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腎細胞がんの基礎知識/目次
 1 腎細胞がんとは
 2 症状
 3 診断
 4 病期(がんの進行状況)
 5 治療
 6 治療成績と予後

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1.腎細胞がんとは

 腎臓は、みぞおちの高さの背中側に背骨をはさんで左右一対ある臓器で、ソラマメのような形をした長さ10 cm、幅5cm、厚さ3cm程度の大きさの臓器です。主な働きは、血液をろ過して尿を作り、体の水分量の調節や不要な物質の排泄をすることで、他に、血圧のコントロールや赤血球を作ることに関するホルモンの産生なども行っています。
 腎臓には、液体のたまった腫瘤(嚢胞状腫瘤)と細胞の詰まった腫瘤(充実性腫瘤)が発生します。腎臓の嚢胞状腫瘤は超音波(エコー)検査でよく発見され、腎臓では最も多くみられる腫瘤ですが、その大部分は腎嚢胞と呼ばれる良性の腫瘤で、特殊な例を除けばがんとは特に関係ありません。腎臓の充実性腫瘤には、腎細胞がんや小児に発生するウイルムス腫瘍、稀にみられる腎肉腫などの悪性腫瘍と、腎血管筋脂肪腫、オンコサイトーマなどの良性腫瘍があります。腎臓の充実性腫瘤の中で最も多くみられるのが腎細胞がん(いわゆる腎がん)で、以下では、この腎細胞がんについて詳しく述べます。
 腎細胞がんは、人口10万人に2-3人程度に発生し日本でも増加傾向にあり、男性は女性の2-3倍多く発生します。がんの中では非常にゆっくりと大きくなるタイプが多いのですが、急速な悪化を示すタイプもみられます。静脈の中に腫瘍が広がる(腫瘍塞栓)傾向がつよく、他の臓器への転移を生じ易いがんです。転移は肺、骨、肝臓、脳、リンパ節に多くみられます。化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療が効きにくいのも特徴の1つで、インターフェロン、インターロイキン2などを用いた免疫治療がよく行なわれています。
 最近、遺伝子の研究が進み、腎細胞がんの発生に関ると思われる遺伝子が明らかにされつつあり、また遺伝子治療の一つのターゲットとしても注目されています。

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2.症状

 以前は、目に見える血尿や側腹部の腫れ、側腹部の痛みなどの局所の症状や、原因のはっきりしない発熱、体重減少などの全身症状を契機として発見されることが多くみられました。しかし最近は、超音波検査やCT検査などが普及したことにより、健康診断や他の病気で検査を受けた際に偶然発見される、症状のない小さな(例えば直径3cm以下の)腎細胞がんが増加しています。

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3.診断

 超音波(エコー)検査;放射線被爆がなく簡単に受けられ、腎腫瘍の発見には有用な検査です。がんかどうかの質的診断には困難な場合もありますが、腎嚢胞や腎血管筋脂肪腫などの良性疾患の鑑別にも威力を発揮します。
 CT検査;腎臓に腫瘤が疑われる場合、最も診断力のある検査です。画像診断で腎がんであるとの診断が可能なだけでなく、リンパ節転移の有無や静脈内の腫瘍塞栓の有無などが診断できます。
 胸部X線検査;腎細胞がんの転移の中で最も多い肺転移の有無を検索します。はっきりしない場合には肺CT検査で精密検査を行います。
 骨シンチグラフィー;骨転移の有無をみるために施行されます。転移のみでなく、骨折や変形性脊椎症などの良性疾患でも異常を示す検査ですので注意が必要です。
 腎血管造影検査;以前は診断のためによく施行されていましたが、近年CT検査の性能の向上により、診断だけのために施行される機会は少なくなってきています。

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4.病期(がんの進行状況)

 腎細胞がんの病期は、日本の腎がん取扱い規約(第3版)によれば、1) T;局所でのがんの進展段階、2) N;近くのリンパ節への転移の有無と程度、3) M;他の臓器への転移の有無の3つの観点を総合して、4)病期を4段階に分類しています。

1)T-原発腫瘍
 T1:最大径が 7 cm以下で腎に限局する腫瘍
     T1a 最大径が4 cm以下で、腎に限局する腫瘍
     T1b 最大径が4 cmを超えるが7 cm以下で、腎に限局する腫瘍
 T2:最大径が 7 cmをこえ、腎に限局する腫瘍
 T3:腫瘍は主静脈内に進展、または副腎に浸潤、または腎周囲組織に浸潤するがGerota筋膜(*)をこえない
 T4:腫瘍はGerota筋膜(*)をこえて浸潤する

