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膵がん/目次
1.膵がんとは
2.症状
3.診断
4.膵がんの検査
5.病期(ステージ)
6.治療法
7.各種治療法の特徴
8.膵がんの診断と治療の流れ
9.治療成績
10.その他
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1.膵がんとは

 膵臓は淡黄色の細長い臓器で、長さ15cm、幅3〜5cm、厚さ2cm、重さ60g〜70g程度です。膵臓は胃のちょうど裏側で、上方は肝臓、下方は横行結腸、後方は大血管と左腎、右方は十二指腸、左方は脾臓に囲まれています。膵臓の主な働きは、腺房細胞で産生され膵管に集められ十二指腸に分泌されて食べ物の消化吸収に作用する消化酵素を産生する働き(外分泌作用)と主として血糖調節に働くインスリンやグルカゴンなどのホルモンを産生する働き(内分泌作用)に分けられます。膵臓を構成する細胞には、消化酵素を産生する膵の腺房細胞、ホルモンを産生するランゲルハンス島細胞、産生された消化酵素を膵の各所から集めて十二指腸へ運ぶ管を構成する膵管上皮細胞があります。これらの各々の細胞からがんが発生するわけですが、通常膵がんと呼ばれるものは膵管上皮から発生します。その割合は80〜90%を占め、残りは腺房細胞がん、島細胞腫瘍・がんなどです。
 膵がんの発生頻度は近年、世界的にみても増加の傾向にあり、本邦では30年間に10〜15倍に増えています。1990年の統計では年間約13000人が死亡し、同年の全がん死亡の6%を占めました。膵がん死亡の増加の原因は人口構成が高齢化したことが最も大きい要因ですが、膵がんに対する有効なスクリーニング検査法がなく、高危険群(ハイリスクグループ)の設定が難しいことなどです。また、手術以外に有効な治療法がないことも原因の一つです。
 膵がんは疫学調査からは、1)男性に多い、2)環境因子が重要、3)60歳以上で急増する、4)遺伝的な要素は少ない、5)特定の職業、食事、嗜好品(タバコなど)などが危険因子としてあげられている、などの特徴が指摘されています。その他にいろいろ議論はありますが、慢性膵炎・膵石症、糖尿病、急性膵炎の既往のある方は膵がんの高危険群と考えて、定期的な検査を受けられたほうがよいと思われます。また、膵がんは一部には確実に治るがん(粘液産生膵がんと呼ばれています)もありますが、その多くは進行が早く、すごく“たち”の悪いがんと言えます。したがって症状が表れた時には手遅れになっていることが多い病気です。人間ドックや検診の血液検査でアミラーゼが高い、超音波検査で主膵管が太い、嚢胞(水のつまった袋)がある、などといわれたら信頼できる施設で精密検査を受けましょう。
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2.症状

 自覚症状は初期には無症状か上腹部不定愁訴、すなわち何となくお腹がおかしいと感じることが多いようです。進行しますと上腹部痛、背部痛、黄疸、お腹にしこりを触る、末期になれば吐血、下血、腹水などが現れます。
 がんの発生部位により症状は変わります。膵がんの65%と最も多くを占める膵頭部がんでは主膵管やすぐ近くに走行する胆管が狭窄や閉塞する症状が発現します。主膵管が閉塞すると膵液がうっ滞し尾側の二次性膵炎が起こり心窩部痛、左上腹部痛や左背部痛などの症状や血中膵酵素(アミラーゼやエラスターゼ)の上昇がみられます。これは膵がんの比較的早期にみられ、この時点で発見、治療を受けますとがんが治る可能性もありますが、多くは症状も一過性であることから病院を訪れる患者さんは残念ながら少ないのです。病気が進行すると持続的な腹痛や頑固な背部痛が出現しますが、血中膵酵素はむしろ低下します。主膵管の閉塞は膵外分泌能を低下させ脂肪の消化吸収を障害し下痢、腹痛、体重減少などが生じます。また、内分泌能も障害されると口渇、多飲、多尿などの糖尿病症状があらわれます。がんが膵臓の外にでると近傍の胆管を閉塞させ黄疸が生じ、眼が黄色くなったり、尿がチョコレート色に濃染します。肝機能も血中ビリルビン、ALP、r-GTP、GOTやGPTが上昇します。病巣が進展し十二指腸を狭窄させると食物のうっ滞、食欲不振、悪心、嘔吐、消化管出血などの症状が現れます。膵体部がんあるいは膵尾部がんでは解剖学的位置関係から主膵管が閉塞しても膵炎を起こす範囲が少ないこと、胆管から離れていることなどから症状がでるまでに時間がかかります。がんが進行しお腹の中に拡がると腹水が貯まったり、がんが背中側に拡がると神経を圧迫し持続的な背部痛が生じ、食欲不振が続いて5〜10kgの体重減少などがおこります。膵尾部がんでは血液検査の異常でみつかることは少なく、また超音波検査でも見づらい場所ですので発見が遅れることが多いようです。
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3.診断

