|
|
 |
 |
 |
|
 |
Chapter.1: 腎盂尿管がんとは |
|
 |
腎盂尿管の解剖 |
 |
腎盂尿管は、図のように腎で作られた尿を集めて膀胱に運ぶ働きをしています。
細かく見てみると膀胱と同様に内側から粘膜(移行上皮)、粘膜下層、筋層に分けることができます。がんはこの一番内側の粘膜から発生します。

泌尿器(男性)図 |
 |
腎盂尿管がんの統計 |
 |
比較的稀な疾患で、頻度は膀胱がんの約1/20にすぎません。
膀胱がんと同じく、男女比は2~4:1で、高齢になるほど発生頻度は高くなり50~70歳代に好発します。 |
 |
腎盂尿管がんの原因 |
 |
腎盂尿管がんも膀胱がんと同様に尿中発がん物質との接触が発がんの引き金となると考えられています。
喫煙、染料、化学薬品、鎮痛剤(フェナセチン)、慢性炎症(尿路結石などによる)、抗がん剤(シクロホスファミド)などが発がんの危険因子です。 |
 |
腎盂尿管がんの病理組織 |
 |
腎盂尿管の粘膜は移行上皮であり、したがって膀胱がんと同様に移行上皮がんが大部分を占めます。
その他、扁平上皮がん、腺がんなどがあります。 |
 |
腎盂尿管がんの臨床像 |
 |
腎盂尿管の粘膜に発生したがんは次第に増大し、出血を来し血尿の原因となったり、尿管を閉塞して側腹部痛や腎機能の低下を来したりします。
悪性度の高いがんは浸潤性増殖を来しますが、膀胱より筋層の薄い腎盂尿管では壁外浸潤を来しやすく、結果として治りにくくなります。さらに進行するとリンパ節、肝、肺、骨などに転移を来します。また、移行上皮がんの特色として多中心性発生(多発傾向)があり、後に膀胱内に再発することも少なくありません。
|
|
|
 |
 |
 |
Chapter.2: 診断 |
|
 |
静脈性尿路造影 |
 |
| 静脈内に注射された造影剤(レントゲン非透過性)が腎臓から尿中に排泄されると尿がレントゲン写真に写るようになることを利用して尿路を描出する検査方法です。腎盂尿管がんの症例の90%以上に異常所見がみられます。 |
 |
逆行性腎盂造影 |
 |
| 罹患側の腎機能が低下しているため上記の方法で尿路が造影されない時などに逆行性に尿道、膀胱を経て尿管内にカテーテルを挿入し、直接造影剤を注入して病変を描出する方法です。 |
 |
腎盂尿管鏡 |
 |
| 最近、軟性で細い器具が開発されました。 |
 |
CT |
 |
| がんの浸潤程度、転移の有無などを検索するのに有用です。 |
 |
尿細胞診 |
 |
尿中にはがれおちてきた細胞を色素で染めてがん細胞の有無を調べる方法です。
がんの悪性度が高くなるほど陽性率が高くなりますが、逆に悪性度の低いがんでは陽性とならないことも少なくありません。 |
 |
腫瘍マーカー |
 |
| 腎盂尿管がんにおいては、前立腺がんにおけるPSAのような早期発見に有用な血中腫瘍マーカーは今のところありません。したがって、早期発見のためには、定期的に(年1回程度)尿検査を行い、血尿などの異常を指摘されたら泌尿器科専門医の診察を受けることが重要です。 |
|
|
 |
 |
 |
Chapter.3: 病期診断(日本泌尿器科学会診断) |
|
 |
| 病期0 |
非浸潤がん |
| 病期1 |
粘膜下層に浸潤 |
| 病期2 |
筋層に浸潤 |
| 病期3 |
筋層を越えて尿管周囲もしくは腎盂周囲脂肪組織もしくは腎実質に浸潤 |
| 病期4 |
他臓器に直接浸潤もしくは転移したもの |
|
|
|
|
 |
 |
 |
Chapter.4: 鑑別診断 |
|
 |
尿路結石症 |
 |
尿管結石では血尿や側腹部痛など腎盂尿管がんと同様の症状がみられることが多いが、一般的に前者では発症が急激で、痛みの程度も強くみられます。
なお、腎結石に腎盂がんが合併していることもあり、結石と診断がついた後でも定期検診は重要です。 |
 |
尿管ポリープ |
 |
| 比較的稀ですが尿管内に良性のポリープができることがあります。 |
 |
腎細胞がん |
 |
| 腎臓実質の尿細管上皮からできる腫瘍で腎腫瘍の85%を占めます。CTなどで通常鑑別可能です。 |
 |
腎乳頭壊死 |
 |
| 鎮痛剤常習者や糖尿病患者にみられる稀な疾患です。 |
 |
尿管狭窄 |
 |
| 尿管がんとの鑑別が特に困難ですが細胞診はもちろん陰性です。 |
 |
尿路結核 |
 |
| 結核菌の長期感染により膿瘍や肉芽腫が形成され腎盂尿管の変型や狭窄を来すことがあります。 |
|
|
 |
 |
 |
Chapter.5: 治療 |
|
 |
腎尿管全摘除術および膀胱部分切除術 |
 |

(図:腎盂がん、尿管がんの摘除標本の写真)
一側の腎~尿管および尿管開口部周囲の膀胱壁を合併切除します。
尿路がんの多発性を考慮した最も標準的な治療法です。対側腎機能が正常であれば、術後の制約は特にありません。内視鏡手術にて治療困難な膀胱がんの合併などがある場合は膀胱全摘除および尿路変向術も必要となることがあります。
|
 |
腎機能保存的手術療法 |
 |
| 1つしかない腎臓の腎盂や尿管にがんが発生した場合、両側にがんが発生した場合、あるいは悪性度の低い表在性単発腫瘍の場合などでは内視鏡的手術や尿管部分切除などによる腎保存手術が試みられることがあります。 |
 |
化学療法 |
 |
| 根治手術の結果、術後の再発の危険性が高いと思われる方(壁外浸潤やリンパ節転移が確認された方)には再発率を下げるために抗がん剤の点滴をお勧めすることがあります。また、診断時に既に転移が確認された方では初回治療として化学療法を行い、その効果をみて手術療法や放射線療法を追加します。 |
 |
放射線療法 |
 |
| 年齢や合併症などにより局所治療としての根治手術が難しい方では放射線治療が選択されることもあります。 |
|
|
 |
 |
 |
Chapter.6: 治療成績・予後 |
|
 |
表在がん |
 |
生命予後はとても良好で、当院での5年生存率は100%です。
但し、膀胱内再発がかなり多い(約30%)ので定期検診は欠かせません。膀胱内再発の多くは内視鏡手術で治療可能です。 |
 |
浸潤がん |
 |
転移がなければ根治手術により治る可能性も低くありません。
浸潤が強い場合は術後化学療法を加えた方が生命予後が改善する可能性があります。当院での5年生存率は、病期2が54%、3が64%、4が36%です。 |
 |
有転移症例 |
 |
| 手術のみで治すことはできません。リンパ節転移のみであれば抗がん剤によりかなりの治療効果が期待できますが、根治に至る症例はまだわずかです。このような症例でも根治を目指すべく、現在わたくしどもは新しい化学療法を検討中です。 |
|
|
 |
 |
 |