(*)Gerota筋膜とは腎臓・副腎とその周囲脂肪をあわせて包む腎臓周囲の膜です。

2)N-所属リンパ節転移
 N0:所属リンパ節転移なし
 N1:1個の所属リンパ節転移
 N2:2個以上の所属リンパ節転移

3)M-遠隔転移
 M0:遠隔転移なし
 M1:遠隔転移あり

4)病期分類
 I期:腫瘍の大きさは 7 cm以下で腎臓に限局し、リンパ節転移や他臓器への転移を認めない(T1、N0、M0)
 II期:腫瘍の大きさは 7 cmをこえるが腎臓に限局し、リンパ節転移や他臓器への転移を認めない(T2、N0、M0)。
 III期:腫瘍は腎臓に限局し、他臓器への転移を認めないが、所属リンパ節を1個認める(T1-2、N1、M0)
 腫瘍は主静脈内に進展、または副腎・腎周囲組織に浸潤するがGerota筋膜をこえず、リンパ節転移は認めないか所属リンパ節転移1個で、他臓器への転移を認めない(T3、N0-1、M0)
 IV期:腫瘍がGerota筋膜をこえて浸潤する(T4、Nに関係なく、M0)2個以上の所属リンパ節転移があるか(Tに関係なく、N2、M0)他臓器への転移がある(Tに関係なく、Nに関係なく、M1)
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5.治療

1)手術
 転移のない腎細胞がんの治療法の第一選択が手術です。手術により腫瘍が摘出できる場合は治癒も期待できます。腎細胞がんに対する手術法としては、副腎や周囲の脂肪組織も含めてGerota筋膜ごと腎を摘出する方法(根治的腎摘除術)が一般的です。腎臓は左右に2つあり、手術後に残る反対側の腎臓が正常であれば腎不全に陥ることはなく、ほとんど生活の制限も受けません。最近、小さな腎がんや多発性の腎がん、反対側の腎臓の働きが悪い腎がんに対しては、悪い方の腎臓の正常部分を一部温存する方法(腎部分切除術)も徐々に施行されつつあります。小さい腎がんの場合、直径4cm以下であれば1方法として考慮されてもよいと思われます。
2)動脈塞栓術
 この方法は手術による摘出が不可能な場合、転移巣がたくさんの臓器にある場合や、大きな腎がんを摘出する場合、手術に先立ち行うこともあります。血管造影の手法を用い、腫瘍に酸素や栄養を送る動脈を人工的に閉塞させ、腫瘍に血液が流れ込まないようにする方法で、腫瘍の摘出が不可能な場合には症状を緩和させる効果が期待できます。副作用としては、発熱、腎部痛、吐き気などがみられますが、1週間程度でよくなります。
3)放射線治療
 放射線治療のみで治癒することは困難ですが、症状を緩和させる効果が期待できます。おもに骨、脳転移などに対して放射線治療が行われます。
4)免疫療法
 腫瘍が多発したりしている場合は、免疫療法が主体となります。インターフェロン-αやインターロイキン2などの注射が行なわれていますが、効果がみられる方は15%程度と十分ではありません。副作用としてインフルエンザに似た発熱、全身倦怠感、食欲不振などが認められます。

 腎細胞がんはゆっくりと増大する場合が多いので、転移のある場合でも、原発巣の腎臓の摘出や転移巣の摘出手術が行われることがあります。肺の転移巣に対する外科治療では長期生存も期待されます。骨、脳転移などに対しても手術や放射線治療が行われることがあります。これらは患者様の QOL(Quality Of Life)の改善に寄与すると言われています。
 現在、病期別に勧められている標準治療は、
病期 I期:根治的腎摘除術、腎部分切除術
病期 II期:根治的腎摘除術、根治的腎摘除術+リンパ節郭清術
     (症状緩和のために)放射線治療、動脈塞栓術
病期 III期:根治的腎摘除術+リンパ節郭清術
     (症状緩和のために)放射線治療、動脈塞栓術
病期 IV期:免疫療法(インターフェロン-αなど)に加えて
     (症状緩和のために)動脈塞栓術、根治的腎摘除術、放射線治療
     (状態を選んで)転移巣摘出手術
 これらの標準治療に加えて、より治療効果を高めることを目的とした様々な試験的治療が行なわれています。
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6.治療成績と予後

 腎細胞がんは外科治療以外に治癒を期待できる治療法がないため、腎細胞がん全体の5年生存率は約50-60%、10年生存率は約30-40%と一般的に言われています。病期T期であれば5年生存率は 90%程度であり、最近は小さい早期の腫瘍が多く発見されるようになりました。
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