄や膵炎によるもの:腹痛、背部痛
    ・膵の機能低下によるもの:糖尿病の発症・急性増悪、下痢
    ・消化管浸潤によるもの:食欲不振、嘔吐、体重減少、消化管出血
    ・腫瘍そのものによるもの:腫瘤触知、背部痛、腹部膨満
    ・腹膜転移によるもの:腹部膨満、腹水、腸閉塞
    その他、リンパ節転移、遠隔転移による症状が起こり得ます。
    B.大阪府立成人病センター外科の膵癌治療成績
    ステージ別に根治術後の5年生存率をみると、以下のようになっています。
      大阪府立成人病センター 膵癌全国登録調査報告(1999)
    ステージT 90%(再発はありません) 61.0%
    ステージU 90%(再発はありません) 35.6%
    ステージV 50%(2-channel化学療法施行例) 18.1%
    ステージWa 18%(2-channel化学療法施行例) 12.5%


6.膵癌早期診断のための試み:膵定期検査
    はじめに
    膵臓癌は難治がん中の難治がんと言われています。見つかった時にはもう腫瘍が拡がっていて手術ができなかったと言う話も珍しくありません。日本膵臓学会による全国の有数施設からの報告の集計でも通常型膵癌の5年生存率は9.5%、つまり膵癌にかかって5年以上生存されているのは10人に一人位しかおられないということです。しかし、切除手術を受けられた方で、がんが小さくしかも膵臓の外には全く拡がっていなかった患者さんに限ると10人のうち6人までが5年後にも生存しておられることが判っています。膵臓がんもごく早期に診断すれば救かるのです。しかし、このような早期に発見されるのは稀で100例に1例くらいです。私たち検診部消化器検診科では膵癌を“偶々”ではなく“必ず”早期に診断できるようなシステムを作ることを目標として定期検査を始めました。

    膵癌はどうして早期診断が難しいのでしょうか?
    膵臓は胃の続きの十二指腸にくっついていて、胃の後ろ側にのびている細長い臓器です。糖尿病に関係するインシュリンというホルモンを作っていることはご存知の方も多いかと思いますが、食物を消化するための膵液と呼ばれる消化液を作るのも重要な働きです。膵臓で作られた膵液は主膵管という太さ1 mm位の細い管を通って十二指腸へと流れていきます。膵臓の厚みはせいぜい2 cm位しかありませんので1 cm程度の小さな癌でも既に膵臓の外まで及んでいることもあります。しかも、胃や腸のように内視鏡を挿入して簡単に組織を採取して調べるわけにもまいりません。膵臓がこのように厚みの薄い臓器で、お腹の深い所にあり、すぐ近くに重要な血管や神経などが通っていることが膵がんの早期診断や治療を難しくしている大きな理由です。

    小さな膵がんはどんな検査で見つかるのでしょうか?
    前述の全国集計によりますと殆どの膵癌はX線CTか超音波エコーで最初に発見されています。特に切除手術ができた膵癌については超音波検査で見つかった症例がもっとも多いようです。超音波検査なら患者さんに害や苦痛がないので多くの方に安心して受けていただけます。
    それでは全ての方に超音波検査を受けていただくと膵癌はどんどん早期に発見されるようになるのでしょうか?超音波検診といって、住民検診に毎年腹部超音波検査を組み込んで行なっている地域があります。その成績によりますと、発見される膵癌は比較的早期の癌が多いのですが、検診では“異常なし“だったのに半年以内に膵癌が見つかることも少なくないようです。また、膵癌が発見される頻度は非常に低く約25,000回の検査で一例ということです。超音波検診では膵癌のみでなく肝癌、胆嚢癌、腎癌などが多数発見されているので検診自体は役に立っているのですが、目標を膵癌のみに特定して考えると有効性は低いといわざるを得ません。
    このように超音波検査による膵癌の診断成績が十分でない理由として、膵臓の前方にある胃の中のガスのため音波が通りにくくなり、膵臓の尾部の観察が難しいことが指摘されます。お茶などを飲んでもらって胃の中を液体で充たして観察すると音波がよく通り膵臓がよく見えるようになります。このように、小さな膵癌を見逃さないためには超音波検査も十分に時間をかけ慎重に観察する必要があり、多数の住民の方を短時間に検査する方式では限界があります。従って、膵癌に罹りやすい危険性のある方を選び、そのような方に詳しい超音波検査を受けていただくのがもっとも近道であろうと考えられます。

    膵癌にかかる危険性の高い人とはどんな人でしょうか?
    肝臓癌の場合にはB型やC型のウイルス性肝炎、肝硬変が高危険群ということが判っていますが膵癌については危険因子が何かまだよく判っていません。私共では膵がんになられた患者さんの検査データをさかのぼって検討し、膵がんになるよりも前に何か前兆がなかっただろうかと調べました。すると、膵癌と診断されるより数年も前から、主膵管が少し太かった方が65%以上とかなり多いことがわかりました。主膵管が太くなる理由はまだよく判っていませんが、膵液中の粘液が増加し、粘いので膵管内に溜りがちになるのではないか?とか、膵管の壁の部分の上皮細胞が増殖していて管の内腔が滑らかでないから通過が妨げられがちで太くなるのではないかなどの理由が推測されます。とにかく、このように主膵管の太い人は一般の人よりも膵がんのリスクが高いことが推測されます。それで、主膵管の少し太い人に注目をして超音波と血液の腫瘍マーカー検査とを定期的に受けていただくことにしました。既に膵管がかなり太い人や経過観察中に次第に太くなってきた人には内視鏡を十二指腸まで飲んでいただき膵管のX線撮影をすると共に膵液を採取して、膵液中のがん細胞の有無を調べます。このような定期検診システムにより、数mmあるいは顕微鏡レベルの大きさの膵がんを診断しようという試みです。

    大阪府立成人病センターにおける膵定期検査のシステムとその成績
    超音波検査にて膵管拡張や膵のう胞など、膵に軽度の異常所見を認める人を対象に定期的(3ないし6カ月毎)に膵精密超音波検査および腫瘍マーカーなどの血液検査を行い、異常所見の変動を速やかに捉えて精密検査を指示するというのが本システムの基本です。平成10年5月より膵検診を開始し、現在約700人の方が参加しておられます。経過観察中に超音波検査で新たな異常を指摘され精密検査を行い膵癌と診断、手術を受けられた方が既に数名おられます。
    がん検診の基本は、そのがんに罹りやすいリスクを持った方達に、身体には害がなく、しかも信頼性の高い検査を定期的に受けていただくことです。そして、がんを早期に診断し、治療後、元気に社会復帰して長生きしていただくのが目的です。消化器検診科では受診者の検査成績の検討および追跡調査を随時行い膵癌を必ず早期に診断できるようなよりよいシステムを構築していくため努力しています。
    それでは、どのような症状の方が膵臓の検査を受ければよいのでしょうか?
    早期の膵がんでは特有の症状は殆どありません。人間ドックで膵臓が少しおかしいと言われた方は、慎重に経過を見る必要があるでしょう。また、食後に胃がもたれる方、食べ過ぎ飲みすぎで軟便や下痢になりやすい方、急に糖尿病を発症した方、毎日アルコールを飲んでおられる方などは膵臓にも注意を払って検査を受けていただくとよいでしょう。ご心配な方は取りあえず内科初診を受診して下さい。


[ページトップ]へ