 血液検査ではアミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼなどの膵酵素、ビリルビン、アルカリホスファターゼ、r−GTPなどの肝機能、CEA、CA19-9、DUPAN 2などの腫瘍マーカーなどの異常がみられることがあります。しかし、早期の膵がんでは全く血液検査では異常が現れないことも少なくありません。膵がんを発見する方法としては、腹部超音波検査(US)、腹部CT検査、超音波内視鏡検査(EUS)、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)、血管造影などが行われます。腹部US(エコー)検査はよく魚群探知機やレーダーに例えられますが、お腹に油を塗り器械を当ててお腹の中を観察する検査法です。この検査は手軽で非浸襲的(痛くも痒くもない)、しかも膵臓の異常を詳細に観察できる(太った人ではあまり良く見えません)ので、腫瘍そのものを発見したり、腫瘍によって生じる主膵管や胆管の拡張などが描出でき、膵がんの発見のきっかけになることが多いのです。腹部CTはレントゲン的に身体を輪切りにする検査法で、腹部USと同様に腫瘍自体、主膵管や胆管の拡張などが描出できます。これらの検査で異常が発見されたら次にはEUSやERCPが行われます。EUSはカメラ(内視鏡)の先端にエコーを付けた器械ですから検査の際には内視鏡を飲むという苦痛(侵襲的)が少しありますが、他の検査では発見が困難な2cm以下の小さな膵がんまで発見できる利点があり、その早期発見には欠くことのできない検査法の一つです。ERCPも内視鏡を十二指腸内に入れ胆管や膵管を描出する検査法ですが、膵がんを確実に診断することができます。
 血管造影では膵がんを手術できるか否かを判断します。
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4.膵がんの検査
膵がんの診断法
膵がんの検査 膵臓はからだの深部にあるため症状がでにくく診断や治療が難しい
超音波検査(エコー検査)
もっとも侵襲が少なく,時にCTでは指摘できないような小さな病変を指摘できるが,腹部ガスや脂肪により描出が不良になることがあります.
超音波内視鏡下穿刺吸引組織診(EUS-FNAB)
超音波内視鏡の画像をみながら細い針 で腫瘍を穿刺し組織を採取します.当科では組織で証拠を得てから抗がん剤を患者さんに投与することを原則としています.今後薬剤注入や遺伝子治療,免疫療法などへの応用が期待されています.
CT検査
最近CT機器の進歩がめざましく,かなり小さな病変が発見できるようになり,膵がんの診断には不可欠な検査法です.
内視鏡的逆行性胆膵管造影(ERCP)
膵がんの90%以上は膵管から発生するため内視鏡を使って膵管を造影することにより膵がんの診断が可能です.また膵管のなかに細い鉗子やブラシを挿入して組織を採取したり膵液の採取が可能です.
超音波内視鏡(EUS)
内視鏡の先端に超音波のプローブがついいて膵臓に近い位置(胃や十二指腸)から観察ができ腫瘤の有無や周りの臓器との関係を正確に把握できる.
MRCP
磁力利用して膵管,胆管描出できる.非侵襲的で最近ERCPに匹敵する画像が得られるようになってきました.
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5.病期(ステージ)

