癌研有明病院 THE CANCER INSTITUTE HOSPITAL OF JFCR

子宮がん

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子宮がん
目次
Chapter.1: 子宮がんとは
Chapter.2: 診断
Chapter.3: 治療

Chapter.1: 子宮がんとは

子宮頸がんと子宮体がん

女性の生殖臓器である子宮は骨盤の中央に位置しており、その両側には左右の卵巣があります。子宮は、解剖学的に子宮の下部、つまり子宮の出口にあたる子宮頸部と、子宮の上部、子宮の袋の部分に相当する子宮体部より構成されています。子宮がんとは子宮の上皮性悪性腫瘍を指し、子宮頸部に発生する子宮頸がんと子宮体部に発生する子宮体がんに大別されます。

前者は全体の約7割を占めているが、子宮がん検診の普及により減少傾向にあり、また上皮内がん(0期)を始めとする、ごく早期のがんが主体をなしてきています。これに対して後者は増加傾向にあり、上皮内がんの段階で発見されることは稀です。また、子宮体がんがほとんど全て腺がん(内膜腺由来)であるのに対して、子宮頸がんは扁平上皮がんと腺がんに分類されます。かつては大多数を扁平上皮がんが占めていたが、ここでも腺がんが近年急速に数を増やし、進行子宮頸がんのかなりの割合を占めるに至っています。

年令分布

子宮頸がんと子宮体がんにおける患者年令分布、発症頻度を(図1)示しました。
最も注目されるのは、子宮頸がんの発症が、20才台より急速に増加している点で、この病気が若い妊孕性を有する世代に重大な影響を及ぼしていることがわかります。幸いにしてこの世代の病変はほとんどが早期がんであるため、子宮温存が可能である場合が多いと考えられます。
これに対して、老年期に発見される子宮頸がんは、多くの場合が進行がんの形をとります。

一方、子宮体がんでは、50-60才を明確なピークとしており、閉経期前後から閉経期以降比較的早い時期の疾患であることがわかります。

病因

子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルスによる感染であることがかなり明確になってきています。
この感染に何らかの他の要因が加わり、発がんすると考えられています。感染は性行為によって発生し、それ以外の感染は極めて稀とされます。現在までのところ、感染から何年で発症するかは諸説があり、はっきりしていませんが、先(さき)の患者年令分布は性行為の開始年令と大きな関係があるとされます。

前がん病変である子宮頸部異形成(軽度、中等度、高度の3段階がある)を経て、がん化すると考えられており、がん組織はもちろん、異形成の組織よりも高率にヒトパピローマウイルスが証明されます。
なお、ヒトパピローマウイルスには100種類以上の型があり、一般にハイリスク型(16,33,52,58型など)とローリスク型(6,11型など)に分けられます。個々の症例における型決定は、子宮頸部細胞の採取(PCR法)などにより可能です。もちろんハイリスク型がより病変の進行を誘発しますが、異形成でハイリスク型のウイルスが検出された場合でも、がん化する確率は20%程度ではないか(諸説がある)と見られており、それほど高いものではないと考えられます。癌研有明病院婦人科は、厚生労働省が指定する「高度先進医療」によって「子宮頸部前がん病変患者のHPV型判定」を外来で実施しています。この検査方法についてのわかりやすい説明(HPV型説明)とより詳しい解説(HPV型解説)を掲載しました。

一方、子宮体がんの原因はこれとは全く異なっており、ホルモン環境が主たる因子とされます。従来より子宮体がん患者には、未婚、未妊、ホルモン剤服用などの因子が多いことが知られていましたが、何らかの原因による高エストロゲン状態が、発症に大きな影響を与えると考えられています。子宮体がんの場合も、前がん病変として子宮内膜増殖症が注目されています。現在、子宮内膜増殖症は単純型子宮内膜増殖症、複雑型子宮内膜増殖症、単純型子宮内膜異型増殖症、複雑型子宮内膜異型増殖症の4つに分類されています。このうち子宮内膜異型増殖症複合型は子宮体がんの前段階と考えられており、このタイプの増殖症が、がん組織と共に存在していることもしばしば認められます。これ以外の3つの増殖症は、いずれもがん化率は低いと考えられています。
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Chapter.2: 診断

臨床症状

子宮頸がんでは、不正出血、接触出血が主体ですが、初期の場合は無症状のことがむしろ普通と考えられます。これら無症状患者の多くは子宮がん検診で発見されています。子宮体がんでは圧倒的に不正出血が多く、特に閉経期以降の出血という形で発見される場合が多いとされます。子宮内腔に腫瘍が存在するため異常な帯下を主訴とする場合もありますが、集団検診で発見される場合には無症状のことも多いとされます。

