神経膠腫(グリオーマ)
神経膠腫(グリオーマ)とは
脳と脊髄には、神経細胞と神経線維以外に、その間を埋めている神経膠細胞があります。この神経膠細胞から発生する腫瘍の総称が神経膠腫(グリオーマ)です。神経膠腫の頻度は、脳に原発する腫瘍の中で25.2%(4人に1人)です。神経膠細胞には星状膠細胞、稀突起膠細胞、上衣細胞、などがあり、これらから発生する腫瘍はそれぞれ、星状細胞腫、稀突起神経膠腫、上衣腫、などと呼ばれます。神経膠腫の多くは脳内・脊髄内に拡がって発育する(浸潤)のが特徴で、これが治療を困難にしている理由です。つまり、同じ場所に正常脳組織と腫瘍細胞が混在しているので、手術で全部摘出することができないのです。上記病名は病理組織学的な所見に基づいた病名で、さらにいくつかに細分されますが、WHOでは臨床的悪性度も併せてグレードで評価しています(表1)。グレードTが最も良性で、グレードWが最も悪性です。一般に、悪性神経膠腫とは、グレードVとWの腫瘍をいいます。良性の神経膠腫が経過中に悪性に転化することはよくみられます。ちなみに生存期間中央値(50%の人が生存している期間で、平均生存期間に近い)は、グレードTで8〜10年、グレードUで7〜8年、グレードVで約2年、グレードWで1年未満とされています。神経膠腫の治療が難しいのは、前記した浸潤性の性格のためと、脳の血管が抗癌剤などの物質を通過させない、つまり点滴しても脳腫瘍まで薬剤が届き難いことが大きな理由です。
表1
| 神経膠腫の大分類 | 神経膠腫の細分類 | WHOグレーディング |
| 星状細胞系腫瘍 | 毛様細胞性星状細胞腫 | グレードT |
| 上衣下巨細胞性星状細胞腫 | グレードT | |
| 多形黄色星状細胞腫 | グレードU | |
| びまん性星上細胞腫 | グレードU | |
| 退形成性星状細胞腫 | グレードV | |
| 膠芽腫 | グレードW | |
| 稀突起膠細胞系腫瘍 | 稀突起神経膠腫 | グレードU |
| 退形成性稀突起神経膠腫 | グレードV | |
| 上衣細胞系腫瘍 | 上衣腫 | グレードU |
| 退形成性上衣腫 | グレードV | |
| 脈絡叢系腫瘍 | 脈絡叢乳頭腫 | グレードT |
| 脈絡叢癌 | グレードV |
代表的症状
腫瘍がある程度以上の大きさになりますと、周囲の脳も腫れ(脳浮腫)、頭蓋骨に囲まれた頭蓋内の圧が上昇します。頭蓋内圧上昇による代表的症状は、頭痛、吐き気、意識障害などです。また、腫瘍のできた場所にもともと存在する神経機能が障害されます。たとえば、運動野にできた腫瘍であれば、手足の麻痺や、けいれんが起こり、言語野にできた腫瘍では言語障害を起こすといった具合です。ただし、神経膠腫は神経組織の間に浸潤するため脳出血や脳梗塞などに較べると神経組織が残りやすいので、大きさの割に病変部の機能が比較的保たれていることが多いのが特徴です。まれに腫瘍内で出血を起こすことがあり、その場合には急激に症状が悪化します。
診断方法
神経膠腫を含めて脳腫瘍の診断には、まずCT(コンピュータ断層撮影)や、MRI(磁気共鳴画像)が行われます。脳腫瘍が疑われた場合は、造影剤を静脈内注射して撮影する造影CTや造影MRIが必要です。最も頻度の高い星状細胞系腫瘍をみてみますと、グレードUよりもV、VよりもWと悪性になるほどよく造影されます(図1)。これは腫瘍を栄養する血管の発達と関係しています。グレードTは、この法則と異なってよく造影されます。更に、MRS(magnetic resonance spectroscopy;化学成分の分布が分かる)、PET(positoron emission tomography;腫瘍の代謝が分かる)、SPECT(single photon emission computed tomography;腫瘍の血流や代謝が分かる)などの検査(図2)が、鑑別診断や悪性度の評価の為に行われます。また、腫瘍内の血管分布や腫瘍周囲の血管の細かな情報が診断と手術のために必要であり、カテーテルを用いた脳血管撮影が行われます。最近では、MRA(magnetic resonance angiography)やhelical CTなど、侵襲の少ない方法での代用も場合によっては可能です。
図1

グレード1(ガドリニウム増強T1強調画像):
左(毛様細胞性星状細胞腫)、右(上衣下巨細胞性星状細胞腫)

グレード2(びまん性星状細胞腫):
左(ガドリニウム増強T1強調画像)、右(FLAIR画像)

グレード3(びまん性星状細胞腫):
左(ガドリニウム増強T1強調画像)、右(FLAIR画像)

グレード4(びまん性星状細胞腫):
左(ガドリニウム増強T1強調画像)、右(FLAIR画像)
図2

左:BPA-PET、右:タリウムSPECT
治療方法
原則的には全ての神経膠腫で手術が必要です。臨床症状や画像のみでの診断では不確実であり、手術時に得られる組織標本を、病理学的に検討して初めて正確な診断が可能となります。この結果をもとに、各腫瘍に適した放射線治療、化学治療などの補助療法を選択します。手術ではなるべく多くの腫瘍の摘出を目指すのは勿論ですが、手術による重い神経学的合併症は避ける必要があります。神経膠腫は、周囲脳に浸潤していく性格を持つため、良性で浸潤性格の乏しいもの(グレードT)を除き、手術単独での治癒は期待できません。重要な機能の所在する部位に近接する腫瘍の場合は、ナビゲーションシステムを用いたり、手術中に電気生理学的な検査を行ったり、手術中に麻酔を覚ませて機能の確認を行ったりすることなどの試みがなされています。
悪性の神経膠腫(グレードV、W)には、放射線外照射に加え、ニトロソウレア系抗癌剤、インターフェロンなどの化学療法・免疫療法が一般的に行われています。神経膠腫の治療が難しいのは、浸潤性の性格のためと、脳の血管には特殊な性質があり抗癌剤などを点滴しても脳腫瘍まで薬剤が届き難いことが大きな理由です。
生存期間中央値(50%の人が生存している期間で、平均生存期間に近い)は、グレードTで8〜10年、グレードUで7〜8年、グレードVで約2年、グレードWで1年未満とされています。推奨リンク先
- 国立がんセンター(http://www.ncc.go.jp/jp/)



