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適応となっている疾患について

頭頸部骨・軟部

頭頸部領域の骨・軟部組織から発生する腫瘍はまれで、1980〜81年の2年間で治療数は78例と報告されています。この領域の腫瘍は、小児の横紋筋肉腫を除くと、放射線や抗がん剤では難治なことが多く、治療の第一は広範な外科切除です。しかし、外科切除においては、顔面・頭頸部の機能および美容上の問題から広範な切除・再建は困難なことが多く、特に骨・筋肉・脂肪組織などから発生する腫瘍ではその傾向が強いと考えられます。

このように従来の治療法では難治の腫瘍を主に対象として、放医研では1994年6月より炭素イオン線の臨床試験を開始しています。重粒子線の仲間である炭素イオン線による治療は、通常の放射線治療に使われている高エネルギーX線治療とは異なる特徴を持っています。X線は人体を透過してしまうのに対して、炭素イオン線の場合は任意の深さで止めることが可能です。さらに炭素イオン線は停止直前に線量が最大となるブラッグピーク (Bragg peak)を呈すると同時に標的より深いところへの線量寄与はほとんどありません。重粒子線加速器HIMAC では、標的体積の深さに応じて、粒子を最適エネルギーに加速し、深部がん治療に適した線量分布を作ることが可能です。さらに、炭素イオン線の場合はブラッグピーク領域では高LET( linear energy transfer )放射線としてX線に比べて高い生物効果を呈するため、放射線抵抗性腫瘍に対しても有効であると考えられます。特に体内に入射直後のエネルギーの高い所では、炭素イオン線の場合、停止直前のブラッグピーク領域よりLETが低く、生物効果もそれほど高くはありません。したがって炭素イオン線では、通常の放射線に比べて標的領域に高い線量を集中できると同時に、高い生物効果を期待できるために、標的に達するまでの正常組織への線量を低く抑えることができ、切除困難な腫瘍組織等に対して優れた治療効果が期待できます。

頭頸部領域の悪性腫瘍に対する炭素イオン線の臨床試験は、1994年6月から開始したphaseI/II臨床試験に引き続いて、1997年4月よりphaseII臨床試験を行っている。線量分割は64.0GyE/16回/4週間(1回線量4.0GyE)と、皮膚が広範に治療範囲に含まれるときには57.6GyE/16回/4週間(1回線量3.6GyE)が用いられています。現時点での解析の結果は、腺癌系や悪性黒色腫などの多くの頭頸部腫瘍に対して炭素イオン線治療の大変優れた局所制御が得られているが、骨軟部腫瘍に対しては満足すべき結果が得られておらず、1年目の局所制御率は27%と線量不足が示唆されました。

一方、整形外科領域を中心とする骨・軟部腫瘍に対する炭素イオン線治療では、PhaseI/II臨床試験での2年局所制御率は60%でした。また、1999年9月から行われているphaseII臨床試験では 73.6GyE/16回/4週間(1回線量4.6GyE)、但し皮膚が広範に治療範囲に含まれるときには70.4GyE/16回/4週間(1回線量4.4GyE)の照射で良好な局所制御が期待されています。骨・軟部腫瘍で使用されている治療線量は頭頸部腫瘍に比し約15%多い線量であり、この現況から、頭頸部領域の骨軟部腫瘍に対してより高い線量での治療が良好な局所制御を得る可能性を示しています。

頭頸部のPhaseII臨床試験での線量分割法(64.0GyE/16回/4週間)はPhaseI/II臨床試験の結果から決定されましたが、正常組織反応の途中解析をみると、2000年8月までの100部位において、grade 3の早期反応は皮膚で12/100 (12%)、粘膜で10/87 (12%)(13部位で粘膜が照射されず)であり、またgrade 3の遅発反応は皮膚・粘膜ともに観察されていません。この途中経過は、頭頸部領域の皮膚・粘膜の耐容線量がもう少し高い線量である可能性を示していると判断されます。

以上の事から、頭頸部領域の骨・軟部腫瘍に対して線量増加試験を行う研究が必要と判断し、2001年4月からPhase I/II試験を行っています。

2001年4月から2006年2月までの間に、頭頸部領域の骨・軟部腫瘍に対する炭素イオン線治療を行った症例は、16例でした。組織型の内訳は、骨肉腫が6例、MFHが4例、軟骨肉腫が2例、その他、血管周囲細胞腫、線維肉腫、粘液線維肉腫、血管肉腫でした。

正常組織への影響として、早期反応では粘膜にGrade3が1例 (6%) 認められましたが、皮膚ではすべてGrade2以下でした。また、全例がその後回復し、3ヶ月以降では全例でGrade1以下となっております。

治療成績としては、照射後3年の局所制御率は100%で、累積生存率は85%でした。

現在、第1段階目の線量増加試験中ですが、局所腫瘍制御が100%と良好であり、また、頭頚部領域の骨・軟部組織腫瘍という稀な疾患でもあることから、このままの線量で、臨床試験を継続しています。

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