検査

1. 細胞診
子宮がんにおける細胞診の役割は極めて大きいものがあります。婦人科領域における細胞診は子宮頸部(膣部)に対するものと子宮体部に対するものに分けることができます。

一般に、集団検診では、子宮頸部に対してのみ細胞診が行われる事が多く、子宮頸がんにおける診断率は99%以上という信頼性です。検査結果は通常5段階(クラスI-クラスV)に表示され、I, 2は正常を、3aは軽度ないし中等度の異形成を、3bは高度異形成を、IVは上皮内がんを、Vは浸潤がんをそれぞれ想定しています(表1)。子宮体がんに関しては、頚部のみの検索では不十分で、その場合の発見率は約50%にすぎません(図2)。
従って、近年増加傾向にある、子宮体がんの早期発見の向上ためには、集団検診での体部の細胞検査が必須となりますが、コストの問題に加え手技上の問題もあり、あまり普及していません。子宮体部細胞診の子宮体がんの正診率は約90%とされています。子宮体がんではクラスI、 2が正常を、3は子宮内膜増殖症を、IV、Vはがんを概(おおむ)ね想定しています。

実際の手技には、増淵式吸引法、エンドサイト法などがあり、いずれも何らかの器具を子宮内腔まで挿入する必要があります。なお、子宮体がんの細胞診では、経卵管的な悪性細胞の採取が見られ、卵巣がんの13%前後、卵管がんの約50%が発見可能とされ、その他の腹腔内悪性腫瘍が偶発的に発見される場合もあります。
2. コルポスコピーとヒステロスコピー
コルポスコピーは、通常頸部細胞診による疑陽性以上(クラス3以上)の症例に対して行われます。
子宮頸部(膣部)病変に対しては、コルポスコピー(膣拡大鏡)で病変の質的診断をするとともに、このガイド下に狙い組織診(パンチバイオプシー)を施行します。コルポスコピーは単に病変を拡大するだけではなく、酢酸処理をすることにより、病変部と健常部を識別させることができます。

ヒステロスコピー(子宮鏡)は子宮内腔を観察するものですが、子宮内腔は潜在的な空間であるため、通常は何らかの液体もしくはガスによる子宮内腔の拡張が観察には必要となります。子宮体部の組織検査は、このガイド下に行うことも可能ですが普及しておらず、ブラインド(盲目下)での部分掻爬あるいは全面掻爬が一般的です。
3. 円錐切除
一般に子宮頸部の高度異形成、上皮内がん、微少浸潤がんを疑う症例を対象として行います。
子宮頸部の組織を円錐状に広範囲に切除し、得られた組織は連続的に切片が作成されるため、病変が全て切除されている場合は確定診断に至ります。
従って、この手技は、確定診断を導く検査法であると同時に、病変のマージン(辺縁)が十分切除されていれば、この手技で治療を終えてしまうこともあります。

実際の臨床の場では、様々な器具が使用されていますが、通常のメス(コールドメス)で切除し縫合する場合、レーザーメスを使用する場合、高周波電気(リープ)を使用する場合に大別されます。切除範囲、麻酔法、外来処置か入院処置かなどに関して施設間で大きな隔たりがあります。なお、一部の施設では、子宮体がんの頚部浸潤の有無の判定にこの手技が用いられています。
4. 画像診断
MRIは今日必須の検査で、明確な浸潤がんの治療前では、子宮がんのほぼ全例に施行される傾向にあります。原発巣の状況、近接臓器(特に膀胱と直腸)との関係などががよく把握されるため、術前検査としての価値は極めて大きいと考えられます。CT及び超音波検査は、原発巣に関する解析の他に、子宮外進展の有無に大きな情報を与えます。遠隔転移の存在は治療方針に重大な影響を与えるため、可能な限り綿密に行われます。

また近年、PET(Positron Emission Tomography)を術前に行う試みもあります。まだ、一般的でありませんが、微少がん病巣の発見及びその臨床応用に期待が持たれています。
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Chapter.3: 治療

子宮頸がん

子宮頸がんの治療方針のまとめを示します(図3)。
上皮内がん(0期)、微少浸潤がん(IA期)においては、単純子宮全摘術が治療の原則です。これにより高い治癒率(0期ではほぼ100%)が得られます。しかし、若い世代の患者には、妊孕性保持の目的で、保存的治療が積極的に行われています。近年の全国集計でも、上皮内がんに対する治療は、保存的治療が子宮全摘術を頻度的に上回るようになっています。保存的治療は、円錐切除またはレーザー治療(あるいは両方)を指し、子宮頸部に対してのみ治療を行い子宮は温存されます。