 膵がんの進行度(ステージ)は大きさ、前方、後方、門脈、大きな動脈、十二指腸、胆管などへの浸潤により規定され、日本膵臓学会では4段階(StageI〜IV)に分けています。一般的にはStageI〜IIIでは切除可能、StageIVは切除不能です。1994年度の膵がん全国登録調査報告では、手術にて切除された症例は44%にすぎず、姑息手術が28%で、その他は病巣が切除できないか、はじめから手術が不能な例です。手術された中ではStageI が5%、 Stage IIが6%, StageIIIが14%、 Stage IVおよび不明が75%でした。
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6.治療法

 膵がんの治療には、外科治療、化学療法、放射線治療、対症療法があります。膵がんの治療は手術が原則です。しかし、手術不能の場合には抗がん剤による化学療法、原発巣に対する放射線治療、化学療法と放射線治療の併用療法、膵がんに対しては直接治療を行わず黄疸や疼痛などの症状を和らげる対症療法が選択されます。
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7.各種治療法の特徴

 外科治療はがんを完全に切除する手術を根治手術といいます。残念ながらがんはそのままにして食べ物や胆汁の通過する道を確保するだけの手術も行われ、これを姑息手術といいます。根治手術には、膵頭部がんに対しては膵頭部、胃の一部、総胆管、胆嚢、十二指腸、空腸の一部を切除する膵頭十二指腸手術、胃を残す以外は同様に切除する幽門輪温存膵頭十二指腸切除、膵体部あるいは膵尾部に対しては膵尾側切除、がんが膵臓全体に拡がっている場合には膵全摘術が行われます。姑息手術には食事の通過の道を確保する胃空腸吻合術、胆汁の道を確保し黄疸の発生を防ぐ胆管空腸吻合術などがあります。
 化学療法はがんが拡がって手術不能な例で、活動状況(Performance Statusといいます)が1以上(症状はあるものの歩行や軽作業はできる)のものが適応になります。2001年からゲムシタビンが使用可能となり、有効性が期待されています。
 放射線療法には体外から照射する外部照射と手術時に行う術中(開創)照射の2つの方法があります。体外照射はがんの進展が疑われる部位も含めて広い範囲に照射することが可能です。術中照射は周囲の健常組織を避け膵がんに大量に照射することが可能です。放射線療法は生存期間の延長にはつながらないものの除痛効果に優れているとする報告があります。
 対症療法としては、黄疸を改善する目的で狭窄部の胆管にチューブを挿入する方法があります。内視鏡(カメラ)で十二指腸から挿入する方法と皮膚から肝臓を通して肝内の胆管にチューブを挿入する方法があり、各々に長所と欠点があります。チューブにもプラスチックと金属製のものがあり、患者さんによって使い分けをします。疼痛に対しては、初期には非ステロイド系消炎鎮痛剤が、疼痛が増強すれば経口ではMSコンチンが、注射ではモルヒネが使用されます。その他に腹腔神経をアルコールでブロックする方法も行われます。
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8.膵がんの診断と治療の流れ
膵がんの診断と治療の流れ
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9.治療成績

 1994年度の膵がん全国登録調査報告では膵がんの切除率は全症例の44%、切除例の5年生存率は18%と報告されています。腫瘍径別の5年生存率は2cm以下で41%、2〜4cmで14%、4〜6cmで20%、6cm以上で11%であり、小さな膵がんでは手術した後の予後は比較的良好です。化学療法および放射線療法は奏功率20〜30%と決して良好とはいえませんが、生活の質(Quality of Life:QOLといいます)の改善には役立つことも多いようです。化学療法と放射線療法の併用で1年以上生存する患者さんも時々報告されています。
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10.その他

 当科は消化器がんで高度の診断・治療技術を備えており、暖かい看護とともにがん治療の専門としての自信を持って診療に当たっています。また将来的には、現在でも治療法の確立していない膵がんの遺伝子治療など難治がん治療のセンターを目指しています。膵がんに関しては、超音波検査、超音波内視鏡、ERCP、膵・胆道鏡などを有機的に活用して早期診断に努め、粘液産生膵がんなど予後の良いがんの発見数も全国有数です。進行膵がんに対しては局所進行例では放射線化学療法,遠隔転移例では化学療法を行い、治験にも積極的に取り組んでいます。膵がんに関する診療は月曜日(山雄、伯耆)、火曜日(山雄、水野)、水曜日(山雄、石川、伯耆)、木曜日(石川)、金曜日(水野、高木)がそれぞれ専門のものが診察にあたっています。
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