A. 肉眼、病理所見
子宮筋層内に嚢胞化した絨毛の侵入が認められる疾患を侵入奇胎と呼び、全奇胎に引き続いて発症する場合は侵入全奇胎、部分奇胎後に発症する場合は侵入部分奇胎と分類する。摘出子宮に嚢胞化した絨毛を認めることもあるが、明らかでないことも多い。
B. 成因
侵入奇胎の成因は明らかではないが、子宮内奇胎(mole in utero)で子宮を摘出した場合、子宮筋層内に奇胎絨毛の侵入を認めることが稀でないことから奇胎妊娠時より奇胎絨毛の子宮筋層内侵入が成立していると推定される。しかし奇胎掻爬後侵入奇胎となる症例は10-20%前後であり、これら侵入した奇胎絨毛は大多数の症例では自然に消退すると考えられている。
C. 疫学
侵入奇胎の先行妊娠は通常全奇胎であり、ときに自然流産を先行妊娠とする場合が報告されている。侵入奇胎は高齢者(40歳代)、妊娠週数に比べ子宮過大である症例、lutein cystを合併している症例での続発率が高いとされる。また部分奇胎後の侵入奇胎続発率についても様々な報告があるが、1%前後と考えられている。
D. 診断
侵入奇胎の確定診断は前述したように摘出標本に絨毛形態を認めることであるが、侵入奇胎は生殖年齢(20〜30歳代)に好発する疾患であり、将来の妊娠分娩を希望する患者も多い。また後述するように侵入奇胎や絨毛癌は化学療法が効奏する疾患であり、現在では化学療法単独で治療(primary chemotherapy)し、完治する症例が多くなり、組織学的確定診断ができないケースも多い。このような場合臨床項目により臨床的侵入奇胎(clinical invasive mole)あるいは臨床的絨毛癌(clinical choriocarcinoma)と診断される(絨毛癌診断スコア)。侵入奇胎の先行妊娠は通常胞状奇胎であり、奇胎後管理を行っている方では奇胎掻爬後の期間とhCG値により侵入奇胎を疑うことになる。次に胸部レントゲン検査、CT、MRIなどの画像診断で病巣部位の特定を図る。