大阪府立成人病センター
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腎盂・尿管がん
  1. 1.診断治療のポイント
  2. 2.当センターの特色
  3.  A.症例数が豊富
  4.  B.手術
  5.  C.臓器温存
  6.  D.上皮内がんに対するBCG注入療法
  7.  E.進行がん
  8.  F.緩和治療
  9. 3.詳説
  10.  A.発生頻度
  11.  B.病因
  12.  C.組織学的特徴
  13.  D.症状
  14.  E.診断
  15.  F.治療
  16.  G.治療の副作用
  17.  H.予後
  18. 治療成績
  19.  1.腎盂・尿管がんの治療成績

1.診断治療のポイント
    腎臓でつくられた尿が膀胱に貯まるまでの尿の通り道が腎盂と尿管です。診断は膀胱がんのように直接観察することが困難であるために、総合的な判断が必要です。腎盂と尿管の壁は、膀胱に比べて筋肉層が薄く、比較的早期に壁外にがんが出ていってしまいます。治療は壁外にでていないがんであれば外科的治療で根治できます。壁外にでているがんでは外科的治療と抗癌剤の併用が、転移のある症例では化学療法や放射線治療を組み合わせた治療(集学的が治療)がポイントですが根治できる症例が少ないのが現状です。がんのひろがりとそれに応じた標準的治療を十分理解し、治療に取り組む必要があります。
2.当センターの特色
    A.症例数が豊富

    年15例以上に対し、手術を施行しています。筋肉層まではいりこんでいない浅いがん(表在性がん)の5年生存率は90-100%で、高い治療成績です。
    B.手術

    手術に関しては手術時間が短く、出血量が少ないのが特徴です。過去2年間の腎尿管全摘除術の平均手術時間は2時間40分、平均出血量は280mlで、輸血症例はありません。
    C.下部尿管に対する尿管部分切除および膀胱尿管新吻合術

    膀胱に近い部分にできた早期尿管がんに対してはがんのある尿管と膀胱を部分的に切除し、膀胱と新たにつなぎなおしています。繊細な手術ですが残った腎盂尿管への再発の可能性の少ない症例を選べば治療成績は良く、機能も温存されます。
    D.上皮内がんに対するBCG注入療法

    隆起した腫瘤を形成しない平らながん(上皮内がん)に対してはBCG注入療法を施行しています。これは結核菌を生理食塩水にとかして、腎盂内にいれて強制的に炎症をおこさせ、表面のがんのある粘膜を剥ぎとるような治療です。
    E.進行がん

    進行がんに対しては化学療法や放射線治療を組み合わせた集学的治療を行なうことで、再発の防止や予後の改善をはかっています。
    F.緩和治療

    再発症例に対する緩和治療も最後まで行っています。
3.詳説
    A.発生頻度

    腎盂尿管がんは比較的まれで、膀胱がんの約1/10です。腎盂がんは尿管がんよりやや多く、尿管がんは尿管の下1/3(下部尿管)によくできます。男性に多く(男女比3:1)、40-70歳台に好発します。膀胱がん患者の1-4%に上部尿路がんが発生します。
    B.病因

    腎盂尿管がんの病因としては膀胱がん同様、塗装や染料として用いられるベンジンやβナフチルアミン(現在使用禁止)などを用いる職業に多く発生します。また、解熱鎮痛薬であるフェナセチンの濫用や喫煙との関連も指摘されています。特に、膀胱がんの患者では腎盂尿管がんの発生する頻度は1-4%と高く、膀胱に貯まった尿が腎臓に逆流する膀胱がんの患者では6%前後とさらに高くなります。また、膀胱の上皮内がんが尿管に沿って進展していく症例もあり、膀胱がんの患者では上部尿路の監視が重要になります。
    C.組織学的特徴

    移行上皮がんが90%以上を占めます。そのほかには扁平上皮がんや腺がんもみられますが、ともに尿路結石や繰り返す尿路感染を伴った症例に多いです。移行上皮がんの特徴として尿の通り道のいろいろな部位に同時に多発したり、再発したりすることがあります。腎盂尿管がんの30-50%で、膀胱にがんが発生します。
    D.症状

    初発症状としては血尿が最も多いです。血液の固まりで急激に尿の通り道がつまると、病気のある側の腰痛や側腹部痛を伴います。がんにより尿管が徐々に閉塞した時はそこより下流に尿が流れないため、上流は拡張し、水腎症、水尿管を呈します。最終的には腎臓の機能がなくなり、無機能腎となりますが、徐々に進行するため自覚症状はほとんど認めません。近年は、検診の普及により、無症状で偶然に腎盂がんや水腎症が発見され、見つかる症例もあります。
    E.診断

    腎盂尿管がんの診断には下記の検査が有用です

      (1)検尿、尿細胞診

      目で見た血尿がなくても、顕微鏡でみて血尿が初めてみつかることがあります。尿の通り道にできたがんなので、尿中の細胞を染色して調べる(尿細胞診)とがん細胞を認めることがあります。

      (2)内視鏡検査

      尿道から内視鏡(膀胱鏡)をいれて、膀胱内や左右の腎臓から膀胱に流れてくる尿の出口(尿管口)を観察します。膀胱がんが同時に見つかったり、尿管口からがんが顔を出しているのが見えることがあります。病気のある側の尿管口から血尿の排泄が見られたり、尿の排泄が悪くなっていることがあります。尿管口から細い内視鏡(尿管鏡)をいれて、直接腎盂尿管を観察することもできます。腰椎麻酔下で膀胱鏡を挿入し、尿管口を拡張して、尿管鏡で観察します。尿管が裂けたり、せまくなる(狭窄)など合併症が多く、視野が狭く十分観察できない症例もあり、他の検査で診断がつけば、あえてする必要のある検査ではありません。