IB期以上の手術可能症例(通常2期までを指す)に対しては、広汎性子宮全摘術及び骨盤リンパ節廓清を行います。本術式は、単純子宮全摘術では行わない膀胱子宮靱帯、基靱帯等の処理を行い、子宮周辺の組織を幅広く切除します。その結果、膀胱及び直腸関連の神経が広範囲に切断される場合があり、術後これらの障害が問題となる場合があります。3期の症例は一般的には放射線療法が単独で行われ、IV期症例には化学療法が行われる場合が多いと考えられます。しかし、ネオアジュバント化学療法などで、腫瘍の縮小を計った後、根治手術を行う場合や、放射線療法と同時に化学療法を行う(コンカレント化学療法)など、新しい治療法が多数登場しています。

子宮体がん

一部の早期の症例にホルモン療法による子宮温存療法が可能であるが、原則として子宮の摘出が行われます。手術可能症例に対しては、子宮全摘、両側附属器切除に加えて骨盤内及び傍大動脈リンパ節廓清が標準的な術式です。ただし、2期症例に広汎性子宮全摘術を行う施設も多いです。

子宮体がんにおける所属リンパ節は、骨盤内リンパ節と傍大動脈リンパ節であり(子宮頸がんでは骨盤内リンパ節のみ)、両方の廓清が必要と考えられています。しかし、がん浸潤の浅い早期のもの、何らかの合併症を有する症例などに、リンパ節廓清を省略する場合があります。

3期またはIV期の、治療開始時に既に広汎な転移を認める症例においては、まず化学療法を行い、その後手術が可能になる範囲まで腫瘍が縮小する場合に、治療効果が期待できます。

術後療法

リンパ節転移を有する症例、あるいは浸潤の深さ、腫瘍の大きさなどにより再発率が高いと考えられる症例に対しては、術後補助療法を行います。これらのハイリスク症例に対して、かっては放射線治療が広く行われていましたが、今日では化学療法(抗がん剤投与)が主体です。

通常、一ヶ月に1クール、個々の症例の重症度により3-7クール前後の化学療法を施行しています。但し、特に子宮頸がんにおいては、現在でも術後放射線治療を施行する施設も多く、その場合は体外照射を骨盤部に50Gy前後行います。

治療成績と予後因子

子宮頸がんにおいては、まず第一に正確な臨床進行期の決定が予後推定に重要と考えられます。
0-IA期までの比較的早期の症例では、円錐切除で進行期の決定を行うが、手術療法によるこの臨床進行期での再発はかなり稀です。子宮温存療法における再発率は、0期で5%前後と考えられますが、生命予後まで侵されることは極めてまれで、これらの症例に再度温存療法を試みることも可能です。

IB期以上の症例では、腫瘍の大きさとリンパ節転移の有無が重要な因子で、現在IB期は腫瘍直径4cm以下のIB1期と4cmを越すIB2期に分類され、両者の間に大きな予後の差があることがわかっています。また、扁平上皮がんと腺がんの比較では、後者の方が腫瘍の進展が早く、予後も前者にくらべて不良と考えられています。

進行症例である3期においては、手術が不可能であるが、扁平上皮がんの場合は放射線の感受性がよく、放射線治療単独で50%前後の5年生存率が確保されます。遠隔転移を有するIV期症例はかつては絶望的と考えられてきましたが、抗がん剤治療の進歩により、腫瘍縮小後の根治治療が行われる症例もでてきています。

子宮体がんでは、組織の分化度が重要な予後因子となっている。子宮体がんの腫瘍組織像は、腺腔部分と充実部分よりの構成となっており、充実部分の多い程予後不良となります。手術でのリンパ節転移の有無、卵巣転移の有無も重要で、これらにより大きな予後の差がみとめられます。

リンパ節廓清の必要性

子宮体がんにおいては早期の症例にリンパ節廓清を省略しようとする動きも見られます。リンパ節廓清を省略できれば、リンパ浮腫などの問題も解決され、患者のQOLも改善されることになります。
しかし、リンパ節転移の有無を術前に察知するのは容易ではなく、リンパ節転移の有無により予後に大きな差があることが知られています。また、リンパ節転移があっても術後適切な治療をすれば、かなりの生命予後が得られることもわかってきています。従って、リンパ節廓清は、実質的な転移巣を除去する意味と、リンパ節転移を有するハイリスク群を同定し、これに対する補助療法をガイドするという役割を持っているといえます。
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