      (3)排泄性腎盂造影

      造影剤を注射して、尿の通り道がうつしだされるのを5分おきにレントゲン撮影する検査です。病変のある部分の陰影が欠損したり、尿路の狭窄が長く続いておれば、造影剤の排泄遅延や水腎症を呈し、無機能腎となれば造影剤は全く排泄されなくなります。

      (4)逆行性腎盂造影

      排泄性腎盂造影より鮮明に病変部をうつしだす検査です。仙骨麻酔などを併用し、痛みを最小限にして、膀胱鏡下で尿管口から細いチユーブを挿入し、造影剤をながしてレントゲンをとります。病変部の位置や形状をみることができます。同時に、チユーブに流れてくる尿を採取し、細胞診を調べます。この細胞診が陽性であれば、この部分にがんのある可能性が高くなります。

      (5)腹部超音波

      侵襲の少ない検査であり、血尿患者のスクリーニングとして施行されます。腎盂内の病変、水腎(尿管)症、リンパ節転移の有無などを調べます。尿管を検索するのは困難です。

      (6)CT,MRI

      腎盂がんは腎盂内に軽度造影される腫瘍としてうつります。腎盂近くにできた腎がんとの鑑別に有用です。尿管がんは明らかに大きなものを除けば、軽度造影される小さな腫瘍もしくは全周性の壁の肥厚としてうつりますが、何も描出されないこともあります。尿管結石との鑑別に有用です。また腎盂がん尿管がんともに壁外(周囲脂肪組織)へのがんの浸潤やリンパ節転移の有無を調べます。

      (7)その他

      腎盂尿管がんの転移の有無を調べるために、胸部レントゲンと骨シンチグラムを施行します。

    F.治療

    腎盂尿管がんの治療は病気の広がりで治療法が異なります。

      (1)転移がなく、明らかな周囲脂肪組織内へのがんの進行を認めない(手術で根治できそうな)

      症例:外科的治療の適応であり、腎尿管全摘除術が標準的治療です。病変部のみを摘出するとその下流の尿管に30-50%でがんが再発するため、残る腎臓の機能が正常なら病側の腎臓と、尿管は尿管口まですべて一塊に摘出することが必要です。尿管口に近い尿管に、表在性がんができた場合は膀胱を切って、尿管口を含めてがんのある尿管の下端のみを切除して、残った尿管を再度膀胱と吻合します。近年は尿管鏡の進歩に伴い、尿道からの内視鏡手術も試みられていますが、合併症が多く、長期成績も不明であり、標準的治療にはなっていません。また、摘出標本の病理組織診断で、周囲脂肪層へ浸潤している症例ではがんが残っている可能性が高く、小さな転移をともなっていることも多く、術後抗がん剤を用いた化学療法を追加することがあります。

      (2)転移を有する、あるいは明らかな周囲脂肪組織内へのがんの進行を認める(手術ではがんがとりきれない)

      症例:抗がん剤を用いた化学療法を施行し、がんが縮小し、手術でとりきれる可能性があれば、外科的治療に移行します。手術でとった摘出標本の病理組織診断の結果で、がんの残存が考えられる時は術後化学療法や放射線療法を追加します。手術のできない症例では化学療法を有効であればできる限り継続し、がんの進行を抑えます。抗がん剤が無効であれば、治療の継続は困難で、症状に応じた治療をすることになります。放射線は骨の転移した部位に照射すると疼痛のコントロールや骨折の防止になります。

      (3)上皮内がん

      隆起性病変をとらない上皮内がんは膀胱がん同様、BCG(結核菌)の注入療法の適応です。膀胱鏡で細いチューブを尿管口から挿入して、BCGの希釈液を注入します。有効率は50%で、無効であれば、外科的治療が必要です。

    G.治療の副作用

      (1)外科的治療

      出血と傷が化膿するなどの感染が主な合併症ですが、重篤となることはまずありません。片方の腎臓を摘出しても、残った腎臓の機能で日常生活の制限はありません。

      (2)化学療法

      1回治療するのに約3-4週間必要です。最初の抗がん剤を点滴する1週間前後は微熱、倦怠感、吐き気や嘔吐が主症状です。その後は白血球や血小板が減少し、その程度に応じて治療が必要となります。その他、腎機能障害、口内炎、四肢のしびれ、難聴、皮膚の色素沈着などがあります。

      (3)BCG(結核菌)の注入療法

      発熱、血尿、腰痛、尿管の狭窄、結核菌感染、アレルギ−反応などがあります。

    H.予後

    表在性がんの予後は90-100%と良好なものの、転移のあるがんの2年生存率は10%程度と極めて不良ですが、外科的治療、化学療法、放射線療法を併用した治療(集学的治療)がよく効けば長期生存している症例もあります。

治療成績


1.腎盂・尿管がんの治療成績

    症例数が豊富で、年15例以上に対し、手術を施行しています。筋肉層まではいりこんでいない浅いがん(表在性がん)の5年生存率は90-100%で、高い治療成績です。
    手術に関しては手術時間が短く、出血量少ないのが特徴です。過去2年間の腎尿管全摘除術の平均手術時間は2時間40分、平均出血量は280mlで、輸血症例はありません。
    表在性がんの予後は90-100%と良好なものの、転移のあるがんの2年生存率は10%程度と極めて不良ですが、外科的治療、化学療法、放射線療法を併用した治療(集学的治療)がよく効けば長期生存している症例もあります。


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